触れて、紡いで〜美術館さんぽ7/27〜
「てあて まもり のこす」神奈川県立近代美術館鎌倉別館 ※本展覧会は7/28で終了しました※
うだるような暑さを避けるべく、朝早くに出発した。土日の鎌倉は確実に混む。それならば、混む前に。
神奈川県立近代美術館鎌倉別館は鶴岡八幡宮のさらに奥。裏手になるだろうか。
開館は午前9時半。その前にお参りもしたい。
人影の少ない、打ち水された小町通りをアイスコーヒー片手に歩き、八幡さまの鳥居をくぐった。
あれ。
目の前に広がる緑、ちらほらと白い花が映り込む。これはもしや、蓮の花?
早起きの嬉しいサプライズ。昼前には閉じてしまう花は、まだ姿を保っていた。
水面が見えないくらい繁った大きな葉。
波間を縫うように白い花が咲いている。
口をあんぐり開けたまま。しばし見入ってしまった。
余韻に浸りつつ、本殿に向かう。
手水舎のそばに茅の輪が据えてあった。
100円納めて、手順通りに8の字を描く。
厄は払えただろうか。
階段を下り始めた頃、徐々に人が増えてきた。
どうやら骨董市が催されるらしい。
美術館に向かう横道に人が集まっている。
気になるけれど…美術館が先!
「てあて まもり のこす」
サブタイトルは「神奈川県立近代美術館の保存修復」。保存修復にスポットを当てた展覧会は珍しいのではないか。県のたよりで目にしてから気になっていた。会期終了前日にようやく足を運んだという、ていたらくなんだけど。
タイトル通りの3部構成。
展示フロアは2階だった。ずっと昔に来た近代美術館鎌倉から移転したんだな。だから別館。
こじんまりとしているけれど白くて美しい外観。
美術館の目的は5つあるらしい。
●あつめる(収集)
●まもる(保存)
●みせる(展示)
●ひろめる(普及)
●しらべる(調査・研究)
てあて、まもる は保存に当たるだろう。
近代美術館に保存修復担当研究員が配置されたのは2003年。葉山館の開館に合わせて館内に修復室を設けたという。
それまでは外部に委託していた。
国内で修復が行われたのは20世紀後半から。
そう聞くと、日本の修復の歴史はまだまだ浅い。
「てあて」から見ていく。
作品には修復歴が示され、どの部分をどうやって直したかがレポートで記録されている。
修復前と比較すると、その差は歴然だ。
この説明が腑に落ちた。作品が別物になっては意味がない。作者に失礼だ。
作者の想いを汲んで、できる範囲で修復していく。材質や劣化具合で制限もあるだろう。
作者がご存命ならば対話を重ねられるが、できない時は思いを巡らせるしかない。大変だ。
修復に使う道具一式も展示されていた。
手術台?大工道具?キッチン?
アイロンにドライヤー、たわしに包丁。
目が惑うくらい多くの道具が陳列されている
続いて「まもる」。
その状態を保ったまま残す保存。作品を取り巻く環境を整え、損傷を予防することにより大きな予算と労力をかけている。
修復には作品に無害な材料を。紫外線を防ぐためにUVカットの保護板を使用して、有害物質からバリアする。作品を安定させるために軸装から額装に変えたりもする。
他に貸出す際の運搬方法まで想定されていた。
私たちが普段見ている作品には、作者だけでなく、見えない美術館スタッフの多くの手がかかっている。まさに協働だ。
照明や虫対策。作品を守るのに適切で、且つ観る人が過ごしやすい範囲の温湿度。
これからは隅々まで美術館を見よう。
見えないところまでじっくりと。
外庭に面した小さなカフェで休憩。
ぐんぐん上がる気温。灼熱の世界に出る前に、ひと息つきたい。
ホットコーヒーとクラシカルなプリンをいただいた。こちらは美術館利用者以外でも入れるそう。
心地よい美術館。また訪れよう。
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