見出し画像

来年度、小学校高学年で導入される教科担任制のメリット・デメリット

 来年度から小学校高学年の教科担任制が始まることは、ご存知でしょうか?

 教科担任制とは、中学校・高校の授業のように、1人の先生が特定の教科を受け持ち、複数のクラスを教える方法です。

 僕の学年(4年生)では、今年度の4月から学年の教員4人による教科担任制を実施してきました。

 今回の記事では、実際にやってみて感じた小学校での教科担任制のメリット・デメリットについて書いていきます。


〇教員へのメリット

①授業準備が圧倒的にラク
 教員にとっての最大のメリットは、授業準備が圧倒的にラクであることでしょう。教科担任制と専科教員(例えば「音楽の先生」のように、担任をもたず1教科だけを教える教員)を組み合わせることで、教える授業数が少なくなっていきます。

 例えば、4クラスで教科担任制を実施し、専科教員がいる場合。ある教員の担当教科は次のようになります。

自分のクラス…国語、算数、総合、道徳、学活
学年全体…図工
※教科担任制により、理科、社会、体育は教えなくてよい
(ただし授業時間数の関係で、少し教えなければならないものもある)
※専科教員により、音楽、書写、外国語は教えなくてよい

 従来の学級担任制なら、理科、社会、体育もガッツリ教えることになります。

 自分の担当する教科が減るということは、その分、授業準備の時間も減ります。そのため、担当教科を効果的に教えられるように授業を工夫したり改善したりできる時間が増えます。教員に専門性をもたせることで、より質の高い授業を行えるようになるでしょう。


②他クラスの様子が分かり、情報の交流が活発になる
 教科担任制をやる前は、他クラスの教員の悩みを聞いても子どもたちの様子が分かりづらく、的確なアドバイスをすることが難しいと感じていました。一方、教科担任制では、週に1度は他クラスで授業をするため、そのクラスの様子が分かりやすくなります。そのため、子どもの様子から的確な助言ができるだけでなく、最近落ち着きがない子や何か変わった様子の子などを見つけて情報交換することも可能です。大勢の大人で子どもたちの変化を早めにキャッチし、一緒に対策を考えていくことで、安定した学級経営を持続することができるようになります。


③子どもたちとの会話が増える
 教員が入れ替わり授業を行うので、子どもたちが教員に飽きることがありません。「体育でこんなことをしたんだよ!」など子どもたちから話してくれることも増え、担任と子どもたちとの会話も生まれやすくなります。少しの時間離れた分、そこで得たことを話したくなるんだと思います



▲教員へのデメリット

①時間割を組むのが大変
 時間割を組むのは、とてもとても大変でした。教科担任制で行う教科の絡みだけでなく、専科教員の勤務形態、特別教室の配当などを考慮しながら時間割を組んでいきました。複雑すぎて言葉だけでは説明しようがありませんので、どうやって組んだのかは割愛させていただきます…。

 ただ1つ言えることは、1学年だけでも大変だったのに、来年度から始まる5、6年生の教科担任制、導入するなら「2学年もの時間割を誰がどうやって組むの?」問題が必ず起こってきます。しかも、年度始まりのめちゃくちゃに忙しいときにです。

 僕は、時間割を組むことができれば、絶対授業準備がラクになるから初期投資のつもりで全力を注いで作ることができました。でも、「コンピューターがバシッと作ってくれたら…」と何度も思いました。たぶん、そんなソフトを開発したら、全国的に売れるんじゃないかと思います^^;


②授業を休むとき、他クラスへ影響が及ぶ
 自分が休むときは、その日の教科担任制を解体してもらったり、他のクラスの子が自習体制になってしまったりします。でも、誰だってやむを得ず休むことがほとんどなので、そこは遠慮せずに休みましょう!


③学習のアフターフォローがしにくい
 他クラスで授業をしたときに、授業内容が難しかった場合や欠席者がいた場合、授業後や別の日にフォローする時間を取ることがなかなか厳しいです。

 例えば、他クラスで図工を教えた時、欠席した子がいると2時間分の遅れが発生します。その場合、担任の先生にフォローしてもらったり、自分の空き時間を使ってフォローしに行ったりすることもあります。専科教員なら担任をもたないので、そういったフォローもやってあげやすいですが、自分のクラスもあってだと、難しいところもあるのが正直なところです。担任同士が連携してフォローすることが大切だと感じています。



〇子どもたちへのメリット

①専門的な授業を受けられる
 
教科担任制を受ける子どもたちは、とても楽しそうにしています。専門的かつ効果的に工夫された授業を受けることができるので、教科独自のおもしろさを感じ、学習の楽しさを感じながら授業を受けているように思います。

 それは、中学校とは違い、「受験」というプレッシャーがない小学校だから感じやすいのかもしれません。アクティブラーニングの視点から考えられた授業を実施しやすいからです。

 正直なところ、一人の担任が全部の教科をアクティブラーニングを取り入れて教えていくのは、なかなか時間と労力がかかります。ですから、アクティブラーニングと教科担任制は相性がいいように感じます。そして、子どもたちもアクティブラーニング的な授業が好きなようです。



▲子どもたちへのデメリット

①聞きたいタイミングで聞けない
 教科担任制では、授業の質が上がる一方で、授業に関する悩みを相談しにくい面があるように感じます。「ここが分からなかったんだけど…」と思っていても、授業後すぐに先生は違うクラスにいっちゃうし、自分から聞きに行きにくいし…と思ってしまう子も出てくると思います。日ごろからのコミュニケーションを大切にし、「自分の問いを解決したい!」と思って行動できる子に育ててあげることも重要かもしれません。



まとめ|教科担任制はやってよかった!

 教科担任制は、新しい試みですので、もちろんメリット・デメリットの両面があります。

 これは個人の感想ですが、教科担任制はやってよかった!と感じています。それは、もちろんデメリットもありますが、それを覆すぐらいの大きなメリットがあるからです。教科担任制を取り入れることで、通常の学級担任制にはない新鮮さを日々感じられています。それは、教員だけでなく子どもたちも同様だと思っています。教科が絞られることで、授業準備もより楽しくなります。

 来年度から、どれくらいの小学校で教科担任制が導入されるか分かりませんが、この記事が少しでも誰かの参考になれば幸いです。




いいなと思ったら応援しよう!