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がん細胞はいつでも反撃できる状態です

少し前にCAR-Tに関することを書きましたが、今回の内容もCAR-Tです。

とは言え、CAR-Tの話をしているようで実際の本題は2つあります。

1)がんの薬剤耐性/がん進化のはなし
2)超高額医薬品への国家としての対応のはなし

1)は、がん界隈では以前からホットは話題です。
最初は効いていた抗がん剤が次第に効かなくなるのが、薬剤耐性です。
がん組織というのは、詳細にみると多様性があることが分かっています。

この多様性というのは、
一言で言うと遺伝子変異のパターンがいくつもあるということです。

Aという薬剤が抗がん活性を発揮するためには、
がん細胞にあるXにAが結合する必要があるとします。
先ほどの変異によってXの形状が色々と変化し、
Aの結合に変化がないものからAが全く結合しないものまで
色々なバリエーションを持ちます。
すると、最初はAが結合する細胞のほとんどが死滅します。

しかし、僅かに残ったAが結合できないXをもった細胞が徐々に増え始め、
当初効果があったAが全く効かなくなる現象が起こります。
これが薬剤耐性が起こる大まかな流れです。

特にがん細胞においては、がんの進化といった言われ方もしています。

2)については、言わずもがなでして。
国民皆保険の日本では、多くても3割負担で済みますし、

高額になると高額医療制度によって多くの医療費が国から支払われます。
このようにある程度(超高額の場合は小額といえるかもしれません)の負担はあるものの、この治療法が多く利用されるようになると、
国家財政への負担が懸念される、という流れがあります。

非常に難しい議論ですが、
治療法が限定されている患者さんにおいては是非とも受けたい治療です。
一方で、効果が見込めないのにこの治療を受けるのは意味がありません。

医療の費用対効果という観点での議論も各国でありますし、
その方法論の持つ懸念点もまた炙り出されています。
結局のところ、丁寧な議論しかないとは思うのですが、
そうした経緯はこの国ではあまり見られない傾向が高いのが懸念です。
すでに日本の医療費は、なんと年間42兆円以上が使われています。

高齢化の影響よりも医療の高度化による影響が多いとも言われています。
この問題は個別のがん治療だけでなく、医療全体の問題ですし、
インパクトしては日本国民の健康に波及する大きな問題です。
よくよく考えておいたほうがいいと思っています。

最後にこの日経の記事の締めくくりを引用しておきます。

今後、患者からの強い需要や、製薬会社に注がれる投資家の期待を後ろ盾に研究が進めば、コストや再発の問題は解決する可能性はある。しかし開発が進んだとしても日本の医療現場、保険制度でこうした最先端の「特効薬」を今後も受け入れていくことが可能なのか。「価格」「再発」という2つの壁の先には、日本の保険制度という最大の難関が待っていそうだ。

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黒坂宗久(黒坂図書館 館長)
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