~論文紹介~【日常生活動作に基づく二重課題トレーニングが脳卒中患者の上肢機能、認知機能およびQOLに及ぼす効果について】無作為化比較試験

はじめまして、くろと申します。
これから、論文を読んで、バイアスリスクの評価をしたり、内容について議論していきたいと思います。
初心者ですがよろしくお願いします。
今回の論文は、

【Effects of activities of daily living-based dual-task training on upper extremity function, cognitive function, and quality of life in stroke patients】
↓日本語訳↓
【日常生活動作に基づく二重課題トレーニングが脳卒中患者の上肢機能、認知機能およびQOLに及ぼす効果について】

An HS, Kim DJ. Effects of activities of daily living-based dual-task training on upper extremity function, cognitive function, and quality of life in stroke patients. Osong Public Health Res Perspect. 2021;12(5):304-313. doi:10.24171/j.phrp.2021.0177

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34719222/

です。
まずは

概要

です。

※DeepLで翻訳
概要
【目的】
本研究の目的は、脳卒中患者における上肢の注意力および遂行機能、認知機能、QOLの改善に焦点を当てた日常生活課題トレーニングの効果について検討することであった。
【研究方法】
2020年7月から2020年10月の間に入院した脳卒中患者30名を対象とした。無作為化により実験群と対照群に分けた。実験群は20分のデュアルタスクトレーニングを行い、10分の従来の作業療法を受け、対照群は20分のシングルタスクトレーニングを行い、10分の従来の作業療法を受けた。両群とも1回30分、週5回、5週間それぞれのリハビリを実施した。
【結果】
両群とも上肢機能、認知機能、QOLに有意な改善を示し、実験群はすべての項目で高い結果を示した。また、変化の大きさには有意な群間差が認められた。
【結論】
脳卒中患者において、注意や実行機能と日常生活動作を組み合わせたデュアルタスク訓練は、積極的な参加と意欲を促し、有意義であることが明らかとなった。本研究は、今後の脳卒中患者への介入の基礎として活用されることが期待される。

脳卒中患者における上肢機能、注意・遂行機能、認知機能、QOLの改善に焦点を当てた日常生活課題トレーニングの効果について検討した論文ということですね。
まず、内容に入る前にPICOの確認、バイアスリスクの評価をしたいと思います。

【PICO】

Patients: 対象者
Intervention: 介入
Comparison: 比較対象
Outcome: 何がどのくらい変化したのか

Patients: 
脳卒中患者30人(下記の項目を満たした者)
・過去6カ月以内に発症した者
・韓国版ミニ精神状態検査(K-MMSE)20点以上で研究者の指示に従うことができる者
・ブルンストーム回復段階(BRS)3以上の者
・コミュニケーションや視覚・聴覚に問題がなく、指示に従うことができる者


Intervention: 
実験群
治療室で20分間二重課題を行い、従来の作業療法を10分間、1回あたり合計30分間、週5回、5週間実施した。
日常生活活動を実行しながら注意、実行機能タスクを実行した。
二重課題
注意や実行機能と日常生活活動を組み合わせたもので、単一課題は麻痺側の感覚刺激訓練、上肢筋力訓練、認知・知覚訓練、道具を使った細かい手の動きなどで構成されている。

【介入方法】
注意の訓練は、連続した引き算、簡単な足し算や引き算、1から20までの数字を順々に数えたり、単語を逆に読んだり、前の単語の最後の文字から始まる単語を考え出す簡単な単語ゲームであった。
日常生活系の活動は、階段の昇降、お茶やコーヒーを入れる、上や下をたたむ、ボタンをかける、はずす、豆を動かすなどであった。
実行機能の活動は、仮想の状況を提示する、服を着る順番を説明する、日課を説明する、買い物リストを作る、分類の種類を話す、で構成されていた。
実行機能の活動は、日常生活動作に関連する項目で構成した。実行機能は高次の認知領域であるため、高次の思考を必要とする項目と日常生活活動を一緒に適用する二重課題を行うと、脳障害のある患者さんでは混乱が生じる可能性があります。そのため、例えば日常生活活動として "ボタンの掛け外し "を行う場合、実行機能の対応項目は "服を着る順序の説明 "となる。前述の実行機能と日常生活活動を組み合わせて、デュアルタスクトレーニングを実施した


Comparison: 
対照群
1つの課題を20分間行い、従来の作業療法を10分間、1セッションあたり合計30分間、週5回、5週間実施した。


Outcome: 
①上肢機能:Manual Function Test (MFT)
脳卒中の上肢機能検査。

②The Digit Span Test (DST)
言語性短期記憶と注意力の検査。聴覚呈示された数字を繰り返し言うことが求められる課題。正順と逆順がある。2桁~9桁まで実施する。②から引用。

③遂行機能:Executive Function Performance Test Korean version  (EFPT-K)

④注意機能:Korean version of the Trail Making Test for the Elderly B
(TMT-B)
主にワーキングメモリを必要とし、次に課題転換能⼒を必要とする。
視覚的・ワーキングメモリより、遂⾏機能の指標となることが⽰唆されて
いる。③より引用

