初めまして、くろと申します
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、半側空間無視について述べていきたいと思います。
目次
半側空間無視とは
半側空間無視は、右半球損傷の10~80%、左半球損傷の15~65%に認められる高次脳機能障害で、療法士は頻繁に出会うと思います。
半側の空間に気づかない、注意が向けられない、無視側と反対側に引き付けられるといったような症状が生じます。
急性期では特に見かけると思われます。
完全に半側を向いている患者様から、正中を向いていても気づかない患者様まで症状は幅広いと感じます。
視覚だけではなく、様々な感覚にわたって存在するとされています。
このため、自分の半身に気づかない半側身体失認を生じることもあります。
半側空間無視と半盲は別の症状で、半側空間無視は注意が関連し、半盲は視野そのものが欠損している状態になります。
BITの日本版が出版された1999年頃には約4割に認められるとされていました。
今では軽症例や、ADL・動作評価でないと顕在化しないようなものも含めて多く認められています。
病巣としては、下頭頂小葉、中・下前頭回、上側頭回、島皮質、海馬傍回、視床、内包後脚、脳梁、帯状回、被殻、尾状核など広範囲で認められています。最近では上縦束や下縦束、下前頭後頭束や弓状束といった白質路の関与が認められています。
半側空間無視は3つの空間で生じるとされています。
①自己身体空間:自分の身体
②身体近位空間:手の届く範囲
③遠位空間:手の届かない範囲
さらに最近ではVR等も含めた評価を行うことで、以前より無視を発見しやすくなっていると考えられます。
そして、3つの半側空間無視はまた、大きく分けて2種類、そのうち1種類から2つに分かれています。
①自己中心性無視:自分の身体を基準として半分に分け、片側を無視する
②対象中心性無視:物体などの半分が無視される
⑴向きに関連せず半側を無視する
⑵向きに関連して半側を無視する
さらに、自己中心・対象中心性の両方が合わさることもあります。
その場合は、自分の身体を基準とした半分と、自己中心性無視と反対側の物体の半分を無視することになります。
自己中心性無視では、頭頂葉の関与が指摘されています。
さらに、最近では、前頭―頭頂ネットワークが関連しているとされ、前頭葉の上部の関与もあるとされています。
対象中心性無視では、主に側頭葉が関与しているとされています。
さらに前頭葉の下側の方の関与が指摘されています。
左右で分けると、下記に分かれます。
左損傷:対象中心性
右損傷:自己中心性
ここからは、病巣からの視点で見ていきます。
側頭葉、大脳基底核、視床の病変では、対象中心性無視がみられるとされています。特に上側頭回が重要とされています。
次に頭頂葉病変です。
電気刺激の研究から、下頭頂小葉の抑制により可逆的な半側空間無視が出現したとされています。
さらに、自身を基準とした半側を無視する自己中心性無視がみられやすいです。
2019年の研究では、非無視側を見ていても、そこから無視側に向かう機能が損なわれるとされています。
次に前頭葉病変についてです。
前頭葉背外側部や上前頭回でも半側空間無視が認められています。
上頭頂小葉と上前頭回は周辺視野への注意に活性化しやすく、損傷により周りへの注意が減り、探索しなくなるような無視を示します。
そのため、線分二等分試験などでは、顕在化しにくい無視でも、末梢試験の様な探索活動に依存する評価では無視側まで探索できないような場面がみられます。
また、前頭葉はワーキングメモリや全般性注意などに関連しており、ワーキングメモリの低下、全般性注意障害、運動維持困難を合併しやすいとされています。
次は前帯状回にうつります。
前帯状回は、意欲・情動・記憶に関連しており、この部位の損傷で半側への意欲や報酬などが低下しやすいとされています。
脳梁損傷との合併により生じやすいとされています。
視床・被殻病変にうつります。
視床損傷:対側の半側空間無視、空間性注意機能低下
被殻損傷:対側の半側空間無視、転換性注意機能の低下
次に、半側空間無視のメカニズムについてです。
色々な説がありますが、その中でも空間性注意ネットワーク障害説についてです。
ネットワークとして関連しており、頭頂葉の後部、前頭眼野、帯状回、網様体などが関与し、眼球運動や視覚処理、その支えとなる神経基盤が障害された際に生じやすいです。
方向性注意障害説にうつります。
左半球は右半球に、右半球は両側に注意を向けていると考えられています。
このことから、右半球損傷により左側への注意が低下します。
これによって半側空間無視が出現するとされる説です。
実際に右半球損傷の方が無視が残存しやすかったり、生じやすかったりします。
半球間抑制とは、左右半分の脳が、対側の脳を抑制しているという機能で、両半球が抑制しあいながら活動しているため、どちらかの脳損傷によりバランスが崩れて生じるとされる説です。
表象障害説は、イメージにも半側空間無視が出現するとした説です。
この研究では、建物の構造を思い出させ、その後に反対側からみた建物を思い出させることで、頭の中でも無視が存在するとされています。
空間性の要因を除くと、持続性注意や意欲、ワーキングメモリの関与が指摘されています。
おわりに
いかがだったでしょうか。
ご清聴ありがとうございました。
半側空間無視についての概論的な所を投稿しました。
次は評価について述べていくので、次回もまた、よろしくお願いいたします。