【短編小説】 ディストピアな僕ら
世界は、透明なピアノ線が張り巡らされて、迂闊に動けば切り刻まれる。手足に、腹に、顔に、首に、傷を負ってきた僕たちは、だから姿勢を崩さず、生きている。自由? それは誰かの空想で、夢や希望と同じもの。現実にはない、そんなものを掴もうとすれば、待っているのは痛みだけ。再び切り刻まれて、苦しんで、結局元の場所へ戻るだけなら、初めから何もしないほうが賢いだろう。
思えば、親や学校の先生は、世間は、ずっとそう教えてくれていたのだ。こうしなければ傷つくと——例えば、勉強をして、いい成