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【読書メモ】ポジショニング戦略[新版]【#86】
ポジショニングとは何かというと「情報があふれかえる現代社会で、人々にメッセージを届ける」という難題を解決するためのもっとも有効な考え方と定義されます。
ただし、この本は今のビジネス書のように1章ごとにまとめが載っていて、こういう取り組みをしたらしいというヒントが書いてあって、チェックシートがついているというものであありません。ただひたすら多くの会社の事例が解説されているだけです。ケーススタディというと分かりやすいでしょうか。そういう本ですので、自分でまとめながら読んでいく必要があります。
ポジショニングの基本として「消費者の頭の中に既にあるイメージを操作し、それを商品に結びつける」ことが重要です。我々が広告にイメージするような、誰の頭の中にもない新奇なイメージを作り出すことではありません。
消費者の頭の中に入り込む簡単な方法は、一番乗りすることです。早い者勝ちなのです。まず一番乗りを果たし、相手に心変わりのきっかけを与えないことが肝心です。
もし誰かが既にあなたの見込み客の頭の中に入っていたら?
二番手が頭の中に入り込むのは難しいのです。二番手には価値がないからです。
僕の勤めている会社では、経営陣が失敗の責任を取りたくないので、新製品を開発しても絶対に一番に市場には出しません。まず他社が出すのを待って、それから出すようにしています。今の経営陣になってから売り上げが下がり続けているのは、この本を読むとコロナのせいだけではないことがよく分かります。
最高品質の商品を売り出すこと以上に、一番乗りであることが必勝の条件です。二位、三位が取るべきポジショニング戦略も存在しますが、一番乗りほど優位には立てません。例え「お山の大将」でも、鶏口となるも牛後となるなかれです。まずは小さなお山の大将になって、それから山を大きくすればいい。
あなたが成功したいならライバルのポジションを無視してはいけません。もちろん、自分のポジションを無視するなど言語道断です。
落伍者は「一層の努力」をすれば問題は解決できるという答えに飛びついてしまいがちです。しかし、負けるポジションにはまり込んだ企業は、どんなに努力しても無駄なのです。一層の努力が役立つのは、努力を「どう」するのかではなく、「いつ」するのかにかかっています。
あなたのブランドがナンバー1だと知らない消費者がいた場合、問題にすべきは、なぜ消費者が知らないのかです。おそらく、あなたは都合のいい基準で自分をリーダーだとみなしているだけで、消費者の基準ではそう見えていません。すべきことは、「最初に」消費者の頭の中に入り込むことです。さらに、リーダーのポジションを維持するには「オリジナルの」コンセプトを強調することが不可欠です。
多くの商品が相応の売り上げ目標を達成できないのはなぜか?それは「スピード」よりも「より良い品質」を強調するからです。勝利するには、他のブランドが市場リーダーになるチャンスをつかむ前に売り出し、同時に大々的な広告、販促キャンペーンを展開し、優れた商品名を付けることが不可欠です。たいていは逆のことをして、商品の改良に時間を費やし、広告費は少なく、新商品に既存ブランドの名を冠してしまっています。これらはすべて情報社会では命取りになりかねない失策です。
知名度の高い名前は、人々の頭の中に既に何らかのポジションを築いています。よく知られた名前なら、人々の頭のはしごの最上段にある。新商品を成功させたいなら、新しいはしごを持ち込む必要があります。
「シーソーの原則」二つの異なる商品に同じ名前は付けられない。片方の売り上げが上がれば、もう片方が下がる。
ライン拡大商品は、すぐに認知されますが、忘れられるのも早いものです。ライン拡大は「罠」ですが「誤り」ではありません。次の5つの条件がそろえば、ライン拡大も有効となります。「ライバルがみな間抜けである」「売り上げ規模がとても小さい」「ライバルがいない」「消費者の頭にポジショニングすることを望んでいない」「広告は出さない」など、かなり厳しいものです。
ハウスブランド名を使うべきか否かを見分ける規則
1.予想される売り上げ規模:勝てそうな商品ならハウスブランド名を使うべきではない。売り上げ規模が小さい商品なら使うべき。
