【学級経営】自己決定を柱に
こんばんは。
年度末、教室の片付けも大変な時期ですよね。
さて、年度末ということで、新年度に向けてのお話です。
新年度に向けて、どんな学級経営をしていこうかなと考えている方もいらっしゃると思います。私の学級経営の柱にしていることが「自己決定」です。今日は自己決定がなぜ大切なのか、どのように自己決定の場を設けていくのかについてお話していきます。
1.なぜ自己決定が大切なのか
まず、なぜ自己決定が大切なのかを簡単にお話します。日本は戦後、「組織のねらいに沿って働ける人」を育ててきたことで大きな成長をとげました。そうです。高度経済成長ですね。その時代、日本を成長させ、支えてきた企業にはカリスマと呼ばれるトップがいて、そのトップの意向をストレートに実行する組織が大きな成長をしてきました。つまり、この時代に必要だったのは「上の言うことを素直に聞く人」だったわけですね。会社の方針に従っていれば全てがうまくいく、そんな時代でしたので、人は、良い大学に入って良い企業に就職して定年まで勤めあげる、ということが理想だと思っていました。教育で求められていたことも「良い大学に効率よく入る方法」だったわけです。しかし、そんな時代はとっくに終わり、VUCAと呼ばれる現代において生き抜くには「自分の最適な道を自分で選ぶ力」が必要になっています。つまり、「自己決定できる力」が必要なのです。
しかしながら、高度経済成長期に必要とされていた学校のスタイルでは「自己決定よりも従順」が求められていたので、今でも、「自己決定できない人」を大量に育ててしまっている現状があります。それが「指示待ち」の子どもたちです。教師の指示がないと、何をしていいかわからない。そんな子どもは多いです。「先生、次は何をすればいいですか?」「先生!〇〇くんにたたかれましたー!」全て教師の指示待ちです。でも、これは子どもたちが悪いのではありません。「指示通りに動きなさい」としてきた教師側の責任が大きいと私は思います。
OECDが出した"Education 2030" という資料でも、"Agency"が大切にされています。自己紹介記事でも少しそこに触れました。
"Agency"というのも、広く考えると「自己決定力」です。自分に最適な道を自分で選んでいく。それが生きる上ではものすごく大切だということですね。
2.どのように自己決定させていくのか
自己決定が大切だということはお話してきました。
では、どのように自己決定できる力をつけさせていけばよいのでしょうか。
自己決定の力をつけていくために必要なのは一つ。
「問う」です。
とにかく問う。ひたすらに問う。これに尽きます。
問う→子ども自身で決める→結果が出る→振り返る→問う→…
これの繰り返しです。「教える」ではなく「問う」。これが、自己決定を大切にする上で欠かせないのです。
しかしながら、教師という職業を選んだ人たちは「教えることが好き」な人が多いです。それはつまり、ちょっと毒のある視点でいうと「自分が伝えたとおりにやって成果を上げている姿が好き」とも言えます。「ほら、言ったとおりにやったらできたでしょ?」それに快感を覚えてしまいがちではないですか?(もちろん、私もその一人です…。自戒の念を込めて書いています。)そうではなく、「問う」ことを基本のスタンスに据え、答えを教えるのでなく、「伴走する」ようにすることが大切です。
また、自己決定できる力をつける上で、つい陥ってしまうことがあります。
それが「放任」になってしまうことです。
「自己決定」と「放任」は違います。
放任は、「選べもしない状態なのに任せっきりにすること」であり、
自己決定は、「選べる状態にして見守ること」です。
つまり、「適切に選べるような手立て」が何より重要です。
3.自己決定の3ステップ
そこで、私がいつも大切に思っている「自己決定の3ステップ」があります。
①選択肢を提示して選ぶ
②選択肢を想像できそうな前提を整えて選ぶ
③子ども自らが選択肢を作って選ぶ
です。
「自己決定」と言っても、初めから「ご自由に」とはしません。それは「放任」です。自己決定の基本は「選択」です。つまり、「自己決定する=自分で選択する」ということになります。その力を身につけていくというわけです。
①選択肢を提示して選ぶ:これはつまり、教師が選択肢を用意した状態にしておくということです。3択でも4択でも2択でもいい。まずはここから始めます。「Aにする?Bにする?」選択肢をこちらが提示します。これは家庭でも同じで、我が家の2歳の息子、もっともっと小さいときから、飲み物を渡すときは「りんごにする?ぶどうにする?」と選択肢を示してきました。こういったことが何よりも基本ですし、選択肢を示すことが、「こういうときはこういう選択肢があるのか」と、子どもたちの引き出しを増やし、子どもたちが自己決定できるようになっていくための土台となるのです。
