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超高額がん治療用新薬の保険適用が決定され、色々な議論に繋がっているのは良いことだと思う

色々な紙面、ネットニュース、テレビなどでも取り上げられる事が多いこの白血病治療薬キムリア。

何がそんなに話題かというと、やはりそのお値段です。
1回の投与で3349万円かかりますから。

このキムリアは細胞治療薬(CAR-T)という分類になるのですが、
患者から細胞を採取して、遺伝子導入して、培養して増やしてから、
また患者に投与するというかなり手間のかかる細胞治療薬なので、
飲み薬(低分子医薬品)のように大量に作って、室温で数年保存可能なものとは対極にある医薬品と言えます。

大体の議論の流れとしては、増加の一途と辿っている保険医療費を圧迫するのではというのが多いのですが、高額医薬品としてほぼ必ず引き合いに出されるのが、小野薬品のオプジーボ (抗PD-1抗体)になります。

がん治療薬においてオプジーボは歴史的な医薬品で、いわゆる抗がん剤(がん細胞を殺す)とは異なり、このオプジーボはがん細胞を殺す細胞(T細胞)を活性化(がん細胞を殺す)することによって、がん細胞を駆逐する画期的なメカニズムを持った医薬品です。
このメカニズムを発見した本庶先生がノーベル賞を受賞したのは記憶に新しいと思います。

ただ、このオプジーボは日本で上市した後に受難の時を迎えます。
保険適用時の価格が英米に比べて高い点が批判され、その後薬価が大幅に引き下げられることになりました。。。

ある意味超法規的措置によりかなりエグく薬価が下げられた訳ですから、
かなり議論があったのを覚えています。
以下に薬価改定に関する意見を参考までに載せておきます。
当時ももちろん今もまだ答えが出ていないと言えば出ていないので、今読んでもまだまだ古さを感じない意見だと思います。


そしてこのキムリアは2019年5月15日に薬価承認されました。
1回3349万円

再生医療等製品の保険償還価格の算定について(厚労省資料)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000508918.pdf


日本の健康保険制度には高額療養費制度があるので患者負担は少なくて済むのですが、残りの費用は保険財政が負担しますから、やはり財政の負担増なのではとの議論がもちろん起きます


しかし、対象患者数はピーク時で年216人、販売金額を72億円と製造販売元のノバルティスは予想していています。また、この治療が受けられる医療機関が限定的なため、実は財政破綻に繋がるインパクトは無いという議論もあります。

ただ、がん患者からの視点でいうと、様々な治療オプションがあるということはとても大切なことになります。様々な治療を受けても治らない方にとってはまさに命綱と言える新しい治療法になります。


今回の超高額医薬品の登場によって、面白いと言うか、正常な議論だなと思うのが、保険財政圧迫への危機感から市販薬で代替可能な医薬品(例えば湿布やビタミン剤とか)を保険給付の対象から外したり、自己負担を引き上げたりすることなどが議論され始めていることです。


そして薬価算定過程の透明性に対する問題提起だけでなく、医薬品の価値評価(費用対効果評価)の議論、成功報酬型(アウトカムベース)といった幅広い議論に波及していることはとても良いことだと思っています。


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黒坂宗久(黒坂図書館 館長)
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