【詩】心の砂粒
ここにいてはいけない私が
あそこにいて
そこにもいて
心の留め金が
ゆっくり外れていく感じ。
極上の幸せが
私を粉々に打ち砕き
人々の伸ばした手が
心の衣を引き裂いた。
もう私は
みんなのもの。
ここにいてはいけない私が
どこでもいる。
あそこにも。
そこにも。
ここにも。
心の中で
巻き起こった旋風が
脆い思いたちを
すっちゃかめっちゃかに
混ぜ繰り返して
私はすっかり
不幸のヒロイン気取り。
ここにいてはいけない私が
本当にどこにもいなくて
ここにもいなくて
嬉しくて
涙がこぼれる。
夜空を見上げて
星の数を数えたりして
自由に吹く風に
頬をさらしたりして
そんなので
自分をごまかして
なにもかも悟った気になって
涙がこぼれる。
ここにいてはいけない私が
あの人のことを
その姿だけを
ただ思い出し
その思い出が
はるか昔のことだということまで
思い出して
ただ笑う。
私がたどり着く場所なんて
ずっと昔に
過ぎ去っていったくせに。
その時は
なにも価値なんて
見出してなかったくせに。
ただ笑う。
ここにいてはいけない私が
ただ笑い
涙をこぼし
それだけ。
幸福も
不幸も
3才のわたしが
波打ち際に
小さな手でこねて作った
お城だった。
かわいいお船が
沖を通って立てた波
そのさざなみが
お城を一握の砂に
還した。
ここにいてはいけない私が
一粒だけの砂粒を
てのひらに握って
いつの間にか
ここにいた。
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