初めまして、くろと申します
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、ついに上縦束Ⅲについて述べていきたいと思います。
恒例ですが、白質線維とは何かについて話していきます。
次に、何という白質線維があるのかを説明していきます。
ここから上縦束Ⅲに入ります。
上縦束Ⅲは、
下頭頂小葉・TPJから腹外側前頭前野、腹側中心前回、腹側運動前野、下前頭回弁蓋部を繋いでいます。
SLFⅢは腹背側経路に相当しています。
上縦束Ⅲは言語野ワーキングメモリ、視空間認知機能、身体認識に関与しているそうです。
上縦束Ⅲと連絡する領域とその機能です。
まずは中前頭回についてです
中前頭回の梗塞にてジャーゴンの失書、仮名の失書を呈する場合があるようです。
また、耳鳴りや糖尿病性の視神経障害との関連もあるようです。
中前頭回は半球の有意性やADHDにも関与しているようです。
注意機能にも関与する場所でもあるので、その影響が考えられます。
また機能性ディスペプシアでは食事前の右中前頭回の接続が有意に高く、食物摂取、内臓感覚、感情反応の異常な脳活動を示唆していて、食べる前から脳反応が違う可能性がありますね。私は胃もたれや心窩部の疼痛を起こしやすい方ですが関係しているのかもしれません。
学びや読書、高いWM負荷は注意力を促進する可能性があります。
また、病変で構音障害を引き起こす可能性があるようです。
双極性障害にも関わっており、安静時脳活動を低下させ、安静時に考えが浮かんだり浮かばなかったりストレスを感じることに関与しているのかもしれません。
ドライアイ患者の眼表面損傷は脳領域と関連しており、認知障害、精神症状、抑うつと関与しており、さらに疾患期間と相関しているようです
うつ病に対するTMS治療で活動が変化していることから、うつ病には強く関与していそうですね。
痛みと脳は密接に関連し、多くの部位が活性化するようです。
また、手掛かりのない動きの間に先立つ左中前頭回には以前の活動源があり、以前の活動を保存している、している場所からの関与があるのかもしれません。
大脳基底核や視床との連絡が示唆されています。また、ジェスチャーの理解にも関わり、三角部は構文表現、弁蓋部は意味表現に動作することが明らかとなりました。
次は下前頭回三角部の機能と障害についてです。
いわゆるブローカ野で、音韻認識や発語を行っています。
調べると文法処理や音韻解読にも携わっていたり、
四肢運動面の右手首の運動感覚と視覚の統合という難しい機能も担っています。
さらに他にも機能があり、言語翻訳や、構文の基礎にも関与しています。また、パニック障害において皮質の減少が認められています。まだまだ調べれば何か出てきそうですね。
こちらは発話に関与する部分が強いですね。
また、命名がどこまでよくなるかの予測因子になるみたいです。
次は下前頭回弁蓋部の機能と障害です。
女性のインターネット使用と体積・灰白質に相関関係があるとあります。
このことは、論文をみたところ、男女ともにインターネット使用障害は灰白質の体積と負の相関がみられるとのことです。男性はインターネットをゲームに使う場合が多く障害場所が女性とは違い、女性はインターネットを主にコミュニケーションのために使うため、下前頭回弁蓋部と関連するのではないかとの報告です。
ASDで弁蓋部と社会的スケールとの関係に負の相関があることから、社会性にも必要不可欠な部位となっていますね。
次は下頭頂小葉についてです。
角回は構成失行、計算障害、ゲルストマン症候群に関連しています。
縁上回は言語性短期記憶、内言語操作などに関わります。
次は下頭頂小葉の中でも角回についてお話していきます。
下頭頂小葉の角回についてです。
後頭葉、側頭葉、頭頂葉など異なる感覚を統合する場所としても働いています。さらに読解と理解、計算にも関与していることが報告されています。
ゲルストマン症候群にも関連する部位となっています。
角回は安静時にも働いているようですね。
デフォルトモードネットワークは、安静時に働くネットワークで、内省であったり空想など安静時のネットワークです。これに下頭頂小葉として関与しています。両側の角回は自己言及領域であったり、休息やエピソード記憶の想起、将来の展望にも関連しています。
次に注意機能と記憶機能についてです。
AGは転換性注意に関与します。
特に、ボトムアップ(不随意)的な注意に関わります。
記憶との関連では、言語作業記憶や回想、自伝的記憶にも関与しています。
角回は葛藤解決とToMにも関与しており、
葛藤課題ではgo/no-go課題でにおいて抑制することに関与しています。
ToMでは文脈上、に関する判断をサポートしていますね。
