泥務の珈琲。
先日から読んでいるマンガ、藤田和日郎氏の「双亡亭壊すべし」。
これが大変面白い。
友人に勧められて読み始めたのだが、その勧め方がまた良かった。
「絵を描いているなら、是非読んでほしい」
興味がそそられる上、読みはじめてからは、まさにその一言に尽きる。と言ったところ。
内容は突拍子がなく、怪屋敷「双亡亭」の破壊命令が総理直々下される。当然のごとく世間は批判するのだが、この屋敷、ただの屋敷ではなかった。世界各地から選りすぐりの霊能力者たちが志願し、この屋敷の怪に立ち向かう。
この作品に登場する一癖も二癖もある画家 坂巻泥務。
自身の創作に対して並々ならぬ探求心を持ち、それが周囲に多大なる迷惑をかけているのだが、何故か憎めない。
そんな(明治生まれの)彼が世界旅行をし、見知ったという"コヒ"。
珈琲豆をすり鉢ですり潰し、湯を注ぐといった代物なのだが、これがまた不味いらしい。
しかし、そうも不味いのなら飲んでみたい気がしてくるので、人と言うものは不思議である。
酔狂とは思いつつ、丁度ある珈琲豆でやってみることに。
家にある大きなすり鉢に豆を入れ、擂るべし擂るべし…。
粗さがまちまちのコーヒー粉ができた。
正直、この時点ですでに不安である。
今回はフィルターでドリップする。
鉢の方に細かい粉が残るので、そちらはお湯を注いで泥務の"コヒ"を再現。
マル成バターサンドを添えて。
いざ実食。
最初に鉢に残った方の"コヒ"をいただく。
粉に対してお湯が多かった為か、コクのあるお茶のような味わい。カスカラに似ている。
底に粉が溜まるものの、予想に反して美味しい。
一方のドリップしたもの。目の粗さがまちまちで抽出に時間がかかった。
色からしても濃い。飲んでみても、やはり濃い。濃すぎる。
ミルクを入れてみることに。
すると味のとがりがなくなり、まろやかに。しかもこれがまた、マル成バターと相性がいい。
コーヒーの濃さがマル成の甘さを引き立て、一段と美味しく感じる。
意外である。
手間がかかるので、またやることはないと思うが、良いお茶の時間となった。
泥務、ありがとう。
これを読んで、気になった方は是非、「双亡亭壊すべし」を手にとって泥務の"コヒ"を飲んでみてほしい。
作品とともに、より味わい深い時間を過ごせることだろう。