2.競争の度合い:ライバルが全くいない分野なら、ハウスブランド名を使うべきではない。ライバルが多い分野では使うべき。
3.広告サポートの有無:広告予算がふんだんにあるならハウスブランド名を使うべきではない。予算が小さいなら使うべき。
4.重要度:まったく新しいタイプの商品なら、ハウスブランド名を使うべきではない。化学製品のような日用品には使うべき。
5.流通:陳列棚を使わない商品にはハウスブランド名を使うべきではない。営業マンが売り歩くようなタイプの商品なら使うべき。
ベルギーの「三ツ星都市」戦略には、重要なポイントが3つ見出せます。
第1に、既に観光客の心をつかんでいる観光地にベルギーを関連付けたことです。いかなるポジショニング戦略においても、既存の強力なコンセプトに引き寄せることができれば、成果は格段に増します。
第2に、ミシュランガイドという、既に観光客の心をつかんでいるコンセプトに引き寄せたことです。これで信頼性を高めることができました。
第3に、「一見の価値ある都市が五つもある」という内容の充実度が、ベルギーを確固たる観光地の地位に引き上げました。
「ポジショニングの問題を解決したいなら「商品」ではなく「消費者の頭の中」を見つめよ」
「消費者の心をあぶりだす」ためによく使われる調査手法に「セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)」があります。詳細はp202
従来の手法に従えば、長所は温存しつつ短所を改善するでしょう。しかし、ポジショニング戦略に従うなら、人々が抱いているイメージを活用すべきです。
よいポジショニング戦略は、会社全体にいきわたっていきます。旗印を掲げて、それに社員が従ってくれれば、勝利は必ず我がものとなります。
ポジショニング戦略の場合、複雑な問題に対して、こんなに単純で分かり切った解決法でいいのかと思うことがあります。ポジショニング戦略とは、分かり切ったことを探し出すことです。分かり切ったことは、何よりも伝わりやすい。しかし、分かり切ったコンセプトは残念ながらもっとも目に留まりにくく、評価されにくいものです。人間の心は複雑なものをありがたがり、分かり切ったことを単純すぎるとして退ける傾向があります。
ポジショニングは、商品の販売促進だけでなく、自分自身を売り込むのにも使えます。
1.自分のウリを絞り込む
ポジショニング戦略のもっとも難しい点は、売り込みたいコンセプトを一つに絞りきるところにあります。消費者の無関心の壁を突き崩したいなら、なにがなんでも一つに絞りきらねばなりません。自分自身のポジショニングでもおなじです。
2.失敗を恐れるな
やってみる価値のあることは、失敗する価値もある。
3.よい名前を使え
4.イニシャルは避けよ
5.「ジュニア」も使うな
6.勝ち馬に乗れ
第一の馬は「会社」。失敗はあなたに第二のチャンスをくれるが、始末に負えないのは、成長するチャンスが平均以下しかない会社です。あなたがどんなに優秀でも、負け犬と群れていたら成功できない。
第二の馬は「上司」。会社と同様に、上司についてもあてはめて考えます。最も賢明で、頭脳明晰で、出世する見込みのある人物と一緒に働くべきです。もし上司が出世すれば、あなたの出世チャンスも大きくなるでしょう。
第三の馬は「友人」。キャリア上の大チャンスは、仕事上の友人の引き立てによることが多いのです。友情という名の馬はときどき外に連れ出して、運動させてやる必要があります。そうしないと肝心な時に乗れません。友情という名の馬を走らせたいなら、仕事上の友人とは定期的に連絡を取りましょう。
第四の馬は「アイディア」。「アイディア」という名の馬に乗るためには、馬鹿にされたり反対されたりするのを覚悟しなければなりません。流れに逆らう気概が必要です。叩かれるのを恐れていては、新しいアイディアやコンセプトは出せません。罵詈雑言をじっと耐えて、時が訪れるのを待つことです。
第五の馬は「信念」。
第六の馬は「自分自身」。ビジネスでも人生でも、自分の力だけを頼りに成功することは可能です。しかし、それは容易ではありません。最多勝騎手になるのは、最軽量、最優秀、最強の騎手ではありません。最高の馬に乗った騎手なのです。乗るべき馬を見つけたら、その価値をすべて引き出すまで乗りこなしましょう。
ポジショニング戦略を実践する前に以下の六点を自問してみると良い。
問1.自社の現在のポジションは?
