見返りなんてなくても、手を差し伸べたい。
私は疲れ果てていました。
連勤が続き休みも取れず、動き回る日々。
楽しく仕事が出来ていても、体が追いついていない現実が私を追い詰めていました。
そんな中、12時前後にある電話がかかって来ました。
薬が手に入らない。助けて欲しい。
その患者さんは使い続けていた薬がどの薬局でも手に入らず、途方に暮れていたのです。
それもそのはず、その薬は現在日本への輸入がほぼ停止している薬でした。
助けられる可能性はかなり低い、それに一人の患者さんへ時間を割きすぎると他の患者さんにも悪影響が及んでしまう。
いろんな考えが頭をよぎりました。
でも、気づけば私は電話を手に取り、卸業者、周辺の薬局など、在庫がある可能性がある場所へ片っ端に連絡を取っていました。
ただ、力になりたい。
きっとなんとかなると信じて、電話をかけ続けました。
でもやはり、どこにもない。
もうだめかと思ったとき、その患者さんから一報が入りました。
両親の行きつけの薬局にありました。と。
私はその知らせを聞いたとき、心が飛び跳ねるような喜びに包まれました。
電話越しにほんとによかった、と何度も口にしたような気がします。
私の体から、疲れは消え去っていました。
私は長い時間を使い、薬局に対して1円にもならない仕事をしたのかもしれません。
でもそれでよかったと思っています。
長く会社に勤めていると、どうしても利益を優先して行動しようと体が動いてしまう。
お金しか見えなくなってしまう。
でも、私たちが見なくちゃいけないのは「人」のはず。
自分の行動にお金が発生しない、そのことに違和感を感じなくて良い。
人を見よう、手を差し伸べよう。
思いがけない贈り物が、きっとあなたに届くから。