新規就農者が【少量・多品目栽培】をしてはいけない理由と、その対策
先日のことなんですが「新規就農者が【少量・多品目栽培】をしてはいけない理由」と題してツイートしたところ、思いのほか農業関係者から反応がありました。そこで、今回は農業関係者(特に新規就農者)に向けて、少量・多品種生産をしてはいけない理由について掘り下げて説明しますね。
私が新規就農者の多品目栽培に否定的な理由
本題に入る前に、「なぜ私が、新規就農者の多品目栽培に否定的なのか」ということについて書いておきますね。それは簡単に言うと、私自身が有機農産物に興味があるからです。
最近では、無農薬・有機栽培に興味を持ち、挑戦する人も増えているそうです。ところが、数年で離農したり10年以上のキャリアがあっても世帯年収が300万円に届かないことが多いそうです。個人の年収じゃないですよ、夫婦二人を合わせた世帯年収で300万円ですよ。確かに、ネットで新規就農した人のブログ・Twitter・インスタグラムなどを観察していると、残念ながら儲かっているようには見えないんですよね・・・。そこで私なりに「彼らがなぜ儲からないのか?」を考えてみたのが、このnoteの元ネタになったツイートなんですよ。
多品目栽培の何が難しいのかというと、例えばトマト・オクラ・里芋・キュウリ・ナスを同時に栽培するとしたら、それぞれの作物に合わせて草取り・害虫対策・収穫・剪定作業などを並行して行う必要があります。当然ながら一つ一つの作業効率は落ちますよね。しかし売り上げを確保するには栽培面積を減らすわけにもいきません。その結果として、雑草や害虫対策が間に合わなくなって、すべての作物がダメにするんですよ。
実際のところ、有機・無農薬農家のブログやTwitterを見てみると、そのように害虫や雑草に負けてるパターンが本当に多いんですよ。
栽培=農業じゃない、農業は経営だ
そもそも農家とは【個人経営の事業主】すなわち社長です。ただでさえ栽培に関する専門的なスキルが必要なのに、
それに加えて
・マーケティング
・営業、集客、企画、売り込み
・カスタマーサポート
・経理、経営判断など、、、
栽培技術以外にも「社長としての役割」を演じなければならない大変な仕事なんです。
ところが、多品目生産をはじめると畑仕事が煩雑になります。その結果として【日々の畑仕事に追われるようになり、経営判断などの重要な仕事が後回しとなってしまう】という深刻な問題が発生するのです。
新規就農者の多くは栽培の初心者であり、同時に社長としても初心者です。初心者社長の考えたマーケティングや集客が上手くいく確率はどう考えても低いですよね。つまり、栽培スキルと経営スキルは全く別の能力ということであり、栽培するだけでも難しいのに、わざわざ手間のかかる多品目栽培に挑戦するのは、どう見たってハイリスク・ローリターンなだけんですよ。
新規就農者は、なぜ【少量・多品目栽培】をやってしまうのか?
農家は種まき・草取り・収穫などの作業を、作物の生育に合わせて行う必要があります。そのため「季節によって作業量の波が発生する」という問題が付きまとうのです。
そこで、多くの小規模農家はヒマな時間(自分の人件費=固定費)を有効活用するという目的で少量・多品種栽培(作業時期を分散させる)を始めるわけですよ。これは「農閑期の仕事量を増やす」とも言い変えられます。ところが農閑期の仕事を増やそうとすると、その準備や後片付けなどで農繫期の仕事にシワ寄せが行ってしまうことが多いんですよ。これでは「日々の畑仕事に追われて重要な仕事が後回しとなる」という話に戻ってしまいますよね。
「多品目化で仕事が煩雑になり、草取りが追い付かず、害虫や雑草に負けて主力商品の収穫がダメになる」という、よくあるパターンです。これだけは絶対に回避しなければなりません。
作業量の波への対処
では、農繁期と農閑期(畑仕事の無い時期)での作業量の波は、どのようにして解消すればいいのでしょうか??
その答えは簡単です。栽培する作物の種類を減らせばいいんです。多品目化で農閑期の仕事量を増やすのではなく「小品目化で農繁期の効率化を図る」という発想です。具体的には「夏野菜なら乾燥に強い種類と雨に強い種類、冬野菜なら生育の早い種類と遅い種類」というような組み合わせで天候リスクを回避しながら、年間で5種類ほどに絞り込むのです。ただし、さまざまな作物を育てて比較実験をするような場合は、これに含みませんよ。勉強は大事ですから。
例えば、夏・冬それぞれ2~3種類の作物を栽培して、その中で品種や栽培方法を変えながら比較実験をするという方法が考えられます。これは、確実に利益になる作物を早く見つける必要があるからです。
でも、作物を絞り込んだら一時期に作業量が集中してパンクするのでは?
規模の小さい農家(とくに新規就農者)であれば、そのは心配ありません。
例えばジャガイモを少量しか作らない場合は、スコップで掘り返しながら手作業で収穫しなければなりません。これ、たった100キロ収穫するだけでも大変な重労働なんですよ。
ところが、畑一面にドバーッ!と作るのであれば、専用の収穫機を利用することでアッという間に収穫作業が終了します。必要であれば機会をレンタルしたり、人を雇うことだってできます。そのほかにも繁忙期への技術的な対処法は色々とあるのです。
では反対に、農閑期にはどのような対処法が考えられるでしょうか?
一般的な農家では、農閑期に収穫できるような別の作物を組み合わせて「作業量の平均化と、収穫量の増加」を考えるでしょうね。でもそれはオススメしません。さきほど書いた通り、日々の畑仕事に追われて、重要な仕事が後回しとなっては元も子もないですから。
では具体的に、農閑期の空き時間に何をするべきか?
私のオススメする対処法は、なんと【働かないこと】です。ふざけている訳ではありません。まじめに言ってます。
これは「多品目栽培が原因で、雑草対策や経営判断などの重要な仕事が後回しになるぐらいなら、家で寝ている方がマシだ」という意味です。したがって、農閑期の空き時間は多品目化ではなく、以下のようなことに充てるべきなんです。
・主力商品の品質や収穫量を高めるための準備
・営業や経理など社長としての仕事
・アルバイトで生活費の確保
・失敗の反省や勉強など
つまりアルバイトでもなんで、畑仕事以外なら何でもいいんです。もちろん社長として営業なども平行して行うのが前提ですよ(笑)
ここまでの話を簡単にまとめると、
①「農閑期の収穫を増やしたい」という理由で多品目化して失敗する農家が多い
②多品目栽培では、仕事が増えるし煩雑になる
③作業効率が悪化するので、日々の畑仕事に追われることになる
④雑草対策や経営判断などの重要な仕事が疎かになる
⑤重要な仕事を後回しにしたことで、収穫量も利益率も落ちる
その対策として、
①「農閑期の仕事量を増やすのではなく、農繁期の効率化を図る」という思考方法をとる
②作物の種類を絞り込んで作業効率を上げる
③農閑期に畑仕事を詰め込んではいけない、すなわち少量・多品目栽培をしてはいけない
④農閑期は畑仕事、以外の仕事をする
という4つの対策が考えられます。
儲かる農業をするにあたって経費の話は避けて通れません。
そこで、近日中に【固定費と変動費】について簡単にまとめてみようと思います。
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