初めまして、くろと申します
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、鉤状束について述べていきたいと思います。
恒例ですが、白質線維とは何かについて話していきます。
まずは鉤状束についてです。
鉤状束は、側頭葉と前頭葉とを結び、Yakovlev回路の一部となっています。
鉤状束はエピソード記憶、言語、社会的感情処理、発達障害、精神障害に関与しています。
また、頭部外傷で衝撃を受けやすく損傷もしやすいです。
30歳に発達のピークになり、それまで達しないことから精神疾患を若年期に引き起こす要因になっています。
鉤状束が関与する領域まとめです。
続いて、側頭極についてです。
側頭極は腹側経路で、統合や記憶との連結、意味記憶の形成に関わっています。また、社会性や心の理論にも関与しています。
背側側頭極:聴覚と情動の関連付け
腹側側頭極:視覚と情動の関連付け
左側頭極:意味記憶
右側頭極:記憶、情動
次は海馬傍回についてです。
海馬傍回は長期記憶に関する部位に投射し、長期記憶に関与しています。
海馬傍回は場所の写真でも賦活されます。
また、海馬傍回を含む病巣は、前向性健忘に加え、逆向性健忘が出現し、
再認も低下します。
さらに空間の記憶にも関与するとされています。
次は扁桃体についてです。
扁桃体は情動に関与しています。
また情動の記憶やz率神経機能にも関与しています。
扁桃体の基底外側核は強い情動刺激と関連した記憶と関連します。
中心核への投射から情動刺激に対する身体的反応の表出へ導きます。(すくみ、呼吸・脈拍、失禁、ストレスホルモン放出など)
扁桃体の中心核は、内臓感覚の入力を受けて痛みなどに対する情動の反応を生成します。さらに自律神経などに働きかけ、反応の表出にも関与します。
皮質内側核は主に嗅覚とそこからの行動に関与しています。
扁桃体はヤコブレフ回路の一員としても働いています。
入力された感覚などから情動を作り出していきます。
次は島皮質についてです。
島皮質については、多種多様な機能を司っています。
これからこれらを紐解いていきたいと思います。
疼痛・振動・触覚刺激や奇異性熱(ドライアイスを触った時など)に関与し、
さらに大脳前庭中枢や内臓運動・感覚、嚥下や嫌悪感情、味覚や嗅覚にも関与しています。
前部と後部に分けると、
前部は会話、嗅覚、味覚、口腔感覚に関与し、
後部は聴覚情報、自律神経、内臓感覚・運動などに関与しています。
左右に分けると、
左が言語機能、副交感神経、発音形成に関与し、
右が非言語機能、内臓感覚、情動刺激、交感神経、歌唱に関わります。
島皮質の入出力については下記の様になっています。
島皮質の研究について集めてみると、
・痛み経験の情動的特徴処理(痛みに対する嫌悪感などの情動)
・身体無視
・転換性注意
・顕著性ネットワーク、DANとDMNの切り替え
・嗅覚刺激
・感情刺激
・痛覚
・不安(扁桃体と共に)
・情動性ミラーニューロン
に関与しています。
島皮質の前部に関する研究では、
・頭頂葉病変で心臓制御信号の欠如による島皮質入力低下による心臓発作
・慢性疼痛や頭痛
・不安症状、PTSD
・前庭感覚
・内面的苦悩
・痛みを意識
・(左)活力を消費するような痛み、陰性感情
・(右)活力を蓄えるような陽性感情
・一次味覚野
・エラーの認識や社会的判断
・ギャンブル
に関与しています。
次は前頭眼窩野についてです。
前頭眼窩野は、報酬や音楽の理解、精神疾患や情動、脱抑制、選択性注意等に関連しているようです。
内側は報酬で活性化し、外側は勝てないことで活性化されます。
また、音楽の構造的理解に関わります。
強迫性障害との関連も指摘され、精神疾患とも関連しています。
破壊されることで情動や気分が変化することが示唆されています。
精神疾患としてうつ病不安症、強迫性障害、精神病質、社会病質障害、物質使用障害など幅広く関与しています。
また、骨突起部が近く、脳外傷により損傷しやすい部位となっています。
情動の上位中枢、感覚入力と情動を統合、行動判断などにも関与しています。
また、行動のために雑音を抑制することや、覚醒・不安の調節、脱抑制にも関与しています。
次は、前頭極についてです。
前頭極は、感情的行動の制御、収集行動、ワーキングメモリやメンタライジング、展望記憶に関与しています。
扁桃体との繋がりの強さが感情的行動の制御と負の相関があり、扁桃体と強く繋がるほど感情的に行動してしまうようです。
また病的収集行動にも関与しており、病巣は前頭極と眼窩部といわれています。外側はワーキングメモリに関与し、内側じゃメンタライジングに関与します。また、前方はマルチタスクや注意の配分、作業遂行の計画と実行などの遂行機能、展望記憶に関与しています。
学習課題の完了後は可塑的変化を示し、サブゴール戦略により促進されます。
次は帯状回についてです。
