試作モデルで失敗しないための3つのルール
商品開発のプロセスにおいて、「試作モデル」は非常に重要な役割を果たします。デザインの確認、機能性の検証、量産に向けたテストなど、プロジェクトのあらゆる段階で活用されるからです。しかし、試作モデルを作成する際に「何を確認するのか」が明確でなければ、レビューが脱線し、無駄なコストや時間を生み出す結果になりかねません。
以前、noteで試作モデルに関する記事を投稿しました。その内容を読んでくださった方々からレターをいただき、特に以下のような声が印象に残りました。
「具体的なステップが知りたい」
「失敗経験からの学びをもっと詳しく聞きたい」
これらの声を受けて、改めて「試作モデルで確認すべきこと」の重要性と、私自身が経験した失敗から得た具体的な教訓をもう一度書き直すことにしました。
試作モデルとは?
試作モデルとは、商品開発の過程で作成する原型や試作品のことを指します。「プロトタイプ」とも呼ばれ、製品の形状や機能、耐久性などを検証するために一つまたは少数個が作られます。試作モデルにはいくつかの種類があり、それぞれの目的に応じて作成されます。
デザインモデル: カタチを立体的に確認するために作成。
機能モデル: 製品の機能性や機構を検証するために使用。
CMFモデル: 色、素材、仕上げを再現し、プレゼンテーション用に作成。
これらのモデルは、プロジェクトの進行状況や目的に応じて適切に選び、必要なタイミングで作成されるべきものです。
試作モデルで失敗した苦い経験
試作モデルを扱うプロセスの重要性を痛感したのは、あるプロジェクトでの失敗がきっかけでした。
商品デザインが決定し、細かな設計に入る前段階で、クライアントと「試作モデルを作ろう」と合意しました。
しかし、私とクライアントとの間で「何のための試作モデルなのか」が明確化されていなかったため、以下のようなズレが生じてしまいました。
私の意図: 隠れた問題を洗い出すために試作モデルを作成。
クライアントの期待: プレゼンテーションで使用できる完成度の高いモデルを想定。
結果として、試作モデルのレビューでお互いの認識のズレが表面化し、プロジェクト自体が停滞してしまいました。
試作モデルを活用する際に注意すべき3つのポイント
試作モデルで確認すべき内容を明確にしないと、目的が曖昧なまま進められ、期待外れの結果に終わる可能性があります。以下のポイントを押さえることで、試作モデルの活用をプロジェクト成功に結びつけることができます。
1. 試作モデルの目的を共有する
試作モデルは、確認したい内容に応じて種類や品質が異なります。そのため、プロジェクトの関係者全員で「何のための試作モデルなのか」を明確化し、共有することが大切です。
デザインの確認なのか?
機能性や組立性の検証なのか?
プレゼン用に外観を重視したものなのか?
試作モデルの目的を文章化し、事前に合意を取ることで期待値のズレを防ぎます。
2. 確認項目を具体的にリストアップする
試作モデルで確認する内容をリスト化し、関係者間で事前に共有することが重要です。
例:
「機能モデル」の場合: 組立性、クリック感、耐久性。
「デザインモデル」の場合: 見た目の印象、サイズ感、手触り。
このように具体的な項目を挙げておくと、レビューが脱線せず効率的に進められます。
3. 試作モデルの品質基準を設定する
試作モデルの精度は、目的や確認項目に応じて設定されるべきです。
高精度なモデルが必要な場合もあれば、粗い仕上がりでも十分な場合もあります。
試作モデルを外部に依頼する場合は、品質基準を明確に伝えることが大切です。
注意点: 3Dプリントサービスの品質は会社によって異なるため、どのような精度が必要なのかをきちんと確認・指定することが重要です。
失敗を防ぐための工夫
私の失敗から得た教訓は、以下の点を徹底することでした:
試作モデルの目的、確認項目、検討内容を事前に共有する。
試作モデルの品質を確認し、必要に応じて検品や追加加工を行う。
納品後の期待値をすり合わせ、クライアントと綿密にコミュニケーションを取る。
過去の記事では主に失敗談を中心に共有しましたが、その内容を読んで「どうすれば失敗を防げるのか」「実際のプロセスをもっと知りたい」といったフィードバックをいただきました。今回の記事では、具体的なステップや確認ポイントを明確化し、実践的な内容を意識して再構成しました。
試作モデルを適切に活用することで、商品開発のクオリティが大きく向上します。ものづくりに携わる方々のお役に立てば幸いです。