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Blood borne

 ゲームの紹介は難しい。
「それってどんなゲームなの?」と聞かれたときに、核心に触れることなく面白さを伝えるのはとても骨が折れる。キャラクターが有名なら「マリオが出る」とか「ソニックが出る」というだけで、多くの人は「ジャンプして敵を踏みつぶしながら進むゲーム」だとか「超高速でステージを駆け巡るゲーム」だとか想像するだろう。どうぶつの森や牧場物語も、一度プレイしたことがある人なら自分に向いているか向いていないかくらいはわかる。「魔法を使える牧場物語」と聞いて「面白そう」と思う人もいれば「派手な作業ゲーム?」と思う人もいる。とにかく、ゲームを勧めるにはその人が以前どんなゲームをプレイしているかによって、魅力がずいぶん変化する。
 ホラーゲームはその最たるもので、例えばバイオハザードもクロックタワーもコープスパーティーもやったことがなく「画面が暗いから」という理由でメタルギアさえ遠ざけている人に向 けてBlood Borneをどう紹介していいものか考えあぐねている。
 私がそのゲームを「どんなゲーム?」と聞かれたら「中世をモチーフにしたゴシックホラーかと思ったらSF的コズミックホラーだった」と答えるだろう。 Blood Borne(ブラッドボーン)はダークソウルシリーズでお馴染みフロムソフトウェアから発売されたアクションRPGでダクソシリーズと同系統のゲームシステムになっている。防具を装備しても、防御力は心もとない。一対一なら闘えるが、敵が二体三体と増えるとだんだん勝つのが厳しくなる。無残に敵に倒されながら、ダンジョンの構造や敵の攻撃パターンを覚えて攻略していく。要するに死んでいるうちに進み方を覚えるゲームだ。
 最初に中世をモチーフにしたゴシックホラーと言ったようにダークソウルシリーズとは雰囲気が全く違う。
 19世紀ヴィクトリア朝をベースに作られたレンガで作られた洋風の街並みが、作りこまれていて見るだけも価値がある。またストーリー上、夜に活動するのだが暗い雰囲気がこれまたマッチしていて不気味にも美しい。ただ、基本的に不気味な雰囲気が強くホラーがダメな人はやっぱりキツイかもしれない。
 というか、始まりがまず怖い。オープニングを見ただけで1週間手を付けなかった人がいるくらいだ。
主人公は「獣の病」と呼ばれる奇病を患っており、その治療をするためにやってきた。最初は寝台に寝かされた視点からのムービーが始まるのだが、そこでボロボロの包帯で目を覆った謎の老人が現れたり、人間以上の大きさの狼が現れたと思ったら突然燃え出したり、某もののけ姫の「こだま」をより一層不気味にしたような存在が群がってきたりとこの時点で結構な恐怖心を煽られる。
 ムービーが終わると廃墟と見紛うようなボロボロの治療院から操作がスタートする。
 そこから少し進むと先ほどのムービーにでてきた狼のような獣と出くわして大体の人はここで一回死ぬ。そこから物語が動き出すと言っても過言ではないのだが、とりあえず何も知らないとそこで死ぬ。
 再三怖いと言ったきたが先にも言ったように風景は見るだけでも価値があるし、何より主人公である狩人が瀟洒でカッコいいのだ。

 ダークソウルシリーズの装備は剣と盾、鎧の騎士然としたカッコよさなのだがBlood Borneの装備は「仕掛け武器」と呼ばれる様々な武器と銃、鎧系統もあるが基本的にコート類の洒落た服装なのだ。
 仕掛け武器とは武器を変形させることで性能の違う武器にすることで、杖を鞭に、曲刀を大鎌に、刀を自分で刺して血を纏わせることができる。特に「落葉」という武器が私は一番気に入っている。上下に刃の付いたいわゆる双刀なのだが、この武器は綺麗な音を立てて両手剣に変形する。ムービーで見た時は、とてもかっこいい音で綺麗に二振りの刀に変わるのだが、いざ手にしてゲームで使うと「キンッ」っと地味な音で変形してがっかりしたが、それでも私の好きな武器だ。 そしてこの作品一番の特徴といっても過言ではない銃の存在を忘れてはならない。
 Blood Borneでは盾の代わりに銃を持っている。もちろんパリィで怯ませることもできる。
 ダークソウルと同じで攻撃の瞬間に合わせて弾丸を当てると怯みそこを攻撃すると手を体内に突っ込み内臓を抉る……結構エグい。
 これがダークソウルでいうところの「致命」と言われる攻撃にあたり大ダメージを与えることができる。Blood Borneではこれを内蔵攻撃と呼ぶ。
 今回の致命のように今作は『血』に関する事柄が多くテーマの一つにもなっている。ダメージを負っても一定時間内であれば相手の血を浴びて体力を回復する『リゲイン』システム、ダメージを回復するための道具が『輸血液』、ゲーム内で通貨(ダクソのソウル)にあたるものが『血の意志』呼ばれるもので血に関わるものが多くある。
そもそもな話しゲーム開始場所を少し調べると『青ざめた血を求めよ』というメモ書きが見つかるため血がテーマの1つになっているようだ。
その青ざめた血とはなんなのか……それはプレイしてみてもわからない。
というよりBloodborneに限らずダークソウルシリーズも一周しただけでストーリーがわかる人はたぶんいないと思う。
それだけ話が複雑なのかと言われたらそうでもあるし、情報が少なすぎるのもある。
このゲームでストーリーを考察する上での情報収集源がNPCとの会話と装備品、アイテムの説明ぐらいしかなくストーリー考察の専門サイトもできているほどだ。
個人的には一通りプレイしてから考察サイトを見てまたプレイをすると色々と見えてきたり、違った見え方がするためにオススメである。
 このゲームはホラーでありながら、まだ考察の終わっていない映画を見るようなものだ。Blood Borneをプレイした人たちは、ネタバレを見たうえでまだ「あーでもない、こーでもない」と考察を続けている。
 一度クリアするとゲームの物語はそこで終わるが、このゲームはプレイする人たちに多くの謎を残した。 
 私がBlood Borneを「どんなゲーム?」と聞かれたら「中世をモチーフにしたゴシックホラーかと思ったらSF的コズミックホラーだった」と答える。そして「でも、お前がどんなゲームに感じるかはわからない」と続けるだろう。
 このゲームは「ホラー」という言葉で語るには、もったいない逸品である。
 まだ体感したことがない人に、この感動が伝わらないのだから、ゲームを紹介するというのは本当に難しい。

このエッセイの作成協力、添削をしてくれた友人のキッチンタイマー氏のこの場をお借りして感謝を

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