消費者の頭の中を正しく把握するには、企業のエゴに邪魔されないようにすることが大切です。「わが社がどんなポジションを築いているのか」に対する答えを求めるのはマーケティング担当者ではなく、市場の消費者です。多少の費用をかけてもリサーチすべきです。
問2.どんなポジションを築きたいのか?
キャリアの途上でも、よく同じ間違いを犯す。万人にウケる万能の人間を目指したところで、結局は誰にも認めてもらえません。それよりも、自分の専門にフォーカスを絞るべきです。
問3.ライバルは誰か?
市場のリーダーに真っ向から挑戦するようなポジショニング戦略は失敗します。障害は乗り越えるのではなくて、迂回することです。
問4.資金は十分か?
ポジショニング戦略が失敗する大きな原因の一つは、不可能を可能にしようとする無益な試みです。消費者の頭の中のシェアを獲得するにはお金がかかります。ポジションを確立するにもお金がかかります。確立したポジションを維持するのにもお金がかかります。
問5.同じことを続けられるか?
基本ポジションを確立したら、それを守り抜きます。ポジショニングとは、累積的なコンセプトです。長期的に広告し続けてこそ効果が出ます。成功している企業は、勝ちパターンを変えません。変化が激しくなっているからこそ、以前より戦略的に考えなければなりません。
問6.自社にふさわしい広告を作っているか?
あなたの会社の広告は、商品のポジションとマッチしているだろうか?クリエイティビティ自体には何の価値もありません。ポジショニング戦略の目的に沿って使われて初めて役立つものになります。
ポジショニングで勝利する12の決め手
1.言葉の役割を理解すること
既に浸透した言葉にこだわってはいけません。自分がこれから確立したい意味を引き出せるような言葉を選びましょう。
2.言葉を有効活用すること
言葉は、ヒトの頭の中でやり取りされる通貨です。言葉の選び方によっては、思考プロセスそのものを左右できます。しかし限界もあります。あまりにも現実からかけ離れた言葉は、人の心が受け付けません。
3.変化に慎重になること
世の中の変化が激しくなるほど、変わらないものの価値は上がる。
4.ビジョンを持つこと
変化とは、時という大海における「波」です。波は短期的に動揺と混乱を引き起こしますが、長期的には波の下にある「潮流」の方がずっと重要です。変化に対応するには、長期的な視野が必要です。自社の基本ビジネスを定め、そこから離れないことです。
5.勇気を持つこと
運やタイミングだけに頼っていては、市場リーダーというポジションは獲得できない。ライバルが静観しているうちに資金を投入できる勇気を持つことです。
6.客観性を持つこと
まっさらな目が必要です。決断のプロセスでは、あらゆるエゴを捨て去りましょう。エゴは問題を混乱させるだけです。
ポジショニングで最も重要なことの一つは、商品を客観的に評価し、顧客や消費者の目で商品を見ることです。
7.シンプルなアイディアを持つこと
本当に役立つのは、わかりきったアイディアだけです。情報社会では、わかりきったアイディア以外は通用しません。しかし、わかりきったアイディアほど、実は目につきにくいものです。
8.巧妙であること
ポジショニング戦略はシンプルだが、簡単ではありません。有効で、誰にも奪われていないポジションを見つけるのは難しいのです。ビジネスな人生で大成功を収めている人は、極端な位置ではなく、全体の真ん中あたりにポジションを見出しています。
9.すすんで犠牲を払うこと
独自のポジション確立のためには、何かをあきらめなければなりません。万人ウケを狙いながら強力なポジションを維持することはできません。
10.忍耐力を持つこと
11.世界的視野を持つこと
12.直接対決は避けること
マーケティングの天才などという評価は無用です。そんなものは、むしろ致命的な欠陥になりかねません。業界トップになったメーカーは、マーケティングのおかげだと思い込むケースが非常に多いですが、間違いです。同じマーケティングの手法を使って大失敗することは多いのです。後追い商品が正面攻撃を仕掛ければ十中八九は失敗に終わります。
既に強力なポジションを確立したライバルに正面攻撃を挑んでも、消費者の頭の中をめぐる戦争には勝てません。迂回してもいい、潜行してもいい、直接対決だけは絶対に避けるべきです。
おわり
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