自由と対等を基盤とした人の暖かい交わり
ひょんなことから「野外活動指導員」というキャンプカウンセラーをすることになった大学1年生の春。週末は夏のキャンプに向けて、自然の家に行って、飯盒炊飯やテントの立て方といった研修を受けた。
見学の日の説明通り、先輩たちは中学高校のクラブの先輩といった感じではなく、フレンドリーにキャンプ初心者に教えてくれる。教えてくれるが、下に見ているわけではない。敬語も必要ない。職員さんも先生とは違う。評価してくる存在でも、規則を守ってるか見ている存在でもない。大学生の活動がうまくいくように相談したら、話に乗ってくれる存在。ふだんは仲間として気軽におしゃべりしている。この施設の「キャンプリーダー(ひっぱっていく人)」ではなく、「キャンプカウンセラー(相手が自発的にやっていくことを見守り、求められたら情報を与えたり、協力する)」のような大人の在り方。思えば、学校でも、家でも、習い事でも、こういうスタンスの大人は周りにいなかった。とても心地よいもので、立場でなく、その人となりで親しくなれる感じがした。
そんなわけでとても楽しく、ご機嫌に夏までの3か月が過ぎていった。
7月末、ついに小中学校の夏休みが始まり、キャンプシーズン到来!
3泊4日、小学校4年から6年の子どもたち数名と一つの班となり、野外活動をする…バスが来るのを待っていると、はたっとその現実に気づいた。
一人で8名もの子ども、お互いもランダムに班分けされているから知り合いでもない…そんな子たちと4日間も仲良くやっていけるのか?? だいたいほかの1年生は先生を目指していて子ども好きか、小さいころにこのキャンプ場に来ていてキャンプ好きか。私だけじゃないか…子どもも好きでなければ、キャンプもしたことがない…子どもにも、キャンプにも慣れてない人は!!練習したといっても、一人でテント建てれるようになったの?いやいや…子どもが建てるのに困ったときに手伝うって…手伝える実力あるの?私はまだ手伝ってもらうほうじゃないの??
だいたい、今の子どもがなにが好きで、どんなTV見て、どんなゲームしてるかも全く知らない!!共通点が思い浮かばないのに、仲良くなれるん? 子どもの到着を待っている間に泣きたくなった。気軽にボランティアしたらいいっかって思い込んでた自分の思慮の浅さを恨みながら…
さて、キャンプが始まると、そんな愚痴も言ってられない。やるしかない。なんとかテントもたった。自分が緊張してるから、子どもが緊張してるのか、仲良くなってるかよくわからないが、ともかく一日目があっというまに終わった。
二日目の昼は野外炊飯。班ごとにメニューを考えて、好きなものを作るらしい。そこで、班の子どもたちは焼き飯をつくることに決めた。
「なんで自由メニューなんだよ。研修でそんなこと聞いてないよ!カレーしか練習しなかったじゃないか!だいたい、私はオーブンでケーキやシュークリームは作れるけど、料理はおにぎりも握ったことない!いや、おにぎりは料理じゃないのか…」と心の中ではまた泣きそうになっていた。
それでもなんとか、飯盒でごはんはうまく炊けて、一安心。「なんで飯盒で炊いた飯を、もう一回炒めるんだよ。鉄板でどう炒めたらいいのか知らないよ…このまま食べたいよ」と不安いっぱいだったが、子どもたちはそんなことはつゆ知らず、鉄板に油をひき、野菜をいため、ご飯を投入。塩と胡椒で味付け。味見は、まぁまずくはないけど、家で食べる味とは違って、なんかなぁ・・・薄って感じ。でも、どうしたらいいか途方に暮れていると、各班を見回りしている先輩がちょうど来て、子どもたちの話を聞いてくれた。「それなら、しょうゆをかけるのはどう?」とアドバイスをくれて、子どもがひとまわし振りかけた。
すると、すごく香ばしいにおいが立ち込めて、自分も含めてみんなが「おお!!」となった。すごくおいしくなって、お代わりしたり。「最初はどうなるかと思ったよね!」「あの醤油、特別なんじゃない?」とか話も弾んで、すっかり仲良くなっていた。「一緒に作って、一緒に食べるっていいな。好きなメニューを決めれてよかった。」とげんきんな私はすっかり野外炊飯のファンになっていた。先輩が「味見させて~」と来たけど、もうすっかりなくなっていた。「いいよ、いいよ。おいしかったのが一番!」とさわやかに言ってくれて、「まじでいい人!!これぞ先輩!!」って、漢字の意味をかみしめた。
中高のクラブでもいい先輩はたくさんいたけど、先に敬うこと、上の立場として接することっていう設定がある。そこで感じることと、対等だけど経験のある人として、自分が内発的に尊敬できるってこととは違うものだと思った。
(To be continued デモクラティックスクールと関係ないキャンプ初日の話が次も続きますが、自分がデモクラティックスクールを始めることになった基盤の話です。よかったら続けて読んでね)