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UX心理学の視点から見る「おとり効果」とは
朝食のパンケーキから始まる雑念
今朝、パンケーキを焼いてたんです。朝食としてはいたって普通なんだけど、何をかけようか迷う時間がけっこう好きなんですよね。はちみつ、メープルシロップ、バター、チョコソース、果物のコンポート……考えれば考えるほど誘惑が増えるし、選択肢が多いほど混乱する。そうやって迷ってるとき、ふと頭をよぎったのが「おとり効果」でした。
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「あれ? ‘おとり’のトッピングを1個用意すれば、迷いが減るのかな?」って思ったんです。どういうことかというと、明らかに不利な選択肢を一つ入れることで、別の選択肢が急に魅力的に見えてしまう仕組み。それがまさにおとり効果。そんな朝食風景から始まる雑念をそのままに、今回はUXデザインでよく使われるこのテクニックを深堀りしてみようと思います。
そもそも、おとり効果(Decoy Effect)って何?
おとり効果、英語でDecoy Effect。別名「非対称支配効果」とも呼ばれるけど、名前を聞いてもピンとこない人も多いかもしれません。でも実は、意識せずに日常的に体験してることが多い現象なんです。
例えば、AプランとBプランで迷っていたとしましょう。Aは安いけど少し魅力が足りない、Bは高いけど魅力的。そこでBとよく似ているけれど「微妙にBより割高で魅力が少ない」Cプランを加えると、比較したときにBのほうが断然お得に見える。結果、Bがやたら良さげに映ってしまう。こんなふうに、明らかに不利な選択肢があることで“本命”が際立つのが、おとり効果なんですね。
日常に潜むおとり:気づかないうちに誘導されてる?
典型例としてよく挙げられるのは、映画館のポップコーン。Sサイズで十分かな? Lサイズは多いし……でも間にMサイズがあると、なぜかMサイズよりLサイズを選びがち。Mを“おとり”として設定しているから、Lのほうがコスパがいいように見えてしまうわけです。
さらに身近なところで言うと、雑誌の定期購読プランや動画配信サービスの料金体系も似たような構造になっていることが多い。月額プランと年額プランの真ん中に、微妙にお得感のない3か月プランや6か月プランが挟まっている……。だいたい「じゃあ最終的に年額にしちゃおう」となってしまう。
こうやって書いてみると、「なんだか誘導されてるな」と思うかもしれません。でもこれが人間の意思決定の面白いところで、感覚的に「比較」しやすい相手があると、そちらに流される傾向が強いんですよね。
「正直に誘導」するUXデザインのジレンマ
UXデザインの視点からすると、おとり効果は正直、すごく便利です。ユーザーが最終的に迷いなく行動を決定してくれるのは、デザイナーにとってもビジネスにとってもプラスになる。だけど、露骨に「騙されている」と感じさせてしまうと逆効果になりかねない。
結局のところ、おとり効果は心理的トリックでありながら、ユーザーが「これは得だ」と納得して喜んで選んでくれるように設計する必要がある。たとえば、実際に大半のユーザーにとっておすすめのプランをさらに後押しする“ちょっとだけ微妙なプラン”を用意する、みたいなやり方ですね。
「おとり」をうまく配置しながら、ユーザーに損をさせない。むしろ最適な選択がスムーズにできるようサポートする。そんな「正直だけど賢い誘導」が、UXデザインの理想なのかもしれません。
まとめ:パンケーキと、おとり効果
気づけば最初のパンケーキから真面目なUXデザインの話まで飛んでしまいましたが、それだけおとり効果というのは面白い心理現象だと思います。普段の生活からマーケティング、UXデザインに至るまで、私たちはあちこちでこの効果に触れているんだなと実感します。
結局、今朝は「マーガリン」をおとりにして、バターを大盤振る舞いした僕でしたが、結果的には満足。自分で自分を誘導するのも案外悪くないものです。
人間は、比較対象が増えると迷いながらも、時に合理的な結論へスッと落ち着く不思議な生き物。デコイ(おとり)の存在は、その「迷い」をいい方向に導く可能性を秘めています。皆さんも、この心理テクニックを意識して日常を観察してみると、見慣れた世界が少しだけ違って見えてくるかもしれません。
それでは!!