vol.124 UtulensでPortraitを
日中はまだ汗ばむ11月の土曜日、向陽(ひなた)はなさんとUtulensを使ってポートレートを撮ってきたお話。
今時の最短撮影距離の短いレンズに慣れていると、ここだと思ってシャッターを切った写真が見事にピンボケになってしまったファーストショット。
それでも富士フイルムのフィルムシミュレーションで自分にとっては懐かしい色合いのデータが出てくる。
朝は肌寒く、日中は汗ばむ小春日和の名古屋市を散策しながら撮った富士フイルムのクラシックネガとUtulensの組み合わせが思いのほかいい味を出してくれました。
ピンボケ写真もまた写真として味がある。
filmで撮る楽しさとはべつに気軽にfilm調の写真を撮る事が出来る喜びはデジタルならではでしょうか。
写り過ぎないことが新しい。
しっかり解像するレンズを日々考えられている技術者の方には申し訳ないですがこういう解像しないレンズというものはそれはそれでノスタルジックな雰囲気でどこかほっこりします。
どこか昭和の香りがするクラシックネガとUtulensの組み合わせはとある年齢層より上には懐かしさを、そうでないモデルさんには目新しさという同じ写真データを見てても感想が違って面白い。
一番多く撮影しているはなさんは気取らず自然体で接してくれる。
彼女は着たい服を着て何にも縛られることなく自由に動く。
そして自分はそんな彼女の自由に動く姿の中から一瞬を切り撮る。
自分なりに作り込んだ撮影も好きだけど、快晴の秋空の下、近況報告をしながらお互いに好き勝手やった結果が二人にとっていい写真、思い出になる。
そんな撮影ができるのも最初の頃から長く撮っている向陽はなさんだからこそ。
あえてピントを外したわけでもなく。
ピントを合わせようともしない。
ただ、自分と彼女のちょうどいい距離感でシャッターを押すとちょうど良い写真となってモニターに映し出されるだけ。
何も足さず、引かず。
思いのまま気のままに歩き、喋り、シャッターを押す。
Utulensは何もできないからこそ、それ以外の全てが問われる。
Utulensはしっかり映らないからこそ、そこにあるものが映る。
もう一歩離れたらよかった。
もう二歩離れたらピントがあったのに。
そんな思いすら雑念に感じる。
絞りを調整できない、ピントも合わせられない。
何もできないが故にモデルさんとのコミュニケーションに重きを置くことではじめて撮りたいと思える場面を二人で意図せず作り出せるからではないかと思おう。
そんなUtulensを使ったポートレートのお話。
では、また。
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