帯状回は本態性把握反応、道具の強迫性使用、強制探索の病巣になっています。また運動、動作の開始・維持に関与し、記憶でいうとパペッツ回路の一部となっています。ギャンブル課題やアパシー、病態失認と広く関与しています。
前部帯状回は注意機能にも関与し、覚醒やStroopテストにも関連しています。
後部帯状回はアルツハイマー病において、血流低下がみられています。
また、アパシーや道順障害、手指パターンの模倣にも関与しています。
前庭系の情報処理や内臓感覚運動にも関与しているようです。
うつ病や矛盾にも関与しているようです。
また、前帯状回はセロトニンの分布密度が最も高く、うつ病の治療にTMSなどがあるように、この部位がセロトニン不足による症状と関連しそうです。
後部帯状回はDMNに関与し、静止時や瞑想時にも働いています。
感覚運動ネットワークや背側注意ネットワークにも関与しています。
また、前部は顕著性ネットワークにも関与しています。
次に、鉤状束についてです。
鉤状束の関与する機能としては、
意味・エピソード記憶、言語記憶、即時/短期記憶、命名、言語流暢性、
感情調節、第二言語の獲得、感情共感などがあります。
関与する障害については、精神疾患、失語症、パーキンソン病、認知症、ASD、てんかん、ALSなどがあります。
UFはFA値が命名や自発話、聴覚理解にも関与しています。
パーキンソン病との関連では、抑うつ症状や、ギャンブルなどにおける衝動制御障害に関連し、ICBがある場合の方が鉤状束が多くあるようです。
これは報酬系と視覚的感情認識に関連する線維の変化が、PD-ICB よりも PD-nICB でより顕著である可能性が考えられます。
PTSDとも関連し、MD値が高くなり、FA値が低下するようです。
鉤状束や脳梁のFA値は抑制機能と相関し、社会的感情処理とも関連しています。
UFのFA値とMMSEに正の相関がみられ、aMCIで低く、エピソード記憶と強く相関しました。
子供に対する長期ストレスや早期の社会的隔離はその後の発達にも影響を与える可能性があります。
健常児には明瞭な鉤状束がみられるが、社会的隔離幼児においては不完全となっています。
ASD患者はUFの非対称性がみられ右UFが有意に少なかった。
HFA患者では左UFの体積の増加がみられた。
ASDではUFの過成長がみられ、社会性、コミュニケーション障害と相関しています。
UFは反社会的特性とも関連し、素行障害では接続性と成熟度に大きな違いがみられます。行為障害においてはUFの異常な成熟が存在しています。
精神病質者ではFA値が低下し、反社会性パーソナリティ障害においてはFA値が大幅に減少していました。
鉤状束の異常はてんかんとも関連しています。
UFの発作は感情的な興奮や幻覚、不随意運動にも関与しています。
また、MDと言語記憶は負の関連がみられます。
行動障害型の前頭側頭型認知症では、FA値の低下がみられます。
左UFは予測因子としても有用です。
うつ病患者ではUFのFA低下と最も強く結びつきます。
更に不安を併発する患者の割合が高いほど左UFのFAが高く、不均一性もみられています。
双極性障害とUFのFA低下が関連受けたれ、発症に関与していると推測されています。
社交不安障害の患者は健常者と比較して左UFとSLFのFAが低下していました。別の研究では右UFの低下も示唆されています。
社交不安障害は社会的状況で強い感情的反応を示します。これは扁桃体の過活動と前頭前野の認知制御低下による可能性があります。UFは扁桃体と前頭前野を結び、認知制御に必要となるため、FA値の低下により不安感などが増加すると考えられます。
扁桃体との関連では、左UF量が左扁桃体量と負の相関関係にあるようです。
扁桃体―OFC/DMPFC結合が大きいほど負の感情が減少して感情調節が可能となるとの報告もあります。
思春期の青年の研究結果においてUFは感情調節重要である可能性があります。
大麻使用者はUFが短くなり認知機能の低下がみられます。
特に最初の使用年齢は重要となっています。
鉤状束とALSの関連では、UFのAD値が両側で低下していました。
強迫性障害患者は左UFが健常者よりも優位に高いFA値を示しています。
このFA値の増加は不安尺度スコアと正の相関があります。
COVID-19との関連では白質の線維密度が減少することが判明しています。
バイリンガルの研究において、右UFのADと流暢さに逆相関がみられました。バイモーダルバイリンガルの腹側路の特性が第二言語の獲得と流暢さに関与しています。
PPAやSDではILFとUFを中心とする結合性低下が示されています。
また、UFの拡散率の変化は単語の理解、命名力と相関していました。
言語の腹側経路としては鉤状束、下前頭後頭束から構成され、AFとUFは生後3か月までに言語領域と連結されます。
みなさん、ご清聴ありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう!