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~論文紹介~【脳卒中患者の認知機能障害に対する作業療法】
【はじめに】
はじめまして、くろと申します。
これから、論文を読んで、バイアスリスクの評価をしたり、内容について議論していきたいと思います。
初心者ですがよろしくお願いします。
今回の論文は、こちらです。
【Occupational therapy for cognitive impairment in stroke patients】
↓日本語訳↓
【脳卒中患者の認知機能障害に対する作業療法】
Gibson E, Koh CL, Eames S, Bennett S, Scott AM, Hoffmann TC. Occupational therapy for cognitive impairment in stroke patients. Cochrane Database Syst Rev. 2022 Mar 29;3(3):CD006430. doi: 10.1002/14651858.CD006430.pub3. PMID: 35349186; PMCID: PMC8962963.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35349186/
今回の文献は、認知機能障害に対する作業療法についてです。
【背景】
認知機能障害は、脳卒中の後遺症として頻繁に発生し、日常生活を送る能力に影響を与える可能性があります。作業療法士は、脳卒中後の認知機能障害を持つ人々に様々な介入を行っています。これは、2010年に発表されたコクランレビューの更新版である。
2010年に発表されたものの更新版のようですね。
次に、PICOの確認です。
【PICO】
P:患者、対象者
80歳以上 80歳以上
成人(19-44歳
脳卒中
中高年 45-64歳
若年成人 19-24歳
認知機能障害
65-79歳
I:介入
作業療法
C:比較対象
通常ケア
待機者数 コントロール
アクティブコントロール
O:アウトカム
機能的所見
認知機能
基本的な日常生活動作
オリエンテーションに関連する所見
地域社会への統合
日常生活動作アセスメント
注意力
【検索方法】
Cochrane Stroke Group Trials Register,CENTRAL,MEDLINE,Embase,その他4つのデータベース(いずれも最終検索は2020年9月),試験登録,参考文献リストを検索した。
2名のレビュー著者が行っているようです。
【主な結果】
11カ国24試験、1142名(脳卒中発症から2週間~8年)の被験者を対象とした。
今回の更新では、前版に含まれる1試験に加え、新たに23試験が追加された。クロスオーバー試験1件と2×2要因デザイン1件を除き、ほとんどが並行無作為化比較試験であった。ほとんどの試験のサンプルサイズは50人以下であった。
20の研究は、特にコンピュータベースの介入を用いた認知リハビリテーションへの再教育のアプローチに関係していた。他の4件は代償的、適応的なアプローチであった。
介入の期間は10日~18週間で、平均総時間は19時間であった。
対照群は、ほとんどが通常のリハビリテーションまたは作業療法によるケアを受け、少数が通常のケアと同等の注意コントロールを受けた;2例が介入なし(すなわち、待機リスト)であった。1件を除くすべての研究でパフォーマンスバイアスのリスクが高いことを除けば、その他の点でのバイアスのリスクはほとんど低いか不明であった。
【BADL】
メタアナリシスにより、FIMの平均差(MD)が2.26で、介入の完了に対する小さな効果が認められた。
フォローアップでは、3ヵ月目における効果の証拠は不十分であったが、
6ヵ月目における効果の証拠があった。
これらの差は、脳卒中患者に対するFIMの確立された最小臨床的重要差(MCID)である22点以下である。
【IADL】
効果は非常に不確実である。
地域統合については、効果を示す証拠は不十分であった。
介入後のグローバルな認知機能パフォーマンスには臨床的に重要な改善がみられ、これは(MoCA)で1.63ポイントに相当し、アンカーベースのMoCAにおける脳卒中リハビリ患者の1.22という値を超えている。
これは、脳卒中リハビリテーション患者に対するMoCAのアンカーベースのMCID 1.22を超えている。
注意に何らかの効果を見出し、17.31秒に相当することを明らかにした。
実行機能パフォーマンスについては、FABの1.41ポイントに相当するものであった。
認知サブ領域のうち、臨床的に重要であると考えられる効果は、介入直後に、対照と比較して、持続的視覚的注意(中確実)15.63秒、ワーキングメモリ(低確実)59.9秒、柔軟な思考(低確実)であった。
主な結果としては、
脳卒中後の対象者に作業療法を行う事で以下の結果がありました。
・FIMが6か月でMCID以下の値で改善した
・IADLはエビデンスが不十分であった
・認知機能(MoCA)が1.63点改善した(MCIDは1.22)
・注意機能が17.31秒改善した
・FABが1.41点改善した
・持続性視覚性注意機能が15.63秒改善した
・ワーキングメモリが59.9秒改善した
・思考の柔軟性が改善した
【著者らの結論】
脳卒中後の認知機能障害に対する作業療法の有効性は、まだ不明である。
作業療法は、介入直後と3ヵ月、6ヵ月後のBADLにほとんど臨床的な差をもたらさない可能性がある。
介入直後
・認知機能を臨床的に重要な差のある値まで改善
・持続的な視覚的注意をわずかに改善
介入後
・ワーキングメモリと柔軟な思考をわずかに増加させるかもしれない
他の認知領域、IADL、および地域社会への統合と参加に対する効果については、確実性が低いか非常に低いか、または不十分なエビデンスが存在する。
我々のレビューにある多くのエビデンスの確実性が低いことから,脳卒中後の認知障害に対する作業療法の有効性を支持または否定するためには,より多くの研究が必要である.
結論としては、依然として効果が不明な点が多いと考えられます。
介入直後に注意機能や認知機能を改善させ、介入後にワーキングメモリと思考の柔軟性をわずかに改善させることが示唆されました。
ADLはMCID未満でFIMが改善していますがエビデンスが不十分と思われます。
IADLや地域社会での活動・参加についてもエビデンスが不十分です。
今後の研究が期待されます。
【参考・引用文献】
①Gibson E, Koh CL, Eames S, Bennett S, Scott AM, Hoffmann TC. Occupational therapy for cognitive impairment in stroke patients. Cochrane Database Syst Rev. 2022 Mar 29;3(3):CD006430. doi: 10.1002/14651858.CD006430.pub3. PMID: 35349186; PMCID: PMC8962963.