⑤QOL:world Health Organization Quality of Life-BREF
WHOが開発した、高齢者のQOLを評価する質問紙


【バイアスリスク】

次に、バイアスリスクの評価です。

選択バイアス
①ランダム化
不明-2
②コンシールメント
不明-2
実行バイアス
①盲検化:検査者
不明-2
②盲検化:被験者
不明-2
症例減少バイアス
減少無し?0

バイアスリスクが高い研究と考えられます。
続いて内容に入ります。

【結果】

MFT
実験群では、介入後、すべてのMFT項目で統計的に有意な改善が見られた(p<0.05、p<0.01)。同様に、対照群では、介入後、すべての項目で統計的に有意な改善が見られた(p<0.05, p<0.01)。上肢機能の変化については、上肢動作の項目を除くすべての項目で2群間に有意差が認められた(p<0.05)。

DST、EFPT-K、K-TMT-e Bの介入前後での結果比較
実験群と対照群における介入前後の認知機能の変化の結果をTable 4に示す。実験群では、介入後、DST-ForwardとDST-Backwardの両方で統計的に有意な改善を示した(p<0.01)。対照群も介入後、すべての項目で有意な改善を示した(p<0.05、p<0.01)。EFPT-Kでは、実験群、対照群ともに全項目で統計的に有意な改善がみられた(p<0.01)。K-TMT-e Bでは、介入後、実験群、対照群ともに完了までの時間が統計的に有意に短縮された(p<0.01)。認知機能評価では、実験群は対照群に比べ、すべての項目でわずかに高いスコアを示し、群間の変化を比較すると有意差が見られた(p<0.01)。
K-TMT-e B
 EG 89.13±10.85→67.00±12.16
 CG 89.60±12.33→77.00±13.26

介入前後のWHOQOL-BREF結果の比較
表5は、実験群と対照群について、介入後のWHOQOL-BREF quality of lifeスケールの変化に関する結果を示したものである。実験群、対照群ともに介入後、すべての項目で統計的に有意な改善が認められ(p<0.01)、2群間でQOLの変化に有意差が見られた(p<0.01)。
EG:68.13±8.55→86.73±9.52
CG:66.93±9.27→76.87±11.74

【考察】

実験群と対照群の介入後の認知機能の変化を調べたところ、注意を評価するDST、実行機能を調べるEFPT-K、K-TMT-e Bにおいて両群で有意な改善が見られたが、群間差分析により実験群の方が対照群よりも有意に変化が大きいことが示された。

また、本研究で使用したK-TMT-e Bテストの結果では、実験群では対照群に比べ、完了までにかかる時間が統計的に有意に短縮されたことが示された。

本研究では、注意や実行機能に着目した認知課題に加えて、日常生活活動訓練を一貫して実施し、運動機能の向上が認知処理速度に好影響を及ぼしたと考えられる。このように日常生活活動と認知活動を組み合わせることで、実験群の認知機能改善効果がより高まった可能性がある。

実験群と対照群のQOLの変化を調べたところ、二重課題を行った実験群、単一課題を行い従来の作業療法を受けた対照群ともに、QOLの有意な向上が見られた。

介入後の改善の大きさは、実験群の方が対照群よりも有意に高かった。このことは,二重タスクが単一タスクよりも脳卒中患者のQOLに大きな影響を与えることを示唆していると思われ,先行研究の結果と一致している.

注意と実行機能に焦点を当てた日常生活活動を含む二重課題トレーニングが、脳卒中患者の上肢機能、認知機能、QOLにプラスの効果をもたらすことを示すことができたが、本研究にはいくつかの限界がある。
・第一に、被験者の数が少ないため、結果を一般化することが困難である。
・第二に、二重課題を個人の能力に応じて提示することができなかった。

この研究の結果は、脳卒中後の患者に、日常生活動作と共に注意課題や遂行機能課題を行う、デュアルタスクトレーニングをすることで上肢機能や注意機能、QOLが、シングルタスクトレーニングを行ったときと比べて、有意に改善すると考えられます。

もっと数多くの研究、論文を読んでシステマティックレビューを行っていきます。

それではお疲れ様でした。

【参考・引用文献】

①An HS, Kim DJ. Effects of activities of daily living-based dual-task training on upper extremity function, cognitive function, and quality of life in stroke patients. Osong Public Health Res Perspect. 2021;12(5):304-313. doi:10.24171/j.phrp.2021.0177

②神経心理学への誘い 高次脳機能障害の評価. 978-4-86706-013-1. 田川皓一、池田 学 編. B5判・上製・368ページ. 発行年:2020年09月04日.

③Sánchez-Cubillo I, Periáñez JA, Adrover-Roig D, Rodríguez-Sánchez JM, Ríos-Lago M, Tirapu J, Barceló F.Construct validity of the Trail Making Test: role of task-switching, working memory, inhibition/interference control, and visuomotor abilities. J Int Neuropsychol Soc. 2009 May;15(3):438-50. doi: 10.1017/S1355617709090626. PMID:19402930.


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