手掌多汗症。
俺は小さい頃から手汗をかきやすい。
手掌多汗症と言われる病気らしい。
一般的な多汗症とは違って、普段から汗っかきなわけではない。
精神的緊張状態に陥ったときに、手だけがびちょびちょになってしまうのだ。
そのくらい大して困らないと思うだろうが、日常生活においても結構支障をきたすことがある。
学生時代よく困ったのはテストの時だ。
テストはやはり緊張する。
俺は中学まではそこそこ頭が良かったので学内順位も上の方を目指していたし、定期テストへかける想いは強かった。
だがその想いが強ければ強いほど、手汗を多くかく。
テスト中に手がびちょびちょになった時になにが起こるかというと、テスト用紙が濡れて文字が書けなくなるのだ。
それでもシャーペンで強く書こうとすれば紙がビリッと破れる。
これはかなりのハンデを背負っていると言わざるを得ない。
右利きなので縦書きの国語のテストとかであればそこまで支障はないが、横書きの英語などはかなり損だ。
友達と握手やハイタッチする場面などもかなりしんどい。
手汗を気持ち悪いと思われたくないのでそういった場面になるとヤバい!と思い、余計に手がびちょびちょになるのだ。
そういう場面になった時は原監督ばりのグータッチで乗り切っていた。
俺は生粋の中日ファンだが背に腹はかえられない。
しかし女の子と手を繋ぐ時はグータッチでは乗り切れない。
手を繋いだら気持ち悪いと思われるかもしれない。
そういったコンプレックスがあった。
初めて付き合った彼女は付き合う前に手の大きさ比べをした時、手汗を気にしないと言ってくれたのでそれで好きになった。
ちょろい男だぜ。
これに関してはもう気持ち悪くないと思ってくれる女の子と付き合うしかない。
逆に手汗が出て得することは、指相撲でほとんど負けないことだ。
どれだけ強い力で押さえつけられようとも手をびちょびちょにすることにより、にゅるっと抜け出すことができる。
逆に自分が押さえつける時も抜け出されやすいが、格上相手でも引き分けに持ち込むことができる。
これはかなりのアドバンテージだ。
まあ大人になった今は手汗もそこまで気にしていないのだが、強いていうなら売れた後のファン対応だ。
握手してくださいと言われたらできるだけ応えてあげたいが、折角ファン対応したにも関わらずSNSで『東の手びちょびちょでキモくて草』とか書かれたら辛い。
一応病院で手術して治療できるが、手汗が出なくなる代わりに脇汗がめちゃくちゃ出るらしい。
それなら手汗の方がまだマシである。
ワキガの人よりはまだマシなんだと心に刻み込み、慎ましく生きていこう。
おしまい。