一歩下がると、もう一つの道が見える。
"思い切って一歩下がってみる。”
”そうすると、自分の手が届く範囲がよく見えるんです。”
薬剤師として働き始めの頃、どうしても悔しくて諦められないことがありました。
自分の知識や経験を活かしても、救うことができない人に出会ったときです。
医療従事者として、なんとしても患者さんの人生を少しでもよいものにしたい。
今でもその気持ちはあります。
しかし当時は、全員を救うことに強く固執していました。
自分ならなんとか出来ると、大きな自信がありました。
でも、実際には救えない人の方が多かったのです。
そして、この事実を知って落ち込んでいたとき、私はある言葉と出会いました。
「全員を救えるほど、私は偉大ではない。」
もはやどこで出会ったのかも覚えていません。
ただ、まるで一歩下がって世界を眺めているような。
そんな感覚を、この言葉から感じ取りました。
あれから、解決できない問題に直面したとき、いえ、日常的に私は一歩引いて世界を眺めるようになりました。
心には「偉大ではない」自分が常にいます。
一見、すべてを諦めているように感じるかもしれません。
しかし、そうではありません。
一歩下がることで、世界の景色がより遠くまで見渡せます。
まっすぐ歩かなくても、他にも道はある。
自分には出来なくても、誰かならできる。
それが分かるから、ちっぽけな自分一人ができる全力を発揮できる。
そんな気がするんです。