女性目線のオーダースーツとは?
やぁ、いらっしゃい。今日もよくきたね、いい顔してるんじゃない。
街中に出るときれいな人が多い。
身なりもととのって、歩くのも早い。
街中に出ることは多くないけど、出てみると刺激になる。
やっぱし、身だしなみには注意したいよね。
レディース・スーツ。
主にビジネスの場で着用されるスーツ。
昨今はパンデミックの影響もあり、在宅による業務もトレンドのワークスタイルとなっている。
商談まで、チャットによるオンライン完結。
電話もほとんどなく、音声が漏れることもない。
実際、Zoomなどのビデオカンファレンスでも私服に近い服装で商談に臨むことも多いそう。
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私も気の知れた相手の場合はそこまで気合は入れないけど、一応ジャケットは常備しているので相手によっては羽織るようにしている。
時折、パートナー企業の顧客先へ訪問する際なんかは、私がスーツなのにパートナー企業の女性が私服で来ているなんて事も往々にしてある話。
今回はそんなレディース・スーツ環境で働く女性のお話だよ。
都会の一角にあるお店。
N氏はオーダーメイドスーツ店に立つ女性。
雇われではなく、コミッションにて働いておりお店はオーナーが持ち、N氏はそこに常駐することで接客を行っている。
まだまだ若いN氏。
ただ、話の引き出しは広く、スーツ生地に思い入れも強い。
元々、初めて就職した会社がゴリゴリの営業会社だったこともあり、体育会系のノリで常に営業数字を追いかけるという環境で社会人生活を過ごしてきた。
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約2年ではあるが、先行き不安から転職。
そこで知り合ったのが今のオーナーさんって話。
色々しているビジネスの中で、動き回らず営業としての能力を活かせる仕事ということでオーダーメイドスーツ部門を任されることになった。
その時、社員として働くか。
それとも、売上に応じて取り分が変わる個人事業主で働くか。
この選択肢に苦悩の末、後者を決断。
自分には自信がある。
営業職上がりの彼女は勝ち気な性格。
逆張りのコロナ禍。
N氏は店舗にいる時はよく生地の産地や機能面など、商品の勉強をよくしている。
基本的に、女性一人で立つお店ということでお客さんは女性中心。
レディース専門というほどではないが、ターゲッティングは割り切って絞っていくほうがいいと判断していた。
その為、SNSでの発信は女性オンリー。
決してフォロワーは多い訳じゃないけど、エンゲージメントが非常に高かった。元々ニッチなビジネスな上、なかなか街には人が出歩かない。
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コレじゃリアルの対面は無理だ。
そう割り切って、SNSから需要を引き出そうと色々画策する。
そもそも、レディースのオーダースーツ自体がそんな浸透している業界ではない。着るタイミングも分かりづらいし店側と顧客側では持ち合わせる知識量に差がありすぎる。
思い切って、SNS上で求めるものは何か知りたいような投稿をだし、ついついコメントで回答をしてしまう層を引き出していく。
いいねなどで、地道に仲良くなっていき、徐々に世間が求めるものは何かの大枠が見えていく。
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N氏はオーダースーツのプロフェッショナル側の立ち位置になる為、どうしてもオーダースーツ=戦闘服のイメージがちらついてしまう。
ただ、ビギナー層からすれば、戦闘服なのは間違いないけど、そんな重々しいイメージが貼り付いてしまうと尚更手を出し難くなる。
というより、多分メンズだってそう思う人は多いんじゃないかな。
既製品スーツの大手のお店が多い。
勝手な印象だけど、ガラガラなイメージあるけど・・・。
レッテル・ジャンル。
「◯◯だから・・・」
この何ともよく分からない理屈で敬遠される状況はどんな業界でも、基本的ん向かい風。
そもそも売りたいものが、壁を敷かれている訳だし第一声が「高そう」じゃ、箸にも棒にもかからない。
N氏は知らないうちに用意された高い敷居を下げる必要があるなと考える。
この時にちょっと相談されたのはよく覚えてる。
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コロナ禍でジャケットだけでいいやと思って、お付き合いで一着仕立てた時に話が脱線し続けて採寸そっちのけで長い話になってたよ。
それくらい、N氏はひたむき。
若い女性がここまで必死に自分の仕事に向き合って、活路を見出そうと考えるんだから、まだまだ世の中捨てたもんじゃない。
「高いって言っても、買ってる人いるじゃんね。矛盾してませんか。」
N氏が会話の端々でそう言ってたよ。
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結構核心に近い所に気付いてそうな気もするんだけどな、と思いつつ回答はグッと押さえて聞きに徹する。
そもそも、レディーススーツはメンズに比べ絶対数が明らかに少ない。
その為、一点ものでありながら単価がどうしても高くなりがち。
冒頭のように、毎日着る人も少ないこともあり、シチュエーションが限られる。悩みながらも、SNSは止めずに発信。交流を継続した。
ある日、奇跡が起きる。
客の先の客。
SNS経由のDM問い合わせがあり、来店するというお客さんが来ると私にLINEが来た。
表示される相性のいいターゲットだったのか、毎日SNSを開くとN氏の活動が目に入るようになって、質問している投稿がおかしく、そして聞いてることがズレてるなという印象を持ったお客さんだった。
お客さんは女性の弁護士だそうで、文字通り勝負服を必要とするご職業。
時々DM経由の来店はあったが、このお客さんはN氏と性格がよく合った。
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生地について、よく勉強していたN氏は推し生地はあったが、相手の好みに合うかは不明だった為、推し生地・人気生地・無難生地。それらを提案する。
その中で一巡した後、推し生地の理由を説明したところ、推し生地で3着分オーダーされることになる。
「あなたが無理に勧めず、広く提案してくれた結果推しを選んだ」
という。
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粋な計らいだ、3着ならご自身が好むものも含めて3種類の生地を楽しむことだって出来る。
生地が気に入ったのか、生地を推すN氏が気に入ったのか。
そこまでは分かんない。けど、先述の通り高くても買う人はいる。
N氏にとって、価値の高い経験になった。
それを機に、その弁護士さんはN氏に定期的に紹介してくれるようになる。
士業ネットワークの構築は根深いみたいだね。
これから。
マネタイズのポイントがオーダースーツである以上、物売りではある。
でも物だけだと頭打ち。
そもそも同業も沢山いる訳で。
その中でも、売れてる店と売れてない店があるのは何故か。
オーダーメイド・スーツである以上、製造工場は大体似たようなところに送られる。結果的に出される商品は似たようなもの。
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なのにこの差は何なのか。N氏に関わらず世の中のビジネスパーソンに問われるであろう見えづらい課題。
販促費、立地、提供価格。
考えれば色々理由は上げられるのかもしんないね。
その真相は人それぞれ心の中。
見えないからこそ深く面白い。考え甲斐のあるテーマだよね。
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