司書について考える その2
司書の専門性とは「知識や本を単体としてではなく体系的に捉えるやり方に精通していること」であると前回述べた。
この一文を読んだだけでは、司書の重要性がいまいち伝わらないのではないかと思う。
そこで今回は、情報を体系的に捉えること。そして体系的に読書を行う重要性を語りたい。
今回は少し脳みそに圧がかかる話になってしまうかもしれない。
そもそも情報を体系的に捉える、とはどういうことだろうか。これは「関連付け」と言い換えることもできるだろう。
例えば
兎について調べたい、と利用者からレファレンスの要望があるとしよう。
この言葉を聞いた時の司書の脳内はこんな感じ。
うさぎの飼い方を調べたい→5類
うさぎの生態を知りたい→4類
日本でのあり方を知りたい→2類等
文学においてうさぎの扱われ方を調べたい→9類等
などなど。どれかなー、なんて。
兎一つとってもこれだけの調べ方がある。そして、場合によってはこの中の一つではない可能性も出てくる。
この辺りをはっきりさせるため、司書はレファレンスのなかで利用者の要望を探るのだ。
さて、図書館における体系的なものといえば、兎にも角にも、日本十進分類法(通称NDC)だろう。
図書館ではNDCを用いて、全ての資料を0から9に分けている。そしてそれを背表紙に表示している。
例えば、913イのように。
なお、
9→文学
1→日本の
3→小説 という意味。
関連のある資料ごとに分けて配架することで、利用者はより早く、より容易に目的の情報に到達できるようになる。
関連の本が近くにあるので、学びの範囲を広げることにも無論役立つ。
また、どの類の本がどの程度あるかも把握しやすいので、図書の廃棄の際もスムーズに判断することができる。
洗練されないコレクションはコレクションではない。図書館の資料はつねに、ブラッシュアップされるべきなのだ。
ここまでで、体系的であることが図書館にとって重要なのはわかってもらえたと思う。
しかし、体系的に学ぶことの意味の最たるものをわたしはまだ語っていない。
学びは繋いでこそ深くなる。
これがわたしの持論であり、図書館に体系的な分類が存在する最大の意義だと思う。
知識は単体では意味をなさない。
なぜなら、全ての教養は互いに影響しあって存在しているからだ。歴史において、ある出来事が他のある出来事を引き起こすように。
人の営みはどことも繋がることなく、存在することはできない。
全ての文化はお互いに影響しあい、存在している。
学ぶとは、そのようなつながりを認識し、理解して自分の中に取り込む作業なのだ。
図書館資料のあの並びは知識のつながりを可視化したものなのだ。
この世のあらゆる物事のあり方を具現化したものが図書館であると言っても良い。
では、なぜ体系的に読書をすることが必要なのだろう。これは特に、学校図書館の役割になるかもしれない。
体系的な読書の有名なものといえば、平行読書ーーーいわゆる同一作者の作品を連続して読んでいく許される読書の仕方。
その他にもミステリーなどのジャンル、出版社、傾向の似ている作家などなど。さまざまな区分けが存在する。
大人の皆様には驚かれてしまうかもしれないが、子供たちの多くはこうした関連付けた読み方ができない。
というか知らない。
するとどうなるだろう。
仮に何か面白い本に出会ったとしても、その次を当てるのは至難の技ではないか。
あの本は面白かった。あの本と似た本が読みたい。けれど、どれがそうなのか、わからない。
そうして、読書は面白くない。難しい。と子供たちは思ってしまう。大抵の子供は見切りが早いから。
このような「当たり前だと思われがちなこと」教え、導く存在の欠如が読書を人生の早い段階で遠ざけてしまう。
また、関連付けで読む読み方は普段の読書だけでなく、大学での研究に役立つ。
少なくとも文学研究に於いては大いに役立つ。
わたしは大体、一つの物事から敷衍して大量の情報をかき集め、その中から法則を見出して論文を書き上げていた。最初に大量の情報があり、その中から疑問と答えが後から出てくる形だ。
これは四年かけてわたしが身につけた良い論文を作るためのスタイルだ。このスタイルは一つの情報から派生させて調べていく力なくては実行できない。
大学に限らず、何かについて調べること全般にこれは言えるはずだ。
このように、体系立てて読書する能力は生きる上で大いに役立つ。
深くものを知り、考えるという行為。昨今、その中核を担う図書館が重要でないと言われる。
その言動を鵜呑みにする前に立ち止まって考えてみてはいかがだろうか。
それもまた、深くものを考える始まりになるかもしれない。
図書館の有名な格言にこんなものがある。
『真理がわれらを自由にする』
真理には考え続けるものしか到達できない。
混乱した世の中でも何が本当か見極める目を持つためには、多くを知り、考え抜く必要があるのだ。
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