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ボリス・ジョンソン新首相とESG

英国では7月24日にボリス・ジョンソン氏(以下、ジョンソン)が首相に就任しました。独特の髪形や風変わりな言動で異端児ぶりをアピールしていることから、メディアでは批判的なトーンで語られることも多いようです。しかし英国の戦後史を振り返るとそのような異端児が歴史に大きく影響しており、そのような異端児を包摂する英国議会の懐の深さを実感することができます。

ジョンソン以前の異端児として有名なのはチャーチルやサッチャーで、首相就任時には多くの批判を浴びましたが、結果的には多大なる功績を挙げました。チャーチルは第1次世界大戦での失敗その他の理由で、政治的に干されていました。しかし第2次世界大戦でヒトラーの台頭により英国の存続が脅威に晒される中、チャーチルは首相に就任し、ヒトラーとの交渉を断固として拒否しました。チャーチル以外の政府要人はヒトラーとの政治交渉により国家存続を進めようとしていたにも関わらずです。最終的には英国は連合国軍の中核の一国としてついには勝利を収めました。ちなみにジョンソンはチャーチルを敬愛しており、著書『チャーチル・ファクター』にその功績をまとめています。

一方、サッチャーは女性初の首相就任とともに、徹底した民営化政策で知られています。第2次世界大戦後の英国では基幹産業で企業の国有化が進み、電話、ガス、航空、自動車、水道などで国有企業による運営が常態化していました。サッチャーはそれら国有企業の放漫な経営とそれに伴う国家財政の逼迫を緩和するため、国有企業の民営化を進めました。効率的な運営を促進するとともに、法人税収の増加を狙うことにより、英国経済の停滞に楔を打ちました。

そしてジョンソンは英国のEU離脱に関する言動が取り上げられることが多いのですが、ESG分野でも早くから着手したことはあまり知られていないのかもしれません。ジョンソンは2008年から2016年までロンドン市長を務めましたが、その初期である2009年に欧州委員会との交渉の末、ロンドンのグリーンプロジェクト推進への資金援助を取り付けています。規模は1億ポンドと必ずしも巨額とは言えませんが、後の欧州投資銀行(EIB)やロンドン市のグリーンボンド発行にもつながったと考えれば、ジョンソンはその立役者の1人だったと見ることができます。

ジョンソンもチャーチルやサッチャーと同様に、英国の窮地を救えるのか、楽しみに動向を見守りたいと思います。

PS:ジョンソンへの期待は以下の著書についての調査の過程で英国の歴史を振り返ったのがきっかけです。よろしければ『チャーチル・ファクター』に加えて、こちらもご覧いただけたら幸いです。

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