見出し画像

僕が育休取るって言い出した時の周りの反応について

僕はある意味、現実主義かもしれません。

育休は自分にとって自然な選択でした。

長女が誕生した時、妻を襲った産後うつ。

仕事と家庭の両立に心身ともに疲弊しきっている自分。

教師という仕事は好きだけど、この状態で続けていけるのかとても不安でした。

1.育休の必要感

今の自分の状態と家庭のことについて冷静に考えた時、次女誕生のタイミングで育休を選択するのは僕にとって間違いない選択だと思えました。

次女が産まれた時や妻の入院中に誰が長女のそばにいてあげられるのか。

妻の退院後の生活をサポートしてあげられるのは誰なのか。

うちは妻と娘の3人家族。実家とは少し距離があります。そして両親にも仕事があります。

「僕がそばについてあげられたらなぁ」

産後うつの中、長女を育てる妻を見てからずっと思っていたことです。だから二人目が産まれた時には、僕が育休を取る。そう心に決めていました。

2.職場の反応

もちろん職場への負担についても考えました。僕が抜けるとどうなるのか。

仕事の引継ぎ、子どもたちへの影響。女性が産休育休に入るパターンを何人か見てきたので、そんなイメージでなるべく職場に迷惑をかけないようにいろんな想定をしていました。

しかしいくら自分で想定していても、管理職の判断でだいたいすべてが決まるのが組織というもの。校長先生に「育休を取りたい」と申し出る時には緊張しました。

校長先生は最初こそ「ほおぇっ!?」と驚かれましたが、「今はそういう時代だからね」とすぐに僕を擁護してくれました。僕は否定されるのではないかとも思っていたので、この言葉ですごく安心しました。

そして、いろいろと話し終えた後「それにしても君らしい決断だね」という言葉をかけてくださり、面談を終えました。

育休を取ることが正式に決まったころ、自分の仕事を引き継いでもらう人や親しくしてくれていた職場の人たちにはなるべく自分から報告をしていきました。

周囲の反応はみんな同じ。最初は奇声のような声をあげて驚き、そして最後には「君らしいね」の一言。

「君らしい」

僕としては意外な反応。育休を取る決断をすることが僕らしいと。職場の仲間は口をそろえて言いました。その言葉は妙な違和感があり、また安心感があり、そして何だかくすぐったい感じでした。

確かにここ2年ほど、自分の中でもストレスを抱えるくらい時間に追われる日々でした。周囲のことなど気にする間もなく一心不乱に仕事を片付け、ほぼ毎日定時に退勤し保育園に長女のお迎え。だからといって学級のことは絶対におろそかにしないのが教師の責務。

それが当然であり、そうするよりほかに仕方ないと思い込んでいました。

僕はあまりに周りが見えていなかったのですが、周りにはいつしか「イクメン」とか「家庭を大事にする人」みたいなイメージがついていたようです。

だから「君らしいね」。僕が必要感にせまられてとった選択は周りの人から見ても納得の決断だったようでした。

自分には不釣り合いな「イクメン」というイメージへのくすぐったさと共に、一心不乱に頑張っていた自分すらも職場のみんなは見守っていてくれたんだという安心感。頑張ってきてよかったと思いました。

実際には女性が産休に入るよりも難しい場面もありましたが、職場の皆さんのサポートのおかげで、晴れて育休を取ることができました。

3.家族・友人・知人の反応

僕の育休を一番喜んでくれたのは、紛れもなく妻です。長女と産まれてくる子を二人で育てることができる。いや、働いていても二人で育てているんですが、ずっと家にいて二人で話し合いながら育てられる安心感みたいなもの。

特にコロナ禍での出産と育児。余計に不安が募る中だったので、タイミング的にも安心させてあげられたようでした。

実家の両親は「職場が育休取らせてくれるって?へー。よかったな」とあっさり。昔から僕の決めたことに口うるさく言う親ではなかったので、こんなもの。

職場が違う友人や知人は「いいなー。俺も取りたいなー」と羨ましがり、妻の友人や知人は「いい旦那さんね。どんなお仕事してるの?」と興味津々。

周囲と話していくうちに、取りたくても取れない人がいたり、前例がなくて言い出せなかったりした人たちがいることも知って、自分がいかに恵まれているのかを実感するようになりました。

