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超えてくるアート

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先日、東京マスクフェスティバルに出向いてきた。
その名の通りで、マスク(仮面)を中心とした作品が出展されている展示即売会である。
マスクフェスは今回で第9回目となり、だいぶアート界隈でも定番のイベントになったのではなかろうか。
その証拠に、こんな時世でありイベント開催も多くは自粛や規模縮小、来場者側も自粛する人が多く現れる中で開催したにもかかわらず、数々の対策を施されながらもあってか、多くの人で賑わっていた。
もちろん、なんの条件もなければもっと多くの人間で活気に満ちていたに違いない。
筆者も第一回目から休みなく通い続け、時には出展者の手伝いのためブース内に立って接客もしていた。回を重ねるごとに活気に満ちてきているのは実感できる。

この時期での開催は非常に難しくイベント舵取りもまた一段と緊張感が増している。
開催すること自体に疑問を持つ人も多いだろう。その気持ちは、筆者個人としては理解できなくもない。感染拡大の危機を孕んでもいるのだから。
ただ、人にとっては趣味に興じるのもまた大きな快楽の一つである。趣味に興じることなく淡々とその日々を送るのもまた厳しい話になる。
だからこそ、観客制限はあるものの大衆娯楽であるプロスポーツは開催されている。映画館も開かれている。
娯楽への渇望は逆にドンドンと膨れ上がってるのではなかろうか。
それだけに、多大な負荷が増すのを覚悟の上に開催を決めたスタッフたちには感謝し、また敬意を表したい。

 

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MATCH Leather Works 様のペストマスク
シンプルな革製ペストマスクから、柿渋染やお洒落なアリス模様までバラえーションは様々
自分で被るだけでなく、部屋に飾っておきたくなる作品でもある
これぞまさに匠の一品、という趣がブースから漂っていた


マスクフェス、回を重ねるごとにその時の出品される作品の全体的な趣がおどろおどろしくなっていくのも特徴だが、そのクオリティもまた秀逸になっていくのも見ものである。
目を惹く作品ばかりであり、どれもこれも手に入れたくなるのは正直な気持ちだ。
眺めているだけでも心奪われて時間を忘れるくらいになる。それだけ、参加者の技術的力量と深い創造性がが窺える。


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はぐれよろず様のマスクと瓢箪型バッグ
目に角のような突起が付いているが、ちゃんと視界は確保されている
光らせると浮き出てくる模様もあり、細かい芸がにくい
2枚目写真、一見なんだかわからないひょうたん型の長物だが、ファスナーが付いていて中に小物をしまえるのだ


しかし、秀逸であるが故に比例してお値段のほうも高くなっていく。
一点モノが多く、どれもアート作品といってもいい品ばかり。
なかには、10万円を超える作品もちらほらあった。
こうなると、欲しいものを節操なく手にしていては、財布の中身どころか銀行の貯蓄残高までもが驚くほど減っていく。
じっくりと吟味し、自分の感性により強く響いた作品を手にするようにしなければならない。

今回筆者が選んだ逸品はこれだ!
製作者は、以前にも筆者のnoteで紹介したMASKSMITHである。

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どこかの民族が葬祭や儀式の際に被っていそうなデザインではないか。
左右に配置された不気味に見つめる目と、突出しながらもギョロリと穿たれた本来の目が、見るものに不快感を与えつつも惹き込んでくるようだ。
それこそ、呪術を仕掛けられたかのような錯覚に陥る。
赤と黒を基調とし、そこに蛇のように顔を這う青緑のラインがおぞましさを演出している。
そして、見るものを威嚇するように伸びた鋭く力強い角。
このビジョンを革を巧みに使ってここまで再現する作者の技量には毎度脱帽せざるをえない。
創造性はあってもその再現への技量が足りない、またその逆で技量はあっても創造性が足りない、などのクリエイターはいくらでも存在するが、その両方を巧みに繰り出す存在となると稀だろう。
それだけに筆者はMASKSMITH氏の作品2つ目の購入を決意した。それだけの価値はあると感じられた。
また、高額ながらも、むしろこの額で買えるのは今だからこそなのではないかと感じられたからだ。つまり、今後何年かすれば氏の評価が高まり更に値が上がるかもしれないと危惧したからだ。
そうなると、今こうして氏の作品を2つも手にしている筆者は運がいいのかもしれない。

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氏の他作品。
どれもデザイン性といい細かな細工といい、唸るものばかり。

また、注目すべきは、回を重ねるごとにギミックが重ねられていくこと。
上の方の写真では、マスクonマスクが見られる。
着脱可能なマスク。表面のマスクを取れば、また違うデザインのマスクが現れる。
こうして、イベントを追うごとによって新たな試みを見せてくるから、追う者としてもその進化にまたも脱帽して新しい帽子を買い求めに帽子やにまで走らなければならない。

できるアーティストというのは、現状に飽き足らず常に何かを追い求めている印象を受ける。
単純な言葉で語れば、常に進化しているのだ。
それは、「上手くなっている」とはまた別の領域の話だろう。
同じ世界で腕を上げた、というよりは、既存世界を本拠地としつつも、新しい世界にドンドンと足を踏み込んでいってる、ということなのだろう。
そのあくなき探究心が、新たに見たこともない作品を我々に見せるエネルギーとなっているに違いない。


彼らクリエイターのあふれる創造性と飽くなき探究心はこの情勢下でもドンドンと滾っていくのだろう。
こういうご時世だからこそ、趣味の世界を大切にしつつ、クリエイターのエネルギーを受け止めていきたい。

だからこそ、こういう場も続けられるように大切にしていかなければ。

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