【闇にあるボトルネックを見極める RICビジネス編#7】
問題を抱えているのに気づいていない。
これではもちろん対処のしようがありません。
しかし、それなら単に認識すればいいだけ。
より厄介なのは、問題の存在に勘づきつつも、感じたり考えたりすることを避けてしまうことです。
人はさまざまな理由を作り出し、自分の内なる問題から目を逸らそうとします。
私もそうでした。
しかし、問題は向き合い、手をつけなければ絶対に解決しません。
というわけで、今回直面した壁は、「闇にある根源的な課題を避ける」です。
起業のステージとしてはアーリーステージの話です。
<アーリーステージとは>
私の会社はスタートアップでもベンチャーでもありませんが、創業以来売上が上がり続け、従業員規模が数十人に拡大していたので、今回のエピソードはアーリーステージの時のものだと考えています。
アーリーステージは、PMFを達成した後の段階です。この段階では、仮説ベースでサービスに新たな価値を発見し、顧客対象を拡大したり、さらに高い価値を届けるなど拡大調整をしながら収益化に繋げていきます。
より価値を提供することで収益化を目指している状態にあります。
従業員数を増やしつつも、思うように売上や利益が伸びないなど、資金繰りに悩まされるケースも多い時期です。私自身もそうでした。
経営者にとっては、少しでも早く価値を高め売上を最大化しなければという圧がかかり、精神的に追い詰められる時期と言えます。
<サービスの価値を認められたかった>
私自身の話をします。
前回お伝えしましたが、保育事業を行う会社の設立からしばらくして、私自身はこの事業から手を引きたいと思うようになっていました。
そこから二転三転あって、結局会社を承継することにしました。
ただし、引き継ぐまでの当面の間は、会社のため代表が交代しても会社が拡大継続していけるような組織や体制にしておこうと決意しました。
そのため、この時期に会社としての使命や求める価値(「子どもと保育士の潜在力を解放する」)をはっきりさせ、独自の教育概念(RIC理論)を構築しています。
明確化した価値に沿った拡大のため新たな事業を2つ立ち上げました。
1つは、自社で運営する保育園を作ることで、もう1つは保育士を育成するアプリを作ることです。
アプリは、「RICダイアリー」と「Do RIC」の2つを開発しました。
2つのうち「Do RIC」は、全国の保育士の質を見える化し、比較評価できるようにしようとしたサービスでした。こちらは、経産省や中小企業庁からも認められ、予算も取ってこられたのですが、結局上手く行きませんでした。
アイデアは評価され、実装もしたものの問題が山積みで、正直現実的には通用するビジネスプランではありませんでした。
なぜそんなことをしたのか。
当時思うように売上が上がらず、追い込まれていたからです。売上を上げる代わりに、私には全国的に通用する価値を持っていると証明したかったのです。
RIC理論を認められたい。その個人的な欲求を優先して「Do RIC」を生み出したのです。
<現状を変える力=ボトルネックを見極める力>
「Do RIC」がうまくいかなかった根源的な課題はなんだったのか?
今ならわかります。
保育事業の売上を伸ばすことより、RIC理論が全国に通用するのかを試すことに囚われていたのです。
そのため産学連携をして経産省のコンペに「Do RIC」を提出し、権威ある評価を求めました。
会社として目指さなければならない方向と私が目指したい方向がズレていて、にもかかわらず個人としての欲求を抑えきれなかった。それこそがボトルネックでした。
瓶(ボトル)に入った水をこぼそうとする時、水の流れる勢いは最も細い首の部分(ネック)に左右されますよね。
そこから派生し、物事における制約や、上手くいかない原因が発生した時にボトルネックという言葉を使います。
ボトルネックを見極める力は、現状を変えてくれます。
経営者であれば、問題や悩みは常にいくつも抱えていることでしょう。
それらを、自分のことも事業のことも抱えているもの全体を見える化し、どんな要素で成り立っているか分解し、構造化することでボトルネックを見極めるのです。
<現状を変える力=対峙する力>
ボトルネックを見極めても、問題が解決するかはわかりません。
人は変化の痛みを恐れ、問題を見て見ぬふりをするからです。
特に、自己や組織の闇の部分に向き合うのは辛いもの。闇に葬り去って二度と見たくない。そう感じるのもよくわかります。
現状を抜本的に変えるには、自分の闇と対峙する力が必要になります。
エゴを正当化しようとする声をかき分け、心の奥に入り込まなくてはなりません。
決してかんたんなことではありません。
途中、「本当にこれが問題なのか?」と疑う気持ちも湧くでしょう。
しかし、真正面から向き合えば「これだったんだな」と納得する時が来ます。
それがブレイクスルーの時です。
対峙する痛みは大きいですが、得るものはそれ以上に大きいものです。
<まとめ>
向き合うのが辛い課題ほど、見て見ぬふりをしたくなるものです。
しかも、残念ながらどれだけ強くなろうと課題がなくなることはないでしょう。
強くなった自分に見合うだけのさらに大きな課題がやってくるはずです。
しかし、そういう課題や醜い自分と真正面から向き合うことを決めたなら、得られるものは大きい。
痛みと向き合い乗り越えた分だけ、人は強くなり、ビジネスも飛躍します。