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自分の人生ゲームに勝ち抜け!
「本当にあなた達は恵まれた時代に生まれたと思うわ。私なんて、6歳で母親を病気で失って・・・」
と、正月明けのビデオチャットで、母が語り出した。母の子供時代のトラウマ体験は何度も聞いている。昔は、それを言われると、”自分は恵まれているから、文句を言ってはいけない、私が感じている苦痛は、自分が我儘だからだ。”という気持ちにすらさせられた。
そして、今、兄や友人達の子供達の成長を見ていて、母と同じようなセリフが口に出そうになるというか、そんな思考が湧いてくるようになり、なるほどね〜、こんな感覚ね、と、”昔は”語りをしたくなる気持ちも分かった上で、母に切り返してみた。
「まぁ、お母さんの時代は、確かに、私が子供の頃より、大変だったと思うよ。でもさ、原始時代に生まれたよりはいいでしょ?」
画面越しの母の顔がポカーンとした。
「だって、原始時代って、洞穴生活とかで、相当、過酷な毎日だったと思うのよね。力の強い男が女の髪の毛を引きずり、無理矢理、、、なんてことも普通だったかも。男は狩りで命かけないといけなかったから、それはそれで相当なプレッシャーだったろうね。総じて、寿命も超短かっただろうね。
まぁ、原始時代と比べるのは極端だろうから、江戸時代でもいいよ。お母さんの生まれた時代も、江戸時代よりは、文明が発達して、生活は楽になっていったと思うよ。でもさ、じゃぁ、江戸時代の人々は、お母さんの子供時代や、今より、幸せを感じられなかったのか、と言えば、そうじゃないと思うんだよね。原始時代だって、そうだよ。狩りがうまくいった高揚感や肉にありつけた喜び、強い男に、長い髪を撫でられ、女性が幸福に感じたりもしたんじゃない?」
「まぁ、そうだろうね。」
じっと聞いていた母の脳裏にそのシーンが浮かんでいるのかもしれない。素直に相槌を打った。
「何が言いたいかって言うとさ、私は、ある時から、こんな風に人生を考えるようになったんだ。トランプを使ってのカードゲームってあるでしょう?それと一緒かもって。自分たちは、ランダムに配られたカードで、人生ゲームに挑まないといけないのかなって。最近、親ガチャって言葉が流行っているけど、それも同じような感じ。でも、親ガチャはさ、生まれ落ちたところで、人生決まってるみたいな感じで言われているけど、私のカードゲームみたいってのは、親だけじゃなく、生まれた時代、才能、全部を配られたカードだって、私は思ってるんだ。カードゲームってさ、自分が配られたカードを見て、「うわっ、私のカード、弱っ!」って思ったり、「これで勝てなきゃ嘘でしょ。」って思ったりするでしょ。それと一緒。世の中には、容姿端麗、頭脳明晰、親も代々裕福みたいな人がいるでしょ?それって、最強カードを配られたんだと思うのね。羨ましいよね。でもさ、人の配られたカードをいくら羨んでも、自分の人生ゲームには全く意味がないのよ。羨んでいる暇があったら、自分の手持ちのカードで、どうやって戦っていくかを考えた方がいいと思うんだよね。お母さんだって、若い頃、自分が容姿にはそれなりに恵まれているって自覚があったから、モデルの仕事とかしたいと思ったんでしょう?それで得をすることもあるって分かっていたってことでしょ?つまり、お母さんも手持ちのカードを上手に使ってきたから、今、幸せだって思える生活を送っているんじゃない?」
「そうね、私は自分のやれることを精一杯やってきたと思うわ。」
「でしょ。それでいいんだと思うわけ。人がどんなカード持っているかなんて知るのに躍起になったり、羨ましがったりする暇があったら、自分の参加しているゲームがどんなゲームなのか、そして、自分の手持ちのカードはどんなものがあるのかを把握し、それをいかに使いこなすかの方が重要だと思うのよ。どこでどのカードを切るか、とかさ。そして、うまく切ったら、その結果、自分がいいカードをゲットできたりもするじゃない?」
「あなたは面白い考え方するわね。そう言われたら、そんな気がしてきたわ。」
「そう?まぁ、だからさ、特に時代というパワーのあるカードが違うと、比較しても意味ないよなぁ、と思うわけ。お母さんは、お母さんの人生をこれからも上手に生きてよ。歳を取ると、このカードがあるといいんだな、とか参考になると思うし。」
母の顔がほころんだ。
そして、「あら、私、この後、〇〇さんとコーラスの練習会に行くのよ。じゃぁ、また来週ね。」と、そそくさとビデオチャットを終了した。
良い時代じゃない。NYと日本で毎週、ビデオチャットで話せるなんて。
そして、その時代まで大きな怪我も病気もせずに生き抜けたっていう最強のカードを母は持っていたってラッキーさに、母は気づいているだろうか?
そんなことを考えながら、私は2025年時点で持つ自分の手持ちカードをもう一度じっくり見直した。