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私の「ロック」はポルノだった〜ポルノグラフィティ25周年に寄せて〜
私にとっての青春時代の曲、アーティストと言えばポルノグラフィティであった。
社会人になってから、とんとご無沙汰してしまっていたのだが、コロナ禍中盤あたりの頃youtubeで「ファーストテイク」なるものを知り、そこから再び彼らの曲を聴き始めている。
私にとってのポルノグラフィティは1stシングル「アポロ」に遡り、古参を気取るわけではないけれど(気取れるほどライブも行ってないし特に情報も仕入れてないからなあ)、確かにあの頃、まだ子どもだった私にとっては大変衝撃的な「等身大の叫び」との出会いだった。私にとっての「ロック」との出会いと言ってもいい。
ロックの定義を知るわけではないけれど、私流に翻訳するとそれは「自己主張への叫び」だ。自らを自らと名乗るだけの声。理性と自由への憧れ、ほんのちょっとの爆発も含めたアイデンティティ形成の手段。
思いっきり反抗期だった10代。訳もなく怒り散らかして、わめいて、泣き虫で、「いい子」でいる自分への理想と、「いい子」がバカバカしく見えて仕方ない衝動の両方に毎日ぐらぐら揺れていて。
そういう、多分ありきたりな、分かりやすい反抗期の子どもだった自分が夢中になっていたポルノグラフィティの楽曲たち。もう、ガンガンに「ロック」だった。ボーカル・アキヒトさんの歌声は思春期に抱えたいろいろな思いを、そりゃもうめちゃくちゃに叩き、導くことはなくても嘆いて疑問を抱いて泣くことを許してくれたと思う。
ね、ちょっとポルノオタクみたいなことを言うんですが、これを読んでいらっしゃるあなた様は「ヒトリノ夜」とか、聴いたことございますでしょうか? 歌詞の最初かもうね、ロックなんですよ。超ロックなの。
100万人のために唄われたラブソングなんかに
僕はカンタンに想いを重ねたりはしない
どうよ!? えっ、っどうですか? めっちゃロックじゃない?
100万人のために唄われたラブソングなんて、世の中めちゃくちゃあるじゃないですか! そりゃもう毎年毎日、もう何万曲も世界にあるわけじゃないですか。それを大否定の大否定、超ロック。サイコーにトガってるぜ!! 私のメンタルは10代から変わってないようですが、敢えて大人になった私が、今、言語化するとそういう気分なのです。きっと10代の私も、こういう歌詞の部分に惹かれたのだろうと思います。
毎日毎日、ポルノグラフィティの歌詞をノートに書いてたなあ。
そう、当時ね、今よりもっともっと純朴に、綿のシャツみたいに、言葉や文学や、文字、そういったものを吸収していた私にとって、彼らの曲に乗せられる歌詞というのもものすごい影響力があったのです。今読んでもすごく詩的だし、若々しい精神が思うままに紡ぎだした、エネルギッシュで切なく、時折凶暴さのある繊細な文字の羅列が、私には大変心地よいものだったんです。
どれだけこの僕が傷ついているか
教えてあげよう深い眠りの夜明け前
世界中の臆病者はきっと僕に味方する
互いの手の中に握られたその石を投げよう
十字架をまねて目を閉じた
何にも見えず勇気そがれて
舌打ちするのもあきたし
この腕ひきちぎって鳥になりたい
いや、どうよこれ…… ぜひ、youtubeのライブ映像(上のアドレス)も見てください。歌詞の不安定さに対して、メロディはぎゅいんぎゅいんにカッコイイんです。ま~~たアキヒトさんの声が伸びて~~めちゃくちゃ気持ちよく、そして切ない。
ポルノグラフィティの歌詞は、よく「問いかけが多い」と言われていた記憶があるんですが(少なくとも私が10代の頃はあったよ!笑)その問いかけを大切に抱えるかのようなアキヒトさんの歌い方も、またいいんですよねえ……。
せっかくなので、ファーストテイクからも一曲。
ポルノグラフィティ - テーマソング / THE FIRST TAKE(2021/09/15公開)
25年前の曲もいいですが、勿論、最近の曲も素敵。
一度、大学生くらいの時かな、「ポルノグラフィティもおじさんになって落ち着いちゃったのかな~」なんてド失礼なことを思った時期もあったんですが(マジでくそ失礼だな……)、多分それって人間をやっている以上当たり前のことで、必要な過程なんですよね。大人になる、ってのは良いことも悪いこともあり、「成長」という言葉で片付ければ早いけど、現実にはそれ以上のものをたくさん含んでいる。
確かに彼らは青年から大人になり、インディーズバンドから世界に発信するアーティストになったように、環境も彼ら自身も色々変わって……でも、同じように私も変わっていた途中だった、きっと。モラトリアム期間が長かったので、勝手に「ポルノグラフィティはずっと変わらないだろう」みたいな期待というか、過度な願望があったんですよね。変化する、変化せざるを得ない途中で、先に進んでいるポルノグラフィティというバンドに憧れや悲しさがあったんじゃないかな。う~ん、青春してたねえ!(笑)
実は、これを書いている(3/8)明日明後日と、福岡でライブがあるんです。仕事だったので断念したし、昔からどうもライブっていうのが苦手で……否、苦手意識がぬぐえないまま来てしまったから、迷った挙句、チケット取らずに仕事を取ってしまった私なのです。トホホ。
やっぱり取ればよかったな……なんて、公式サイトを見ていると思ってしまうんですけど、それはそれ。勇気が出ないまま大人になってしまった私がいます。ライブに行かれる皆様は帰るまで怪我なく、楽しく、ポルノグラフィティの世界に浸かってきてほしいと願います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。週末には好きな曲を聴いてお過ごしください。
余談。
うちの母、吉川晃司さんが好きなんですよ。
私が物心ついた時には、母は毎日、吉川晃司さんの曲を聴いていて、吉川晃司さんが当時乗り回していたという日産シルヴィア(紺)と同じものに乗り、そのシルヴィアの中でガンガン「RAIN-DANCEがきこえる」と「LA VIE EN ROSE」と「KISSに撃たれて眠りたい」を流していたんです。我ながらハードな家ですね。
更に大きくなってから気づきましたが、吉川晃司さんもポルノグラフィティのお二人も(そして今は抜けられているTamaさんも)広島出身なんですよね。どちらもジャンル「ロック」だし。いや、母には一緒にするなと怒られそうですが……。血が争えんなと思います。
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