クロスモーダル統合領域とは、多感覚の統合のことです。
角回は概念の組み合わせやリーチにも関与しているようです。
角回は左右で機能的な違いがあります。右は注意や競合解決なのに対して、左角回は言語や文脈的な機能が多いです。
両側が共に機能するとなると、DMNや注意、記憶、計算、ToMなど様々なことに関わります。
下頭頂小葉は運動するために必要なようです。
さらに他者を眺めているときに重要な役割を果たしています。
まるでミラーニューロンのようですね。
角回は、計算、言語、空間課題で血流増加が観察されています。特に計算において強く賦活されるようです。
驚きですが、大きな数の計算よりも簡単な加算課題の方が大きな活性化が確認された研究もあります。
次は縁上回についてです。
縁上回は言語性短期記憶や、道具の使用、使い方などにより賦活されます。
また、左側はワーキングメモリに関与し、右は言語のプロソディー障害(抑揚や大きさ、タイミングなどの感覚的抑揚)と関与します。
境界性人格障害(BPD)では右下頭頂小葉が関与しているようで、精神面についても関与が考えられます。
ASDでも皮質の異常がみられており、ASDの表情・感情認識に関与している可能性が考えられます。
教育年数が関与しており、さらに感情認識と関連しているようです。
上記スライドの内容とも一致する部分がありますね。
道具の使い方を研究した結果では、頭頂間溝との接続性が大幅に変化したようです。ここから運動前野等の運動領野に接続されていそうですね。
また、右縁上回では特定の時間の長さに反応するニューロン群があり、時間感覚や時間の自己管理にも直接影響することとなります。
左縁上回は動作と物体の統合だけでなく、動作の認識と理解にも関与します。
さらに、聴覚、言語的な短期記憶にも関与するようです。
縁上回は行動の計画にも関与します。
ここでも運動に必要な感覚情報などが統合され、パフォーマンスの引き出しも行われるため、病変により両側の上肢失行を引き起こします。
文法力も影響するようで、高文法力と低文法力で脳活動に差がある様です。
高文法力であれば少ない活性化で済み、低文法力であれば大きな活性化が必要となると考えられます。
注意に関しては、腹側注意ネットワークの一員として活動しています。
下に難しく書いてありますが、縁上回が外的刺激に注意を高め、角回が文脈を協調しつつ、入るべき刺激を調整しています。
縁上回は記憶の符号化(記銘)にも優先的な役割を果たしています。
身体所有感は前頭―島―頭頂と関連し、身体無視にも関与しそうですね。
興味深いですが、100均などで他にいい道具ないかな?と探しているような思考中(いろんな空想や計画)時に角回と共に関与しているようです。
プレッシャーなどの脅威の条件下では前頭前野と縁上回の活性化が低下しているようです。圧迫面接等では対象者の思考力低下時の状況などもみれるんでしょうか。(受けたくない)
長期の乗り物酔いを2度経験したケースにおいて、どちらも得状回の海綿状血管腫からの少量の出血が検出されたようです。
縁上回は前庭感覚の統合にも関わると考えられるので、乗り物酔いと関連している可能性があります。
次は下頭頂小葉と半側空間無視について述べていきます。
皆さまがよくご存じの通り右半球損傷の方が頻繁に、重度な半側空間無視を呈します。
下頭頂小葉を重視する報告と、TPOJが重要であるとの報告があり、空間関係の感覚統合が上手くできないこと、その統合結果を頭頂葉、前頭葉にうまく運べないことなども関与していそうです。
次も半側空間無視(USN)について述べていきます。
自己中心性無視は下頭頂小葉、上側頭回、中・下前頭回と関連し、物体中心性無視では、下側頭部の損傷と関連しているとの報告もあります。
また、上縦束も損傷によりUSNの残存に関わる一つとなっています。
ボクセル研究において、右縁上回~中心後回までの皮質、白質がUSN出現と関連していると報告されています。
体性感覚と空間感覚の離断が原因と考えられています。
USNは、感覚領域から縁上回と皮質下の損傷が深く関与しているものと考えられます。
次は病態失認について述べていきます。
多くの領域で確認されてますね。
深部白質が最も重なりの多い領域ともあります。
持続する場合、運動前野、前帯状回、TPJ、海馬、扁桃体の損傷が伴うようです。
続いて、色名呼称障害についてです。
視知覚は良好であるが言語化しようとすると失敗するものです。
離断が考えられていて、右視野は入力されず、左視野は言語処理できないという状況がこうさせるようです。
次はPusher現象についてです。
多くの部位で認められますが回復が遅延する場合、上縦束や皮質脊髄路などと重度麻痺が共通するそうです。
