初めまして、くろと申します臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、大脳白質病変について説明していきます。
大脳白質病変とは?
大脳白質病変は、加齢や生活習慣に関連する脳小血管病の変化で、脳血流や自己調節脳の低下による慢性脳虚血や血液脳関門の障害などによって生じます。
通常は無症候性で、高齢者に多く、脳室周囲、皮質下深部白質に位存在します。
大きさは、小さな点状から大きな密集病変まで、年齢とともに増加する傾向があります。
見つかったころは、加齢による正常所見と考えられていましたが、最近の研究で脳卒中の発症、再発、予後、認知機能低下、うつ病、障害、死亡率、エピソード記憶の低下の危険因子とされています。
この病変は、認知症と脳卒中のリスクが3 倍、死亡リスクが2 倍であることがメタアナリシスの結果によって確認されています。
そもそも白質とは何かという点についてです。
白質は灰白質と灰白質等を繋ぐ連絡路でもあります。
脳波ネットワークで複数の部位が同時に働きますが、これを行えるのも白質が関係しています。
ラクナ梗塞や血管周囲腔の拡大との鑑別方法として以下のものがあります。
PVHは脳室の周囲に出現し、DSWMHは深部白質に出現します。
両者はグレードがⅣになると混合します。
GradeⅡ以上でADLに影響があるともされています。
PVHとDSWMHは、軽度ではともに髄鞘の希薄化が生じます。
さらに軽度の場合、PVHは細胞間隙の拡大、DSWMHは血管周囲腔の拡大が生じます。
重度になると混在し、不全脱髄、軸索変形、微小梗塞、血管周囲腔拡大、慢性脳虚血を反映しています。
脳血流の低下は高血圧性の微小血管障害による灌流障害、動脈硬化が主な原因です。年齢とWML のスコアが上昇するに従い脳血流速度が低下しています。
剖検脳の検討では、損傷を表す血管内皮細胞やミクログリアの活性化、Aβ の沈着、細動脈硬化、ミエリン減少 脱髄 、血管周囲腔の拡大が生じます。
高血圧性の微小血管障害などにより、脳血流調節能の消失、血液脳関門の崩壊、血漿の慢性的血管漏出が、更なる白質障害を起こす。
脳室周囲WMLではミエリンの減少、血管周囲腔の拡大、脳室上衣の断裂、グリオーシス、髄質静脈の拡張や細動脈病変が高率に見られます。PVH は虚血の関与が極めて軽度である。
WML内の神経障害としては神経軸索の脱髄により神経伝達速度低下や神経興奮の断絶が起こります。進行すると軸索障害にてワーラー変性や神経変性による皮質の神経細胞の死滅が起きます。ラクナ梗塞例ではBBB 透過性亢進がWML 内で見られ、WML 陽性例ではMRI 上正常と思われる部位にも同亢進がみられています。
危険因子としては、
加齢、高血圧、糖尿病、喫煙、低教育歴、腎機能、炎症反応、心筋梗塞、尿酸値の軽度上昇などがあります。
WML進行の危険因子としては、
高血圧、糖尿病、脳卒中の既往、ラクナ梗塞、2 型糖尿病患者の内臓脂肪、ホモシスチン血症、インスリン抵抗性がWML の危険因子となっています。
WMLの最大の危険因子
最大の危険因子は高血圧であり十分な降圧療法を行うべきですが、
・降圧剤がWML の進行を抑制する
・降圧療法を行ってもWML の十分な抑制は不可能との指摘もある
このように完全なコンセンサスが得られていないとも言えます。
脳卒中一次予防として、
大脳白質病変は発症の危険因子です。
脳卒中二次予防として、
大脳白質病変が広範にみられる場合は再発しやすいです。
進行していると脳卒中の予後を悪化させます。
大脳白質病変はラクナ梗塞、脳出血と合併しやすく、脳血管性認知症にも関与しています。
さらに認知症の危険因子になっており、アパシーやエピソード記憶、遂行機能にも影響しています。
大脳白質病変のDSWMH、PVHは障害される内容が異なっています。
・DSWMH:神経精神機能の低下
・PVH:歩行速度の低下
認知機能やADL、IADLとの関連では、以下の表があります。
大脳白質病変は転倒リスクやうつ傾向、BPSDなどが増加させます。
脳梗塞患者についてPVH が歩行自立の阻害因子になります。
SCPやTCTで大脳白質病変を合併した群では、広範な脳損傷と部分的な脳損傷に合併した場合、同程度に障害されています。
40歳で5.7% 、50 歳で21.121.1%、60 歳で45% 、70 歳以上で74% 出現するとの報告があり、高血圧以外の危険因子として、加齢、脂質異常、糖尿病、喫煙、メタボリックシンドロームが挙げられます。
PVH とうつ病に有意な関連性が示唆されています。
また、PVH が機能低下の加速と関連し、脳自体の神経血管炎症がWMH の病因に関与しています。
・白質の高信号負荷がNPS精神神経症状に関与しています。
大脳白質病変は睡眠とも関連し、7.7時間の睡眠が一番低く、これより少ないor多い睡眠時間と、日中の過度の眠気・いびきはWMHの影響を増加させます。
WMHは過活動膀胱、切迫性尿失禁と関連しています。
双極性障害では2.8倍、4.5倍のPVHがあり、自殺行動に繋がる可能性を高めています。
また、元アメリカンフットボール選手は、アメリカンフットボールを行っていない対象者と比べてWMHが高いことが示されており、頭部への衝撃なども影響する可能性が考えられます。
大脳白質病変と転倒の関係では、WMHが大きい方が転倒しやすいとされています。また、片脚立位の時間やTUGなどの評価と相関しています。
身体活動量とWMH、転倒リスクの研究では、身体活動量が高い対象者ほど、転倒リスクが下がりました。
認知予備力が低いWMHがある被験者では、WMH量が認知機能gと負の相関がみられていましたが、認知予備力が高い患者では関連性はみられなかったとされています。
パーキンソン病との関連では、行動障害の重症度や、すくみ足、転倒、認知機能の低下と関連しています。
歩行訓練の研究では、課題指向的なアプローチの方が、従来の介入やステップなどの介入より改善がみられています。
さらに週2回のレジスタンストレーニングはWMLの進行を遅らせ、歩行速度の維持とも相関しています。
おわりに
いかがだったでしょうか。
WMHについて調べてみました。
また機会があれば他のリハに関することも調べていきたいです。