4.取りたくても取れないという現実

厚生労働省の雇用均等基本調査によると、令和元年度の男性の育休取得率は、7.48%(令和2年7月31日公表)。前年度の6.16%から年々増加傾向とはいえ、育休を取得する男性は、まだまだ少ないことが分かります。

この背景には、男性が育休を取得しにくい職場の状況があります。「育休を取得したくても取得できない男性」がたくさんいるということです。

「育休を取得しなかった理由」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」平成30年1月)を見ると、主に以下の理由があげられていました。

「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」・・・33.7%
「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」・・・38.5%
「自分にしかできない仕事や担当している仕事があった」・・・22.1%

こうして見ると、職場の雰囲気や環境を気にして取得できないと判断した男性がかなり多く、自分の家庭より職場の影響を考えて躊躇してしまうのが現状のようです。

また、休業することが昇進や昇給に関わるような職場だと、なおさら取りにくさを感じます。僕は公務員ですし、昇進願望もなかったので気にしませんでしたが、自分はその点でも恵まれていたんだなぁと実感しています。

僕の職場でも男性で育児休業を取得した例は、過去にありませんでした。それでも僕が「育休を取りたい」と言えたのは心から育休が必要だと思ったから

そのことで周りがどう思うかとか、職場にどのような迷惑がかかるかとか。それを考えなかったわけではありません。

それよりも自分たち家族が成り立つ上で育休がなければどうしようもない。周りにどう思われようが、家族が安心して暮らせるには育休が必要。

みんな同じなのに自分勝手な判断だと思われる方もいるかと思いますが、それが僕の率直な気持ちでした。

5.周りを気にして取らないはもったいない

周りを気にして育休を取る前から取らないと決める。それはちょっと勿体ないんじゃないかと思います。本当に自分が必要だと思い、取りたいと願うのであれば、少しの可能性でもかけてみる価値があるかもしれません。

もちろん周りから嫌がられたり、復帰したらひどい仕打ちに合うリスクもあります。しかし、それは女性も同じだということを忘れてはいけないと思います。

男性に育休を取る権利があるように、それに伴うリスクだってあります。男性の場合まだまだ「男が育休を取って何になる」とか、「男性の君がこの時期にまさか育休を取るなんて想定してなかった」とかいう意見もあるでしょう。

しかし育休には、それで諦めてしまうにはもったいないくらい、かけがえのない家族との時間があります。

今すぐに取ることができなくても、育休という話題を種のように職場に撒いておくと、数年後に大きくなっているかもしれません。

新婚の方であれば「自分に子どもができたときには育休を取りたい」と今から言っておけば、数年かけて育休を取れる体制が整っていき、本当に取れるようになっているかもしれませんよね。(もちろん独身でも!)

今だから分かることは、育休を取るために必要なのは言い出す勇気ではなく、リアルな現実を見る目。産まれてから考えるのではなく、産まれる前に産まれた後の生活を考えておくこと。

今の自分や家族の在り方を客観的に見て、周りにどう思われるかもさほど気にせずに育休を取った僕は、ある意味現実主義なのかもしれません。

職場のみんなも人間なので、笑顔で送り出してくれていても心ではどう思っているかはわかりません。ひょっとしたら今も僕の知らないところでフォローしてくれている方がいるかもしれません。復帰したらとんでもなく恨まれていて大変な仕打ちが待っているかもしれません(汗)

それでも今、僕は育休を取れて幸せです。家族と過ごせる時間を本当にありがたく思うことができるようになり、この家族のために頑張ろうという思いも一層強くなりました。

復帰した後のことは復帰してから何とかしようと思います。何とかできるように、今はエネルギーを蓄えています。

職場に負担をかけた分はきちんと恩返しする。僕がそうしていくことで、男性の育休に対する見方がまた少しずつ変わっていけばいいなと思います。

いいなと思ったら応援しよう!