次は計算についてと、ミラーニューロンシステムについてです。
より難しい計算は左下前頭回と左下頭頂小葉との連携によってなされるようですね。
ミラーニューロンシステムとしては、頭頂間溝、下頭頂小葉だけでなく、上側頭溝や中側頭回にも活動がみられています。
失行については左下頭頂小葉の角回周囲が重視されているとのことです。
縁上回でも発症はしやすいです。
音の空間情報は上側頭回後部→縁上回で担うようです。
次は中心前回についてです。
中心前回には錐体路という皮質脊髄路があります。
ここには、体部位局在(再現)があり、内側に行くと足、そこから
外側に行くと体幹、上肢、顔などになってきます。
また、手続き記憶も司っているとされています
運動錯覚中に弱い一次運動野の活動がみられています。
これが運動イメージ療法やミラー療法などと繋がるのでしょうか。
一次運動野は基本的に大脳皮質のⅣ野を持たないことで、視床からの入力はほとんどないようです。
また、前庭系にも関与しています。
体部位再現はSMAやPM、M1など互いに持っています
その運動機能は、実は感覚野にも支えられています。
一次運動野のV層の軸索は脊髄の前角まで皮質脊髄を出していいます。
この段階は最も低次な段階となっています。
また、一次運動野の損傷は予後に影響を与えるようです。
CST損傷では末梢部の機能低下が大きいようです。
また、運動に直接関与しているSMA、PM、大脳脚などの損傷で改善度合いが違うようです。
次はTPJです。側頭葉と頭頂葉の境界にあり、多感覚を統合しています。
心の理論、エピソード記憶、注意などに関与し、社会的な行動や自己と他者の区別等に関わっています。
TPJは部位によって接続が違うようですね。
聴覚ネットワークや背側注意ネットワーク、腹側注意ネットワークを構成しています。
広範なものに関与していますが、様々な疾患にも関与しており、重要な線維となっています。
なんと幽体離脱はTPJの多感覚統合が失敗していることが関与しているとのことです。TPJは離人症状にも関与しているそうです。
またToMと社会学習が密接に関連しています。
次は腹側運動前野についてです。
PMvでは、空間の情報を受け取り、感覚に基づいて運動に関わっているようです。リーチなどにも関わってきそうですね。
PMv野では、動かす物体の形状を反映するようです。腹背側経路に似ていますね。
また、ミラーニューロンシステムの構成要員としてもしられています。
次は、腹外側前頭前野についてです。
VLPFCは下前頭回に位置するようです。
左は意味処理、ワーキングメモリ、情報処理
右は顔の表情認知、扁桃体との脅威監視ネットワークの構成、不安障害に関わっています。
また、衝動性の抑制を行い、この部位の損傷で保続が出現します。
VLPFCはブローカ野としても知られているようですね。
内言語や音韻リハーサルを行いDLPFCの制御の元で言語性ワーキングメモリの中心的な役割をしています。
長期記憶から検索(想起)して比較したり、エピソード記憶への(符号化)記銘などに関係するようです。
またこちらも、ミラーニューロンとかかわりがあるようです。
セロトニンなどの関連では衝動性の抑制や興奮が多く見受けられます。
ワーキングメモリやネットワーク関連での働きが多いですね。
前頭葉は理性的な働きをする攻撃性に関与していると思われます。
またSⅡ領域と連絡があり、そこから次の行動に移すための機能もありそうですね。
右VLPFCは感情にも関わっています。
左はうつ病との関連がみられています。
ここで上縦束に戻ってきました。
接続、機能、障害としては主にこちらになりますが、
他にも複雑に他の脳に関与していることが考えられます。
この右下頭頂小葉との連携が身体イメージ、空間把握、半側空間無視にも関わると考えられます。
ボクセルベースの研究において脳梁と、SLFⅢに接続がみられており、左右半球間での連絡が強いようです。
SLFⅢは空間関係や注意機能に強く影響しているようです。
下縦束との連携したネットワークで視覚性ワーキングメモリを構成し、予後にも関与ているようです。
精神病高リスクの場合、女性の方がSLFの側性化が大きいが男性は差はなく、右に側性化するほどワーキングメモリや注意機能に関連していると考えられます。
さらにFA値はASDで減少し、ASDの発達の遅れに関わりそうですね。
極度の低出生体重児では出生後に成長障害がある場合とない場合とを比較して注意機能や遂行機能の低下がみられるようです。
とても長くなってしまいましたが、上縦束についての解説は終了です。
一言ではまとめられないくらい多くの機能に関わっていますね。
ではみなさん、ご清聴ありがとうございました。
次の白質線維の解説で会いましょう。
くろ