②選択肢を想像できそうな前提を整えて選ぶ:次の段階はここです。ある程度引き出しが充実してきた感が出てきたら、今度は選択肢をこちらが示しません。ただ、「こういうケースだったらこういう選択肢があるんだよな」と想像できるようにします。先ほどの我が家の息子の例ですと、飲み物を選ばせることを続けていくことで、飲み物を選ぶ場面のときは「りんごにしよっかなー。ぶどうにしよっかなー。…りんご!」と選ぶようになります。つまり「冷蔵庫にはこういう飲み物が複数あって、飲み物は選ぶものだ」という引き出しができた上で、「飲み物を準備する」という前提を設定すると、こういう自己決定が生まれていくわけです。
③子ども自らが選択肢を作って選ぶ:①と②を繰り返してくると、引き出しがかなり多くなります。そうなったら「自分でイチから選ぶ(決める)」ができるようになっていきます。またまた息子の飲み物の例で申し訳ないですが、①と②を繰り返すことで、「自分で冷蔵庫に行く→冷蔵庫を開ける→何があるか確認する→選んで伝える」ことができます。つまり、自己決定できる場面を自身で認知できているから、何も言わなくても選ぼうと(自己決定しようと)するわけです。ここまでくると「飲み物」という場面での自己決定力は身についたと言えるわけです。
4.授業の中での自己決定
さて、話を学校現場に戻します。
授業の中では、どのように自己決定の場をデザインしていけばよいのでしょうか?次はそんな話をします。
授業という視点で自己決定を考えると、図工のように、クリエイティブさが前提として求められているものは自己決定が必然ではあります。今回は、「習得」を中心とした授業の中での自己決定を考えてみます。
習得という視点で考えたときに出てくるものは「自由進度学習」や「学び合い」、「けテぶれ」なんかが思い浮かびます。これらについては、本もいろいろと出ていますし、いろんなところに情報はあるので、そちらをご覧ください。
ここまではいきなりできないよ!という方も、簡単にできる一つの方法を紹介します。それが「ドリルをどこからやるのかを決める」です。
例えば、算数の計算ドリルのどこか1ページを想像してください。そこには20問程度の計算が並んでいるとします。普通、1問目からやりますよね。これを、どこから始めるのかを選ばせるわけです。自己決定のステップ①の段階であれば「①1問目から ②5問目から ③11問目から」と選択肢を用意すればいいですし、ステップ②であれば「何問目からやるか選んでね。」でOKです。
これだけで、子どもの意欲は変わります。なぜか。それは、「1問目からやりましょう。」は指示された(命令された)ように感じる一方、「何問目からやる?」は自分で決めたという実感のもとで取り組めるわけです。
もちろん、難易度を考えると1問目からやるべきなのですが、子どもにとって必要な問題が1問目からとは限りません。どこからやってもそれほど差がないようなときだってあります。難しい問題からやって解けないという経験も、自己決定力を育てていく上では重要です。とにかく、「自分で決める」が大事なのです。
5.ケンカのときも自己決定
さて、日常生活でも、自己決定する場面は多くあります。
私は、子どもたち同士のトラブルの場面でも、自己決定させるようにしています。どういうことか、いかにまとめました。
①ケンカが起きる。
②どうしたの?(事実確認、状況の整理)
③どうしてほしかったの?(伝えたいことの確認)
④今、どうしたい?(できそうなことを自己決定)
⑤これからどうする?(予防策を自己決定)
ざっと、こうでしょうか。
この③④がものすごく大事だと思っています。ケンカというのは、相手にこうしてほしいという思いが果たされないときに「文句」が出て、それに反応して起こることが多いです。つまり、「相手にしてほしいこと」がある状況なわけですね。それを正しい言葉で伝えた上で、「じゃあ今どうしたい?」を当事者2人と相談します。これが④です。こうすると、互いの思いの中間点になる案を出すようになります。それがうまくいかないことがあってもいいのです。とりあえず自己決定させます。そして、うまくいなかったときは、またこのように話し合って、案を改善していけばよいのです。
うまくいかなくてもいい。とにかく考えさえ、決めさせる。ここが大事です。教師が「こうしたらいいよ」「こうしなさい」と言ってしまうと、子どもたちは考えることをやめます。うまくいくかわからない、けど、「決めてみる」ことが大事なのです。
おわりに
長々と書いてしまいましたが、VUCAな世の中だからこそ「とりあえずやってみる」精神がものすごく大切です。自己決定の機会をとにかく増やすことが、これからの時代を生きぬく「とりあえずやってみる力」を伸ばすのは間違いありません。ただ、「やらせっぱなし」はダメですよ。「振り返り→改善案」までは一緒に考えます。ひたすらそれの繰り返しです。根気強く付き合いながら、自己決定できる力を身につけさせていきましょう。
では、今日はこのへんで…。
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