『細川幽斎』
昭和タイトル:細川幽斎
著者:細川護貞
ジャンル:日本文学、日本の歴史、古文書
発行年月日:1972年(昭和47年)1月1日
発行元:求竜堂
備考:室町末期、将軍の側近に侍して活躍、つづいて織田信長,豊臣秀吉に従い、数多くの戦功をたてた細川幽斎は、和歌、連歌の道を極め、あらゆる学術芸能に通暁した当時屈指の文化人でもあった。その波瀾に富む生涯を、細川家十七代当主である著者が、家伝の史料を用いて克明にたどる。
感想
細川護貞公が細川家の公式資料『綿考輯録』の中の、細川藤孝(幽斎)公の項目のみを抜き出し、現代語訳にしてわかりやすくまとめたものである。
ということは、この本は『綿考輯録』の流れを正式に酌んでいるわけで、さらには、ある程度の文法や人称の区別など現代文に直されているから、大変ありがたい。『綿考輯録』自体は翻刻、つまり「元々くずし字で書かれていたもの(古文書)を活字化したもの」であるから、古典文法に慣れない人には少々読みにくいだろうと思う。その点、こちらであれば一冊で済む。
しかし、双方を比べながら読むということも勿論可能なので、ここまで来ると日本語版と英語版の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を机に並べて読み進めていた自分を思い出す。古文って、もう外国語だよね、ぶっちゃけ。
いずれ、しっかり読み込んで時期ごとの幽斎公の動きについて(特に小倉滞在期間中)まとめてみたいと考えている。
さて、「あとがき」には護貞公がこの本を発行するにあたっての注意書きというか、このように現代文にした、という「諸注意」がまず書かれている。私はここに、公のちょっとした「言い訳」の感情と、「まあ、そういうことなので、すいませんがご了承ください」という丁寧な苦みの感情を読み取れるような気がして、なんだか微笑ましくなっている。
この項目には『綿考輯録』の成り立ちについても補足されており、私もこの部分はきちんと覚えておきたいと思ったため、ついでに記しておく。
小野武次郎はこれら3つを比較し、その中から『御家譜』を選び、新たに熊本藩の倉庫にあった資料や古い家の家記等を参考にして『綿考輯録』を書いた。約50年ほどかかっている。(安永八年(1777)正月には、藩校「時習館」にて清書が始まる。)
なお、東大史料編纂所においては、『綿考輯録』を筆写し『御家譜』を以て校訂したと考えられている『細川家記』が保存されている。(いつ頃のことかは触れていない。)