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高速道路のトラックと学校の廊下

 復帰前最後の思い出作りに、さくっと日帰り旅行に行ってきました。

 旅の思い出話、、、ではなく。高速道路を走っていた時の話です。

 平日の夜の高速道路を走るのは久しぶりだったし、大型トラックも多かったので、少し緊張していました。

 僕が右側の追い越し車線を走っていたところ、追い越そうとした左の車線のトラックが、ふいに車線変更をして僕の車の目の前に入り込むことがありました。それも二度、三度と続きます。

 みんな急いでいるからでしょうか。トラック同士の車間距離も近く、何だか危険だなぁと感じながら運転していました。

 すると、また別のトラックが左の車線から割り込み気味に僕の車の目の前に車線変更をしてきました。

僕が、
「あぶないなぁ。なんかこういうトラックばっかり」
とつぶやくと、隣にいた妻がとてもナイスなことを言ってくれました。

「こういう危険なトラックばかりが目についてしまうけど、ずっと左の車線で安全運転しているトラックの方がたくさんいるんだよね」

 うーん、本当にその通り。考えれば考えるほどこの言葉の良さを実感できたので、ここから話題を掘り下げてみようと思います。


➣休み時間の学校の廊下

 例えば、休み時間の学校の廊下。早く遊びに行きたくて、走っていく子がいます。

 この時、教師からは、とっさに
「危ないから走らないよ!」
「歩いて移動しようね」
など、注意の言葉が飛ぶでしょう。

 これはみんなの安全のために必要な声かけであり、安全な環境づくりのために教師がすべきことの一つです。

 危険な運転をするトラックに対して、僕がとっさに
「あぶないなぁ」
と声を出した状況に似ています。


 では、普通に歩いている子にはどうでしょうか。休み時間の廊下には、ちゃんと歩いて移動している子の姿もあります。むしろ、そういう子たちの方が多いのではないでしょうか。

 普通に廊下を歩いている子に対して、
「安全に歩いていて偉いね」
「あなたが歩いて移動することで、学校のみんなの安全が保たれているんだよ」
などとは、あまり言いません。

 左車線を安全運転で走っているトラックに
「このトラックはなんて安全運転なんだろう」
「あなたのおかげで、高速道路の秩序が保たれているよ」
とは、つぶやかない状況と同じです。

 心のどこかで「廊下を歩いて移動することは当たり前のこと」という意識をもっていて、当たり前をできていることが「普通」となっているのかもしれません。

 人間、「それが普通」の状態になると、視界に入りづらくなります。教室や部屋の中が散らかっていることが「普通」の状態になると、多少ゴミが落ちていても視界に入らなくなってしまうようなものです。

 ですが、「普通」をきちんとこなしている子にも、しっかりと目を向けていくことが、教師として大事な視野の広げ方ではないかと感じるのです。

 もちろんこれは、教師の指示に従順な子がすばらしいというわけではありません。

 ネガティブな言葉によるコントロールではなく、ポジティブな言葉による自発的な行動を促していきたいという願いからです。


 教員の不祥事がニュースで出るたびに、僕は悲しい気持ちになります。
 そして、
「教師がみんなこういう人だと誤解されたくない」
「普通にがんばっているたくさんの教師のことも、もっと知らせてほしい」
と感じてしまいます。

 この気持ちは、トラックの運転手さんも、学校の子どもたちもきっと同じです。


➣対象を変えるとポジティブな言葉に変わる

 学校の委員会には、「あいさつ週間」や「廊下歩行週間」などの、様々なキャンペーン活動があります。

 そのキャンペーンの対象をどう見るかで、内容が微妙に変わってきたりします。

 先の廊下歩行なら、対象を「廊下を走っている人」に向けてキャンペーンを行えば、「廊下は走らずに歩いて移動しよう」という内容になります。委員会の子は、走っている子に一生懸命「走らないでください!」と呼びかけるでしょう。

 しかし、対象を「いつも歩いて移動している人」に向ければ、「いつも歩いて移動してくれてありがとう」という内容に変わります。委員会の子の言葉も「歩いてくれてありがとう!」という内容に変わるでしょう。

 どちらのキャンペーンでも「廊下を歩いて移動してもらいたい」というねらいは変わりませんが、目を向ける対象が変わるだけで、学校の中で飛び交う言葉がずいぶん変わってくるなと感じます。

 このように、「普通」をきちんとこなしている子に目を向けるとポジティブな言葉が増えていきます。

 それに、「普通」をきちんとこなしている子は、割とおとなしくて控えめな子だったりします。そういう子が認められ、自信をつけていくきっかけにもつながるのではないかと感じています。


➣ネガティブ本能を抑え込む

 「FACT FULNESS(ファクトフルネス)」(著 ハンス・ロスリング)には、「ネガティブ本能」について記されています。

ネガティブ本能=人間は物事のポジティブな面よりネガティブな面に注目しやすいという本能。


 危険なトラックに注目してしまうのも、廊下を走っている子に注目してしまうのも、おそらくこのネガティブ本能によるものです。

 ネガティブ本能は教育(子育て)をする上で、あらゆる場面で出てくるように感じています。本書でハンス・ロスリング氏が述べられているように、ネガティブ本能を上手く抑え込み、正しい側面を見る必要があるでしょう。

 これは、アドラー心理学の教えにも通じるところがあるな、と感じました。

 よろしければ参考にしてみてくださいね^^




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