見出し画像

【パルクール体育】授業実践編②<年度初めのパルクール単元>

こんにちは。
【パルクール体育シリーズ】も4つ目となりました。前回は、パルクール体育の年間計画のお話をしました。

これを受けて、今回は、年度初めに行うパルクールの単元についてお話します。



1.単元計画

まず年度始めに行うパルクールの単元は、以下のような計画になります。

2.それぞれの時間の授業

①コース作りとコース慣れ

まずはじめの時間はコース作りから始めます。コースはこの図の通りです。

パルクールコースの例(黒四角はマット、箱は跳び箱)

マットや跳び箱を出すので、マットの運び方や跳び箱の運び方についても、この年度始めの単元でしっかりと共通理解を図ります。(安全な準備の約束や、準備をテキパキ行うノウハウについても後日書きたいと思います。)
この時間のコツは、マットを出す位置や跳び箱を出す位置にビニールテープ等でマーキングしておくことです。(事前の時間が無いときは、この時間に出したときにマーキングすると、次回から時短できます。)

場の準備が出来たら、実際にコースを回ってみます。クラスの人数が少なければ、スタート位置を決めて1周回ってくるようにすると良いですが、クラスの人数が30人程度より多い場合は班ごとにスタート位置を決めてスタートさせます。

安全の約束として①前の人がいなくなったらやってOK、②できる動きで楽しむ の2つを確認して行います。

また、「自由にやっていいよ」と言っても、子どもたちはこれまでの体育の経験から既存の器械運動の技から離れることができないことが多いです。そういう場合は、「跳び箱は乗って跳び降りてもいいし、マットはナナメに回って(柔道の受け身のような形)もいいんだよ」と伝え、可能ならやって見せてあげると良いです。そうすることで「そういうのもありなんだ」と、子どもの思考の枠を広げることができます。

②コース作りの確認とコース慣れ

2時間目も、まずはコース作りです。単元計画を作るときって、毎時間に技能向上のめあてを設定しがちですが、そうやって焦ってはいけません。2時間目は「安全の約束を守りながら教師の言葉を減らして準備ができること、コースを楽しんで回ること」を大事にします。
「楽しんで回るだけで、体育としての価値がないじゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが、それは違います。
安全に場を協力して作ることも大事な価値ですし、コースを楽しんで回るというのは、「楽しんで回れない」段階を経てたどり着くものですから、楽しんで回れるようになるということはそれなりの向上がすでにあるということです。
ということで、2時間目は、大まかな流れは1時間目と同様になります。

③新しい動きを見つけてみよう

3時間目は動きを広げていきます。
マット、跳び箱、鉄棒で、「今までの体育の技をアレンジしたり、今までに無い動きを入れてみたりして、新しい動きを作ってみよう」という活動をします。
今までの2回の中でも、新しい動きをする児童は出てきているので、子どもたちの頭では「ああいうことをしてみればいいのね」という思考が働きます。
めあてを確認したら、一回子どもたちを場に放ち、2周くらいしたら集合させます。そこで、どんな技ができたかを聞きます。いろんな技を確認することで、子どもたちの思考をさらに拡げる手助けになります。
全体である程度確認したらまた場に放っていきます。
ここまでくると、「全部回るんじゃなくて一つ一つ練習したいな」という子が出てきます。それを次時の活動に繋げます。

④個々の「やりたい場所」で練習する

前時で出た「一つ一つやりたい」を、この時間ではメインにします。4時間目の流れは以下の通りです。
1 ぐるっと1周パルクール
2 やりたい場所を決めて自由に練習
3 ぐるっと1周パルクール
まずは今まで通りに1周コースを回ります。ここで、「個別でやるときにやりたい場所を決めておくよ」と伝えます。
ぐるっと1周終えたら、それぞれの「やりたい場所」やる時間です。一つの場所で限定させず、場所を移ってよいことを伝えます。こうすることで、いろいろな自己決定がここで生まれてきます。空いている場所や残り時間を考慮しながら、自分のやりたいことを実現できるように工夫して動き始めるのです。
ある程度の時間になったら、最後に1周コースをまわります。個別で練習したことがここで出せる子もいればそうでない子もいます。それでいいのです。うまくいかないなあという経験が次に生きます。

⑤単元のまとめ

5時間目は単元のまとめです。「今後の器械運動でやりたいことをまとめる」ことを目標にします。
基本的な流れは4時間目と同様ですが、個別練習の時間を短めにして、振り返りの時間をしっかりとります。
その振り返りの中で、マット、鉄棒、跳び箱のそれぞれの単元で「やりたいこと」をワークシートに記入します。
それぞれの単元でそのままできるとは限らない子もいますが、まずはここで「やりたいこと」を決めてみることで、各器械運動の単元が始まるときにすでに目標をもった状態になります。ここがとても大事なのです。

3.器械運動につなげる

5時間目に各器械運動でやりたいことを決めさせることが大事だと言いました。ここに、私がパルクール体育を実施している一番の理由があります。
これまで、器械運動の授業を実践していくなかで、どうやっても目標設定が教師主導になることにモヤモヤしていました。それをどうにかしたいと思った結果が、この単元が生まれた種になっています。この単元で各器械運動の目標をもつことで、器械運動単元実施前に、子どもたちが「やりたいこと」をもっている状態になります。そうすることで、単元実施の際にはモチベーションの高い状態で入ることができます。この単元のねらいの一つがそこにあるのです。

おわりに

年度始めにパルクールを単元として行うことは、以上に書いてきたことだけでないメリットもあります。
それは「子どもたちの『当たり前』を良い意味で崩す」ということです。
今までの器械運動では認められなかった動きもOKとされ、様々な自己決定が認められる。
そういった経験年度始めに行うことで、一年間の体育が大きく変わっていきます。

次回は、この単元を受けてのマット運動の授業についてお話しします。

ではこのへんで。。。

いいなと思ったら応援しよう!