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ー作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)(Aid for Decision-making in Occupation Choice)-

ー作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)(Aid for Decision-making in Occupation Choice)-


【概要】
・友利らによって目標設定のためのiPadアプリとして開発された。
・ICFの「活動・参加」の項目をベースに作成されたイラスト95項目のなかからクライエントにとって意味のある作業を、クライエントとセラピストがそれぞれ選択・共有しながら目標設定を行う。
・自分にとって意味のある作業の想起・表明が難しいクライエントが、主体的に目標設定における意思決定へ参加することを促進する効果が期待できる。


【使用方法】
・ADOCの95項目はICFの「活動と参加」であり、項目を選ぶことで自動的に「活動と参加の」目標設定を行うことができる。
・その中にない場合は、その他を追加することもできる。


【ADOCの特長】
・ iPadの画面を見ながら面接を進めていくので、手順が明確。
・ イラストは、ICF(国際生活機能分類)の活動と参加の項目を参考に、我が国の文化に合わせた日常生活上の活動を網羅している。
・ イラストを選ぶだけで活動と参加レベルの目標設定が可能となる。
・ 活動場面のイラストを用いているので、言語のみのコミュニケーションに比べて活動のイメージが容易。
・ クライエントの意見を引き出しつつ,リハビリテーション従事者との目標を共有することができる。
・クライエントの意見は最大限に尊重しつつ専門家としてエビデンスに基づき必要と思われる作業はセラピストからも提案し、両者で最適な目標を決める。
⇒認知機能の低下により意思決定が不安定な場合にはセラピストが必要と思われる作業を提案できる。
⇒認知機能が保たれている場合には鰓ピストの意見を抑えてクライエントの意見を尊重することも可能。
☆クライエントの状態に合わせて柔軟に適用することができる。
・先行研究では、100例のADOC目標設定において、「その他」を選択した割合は1%であり、クライエントのニーズをおおむねカバーしていると考えられる。
・116人の対象者が選択した作業は余暇活動が59%、対人交流が10%、IADLが9%であった。


【目標を5W1Hで具体化する】
・トイレ動作自立⇒「家族に迷惑をかけないように・自宅で・6か月後までに・一人でトイレができるようになる。」(中でも「なぜ」が大事)
・Whyは活動を行う意味、目的、価値を指す。人によって活動を行う意味や目的が異なるため、クライエントの個別性を尊重するうえで、それらを知ることが重要である。
・特に認知症者においては行動の背景にある文脈を理解し、それをWhyとして目標に明記しておくと、何のためにこの目標を設定するのかチームの理解が促進される。
・ADOCで作業選択を行う際にも機械的に目標を選択するだけでなく、選択された目標の背景にあるクライエントの思いをくみとることが重要である。


【認知症者との目標設定】
・「大切な作業を一つ選ぶ」という使い方の場合、使用のカットオフはMMSE7/8点であった。(目安)
・友利ら)担当外セラピストがADOCを使って作業を1つ聞き出したが担当のセラピストがその作業を知らなかった割合は58%であった。
・Allyら)ADや中等度認知症者を対象とした記憶再生課題において文字刺激に比して画像刺激の正答率が高かったことを報告している。
⇒上記のことからADOCは作業に関するより多くの情報を認知症者から引き出すことができると示唆される。
・Du toitら)認知症者に対しても、意味のある活動へ焦点を当てることが重要視されるようになってきた。
・認知症者へのリハビリテーションにおいては本人の興味関心が高い、なじみのある活動を導入することが望ましい。
・Nagayamaら)入所者54人に対しランダム化比較試験によってADOCを用いた群と通常の目標設定を行った群26人を比較したところ、ADOCを用いた群がBIで機縁するグループが有意に多かったと述べている。
⇒この背景には本人にとって重要な活動を施設生活に組み込むことで、日中の活動度が向上したためと考えられている。


【文献からの参考】
・3)慢性疼痛患者に対しADOC を用いたアプローチを行い、症例が掲げた目標設定・治療計画に向けた支援・介入を行えたことが、PCS の無力感の改善、自己効力感・活動性の向上へと繋がったと考える。
・4)paper 版 ADOC は,アパシーを有するアルツハイマー型認知症患者のリハビリテーションの手助けとなり,やる気スコアや ADL の向上に関与する可能性が示唆された。


【参考文献】
1)Evidence Basedで考える認知症リハビリテーションー田平隆行、田中寛之
2)「ADOC リハビリ従事者のためのコミュニケーションパッド」ご利用マニュアル Version 1.2
3)破局的思考が減少し介助量軽減に繋がった症例~ ADOC を用いた慢性疼痛者への介入~ 藤本ら
4)アパシーを有するアルツハイマー型認知症患者に対する paper 版作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)の活用-和田ら

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