音楽ゲームは音楽?ゲーム?-好みと上達の関係-
はじめに
音楽ゲームをたしなんで早十数年―。
仲間内と音楽ゲームの話をすると、よく話題にあがる2つのテーマがある。「楽曲の好み」と「譜面」の話だ。基本的に音楽ゲームは、楽曲に合わせて手や足、身体を使い、一定の譜面をさばく。そして、一定以上の達成率を目指すゲームである。
つまり、課題となる「楽曲」が存在し、ゲームとして成立するために「譜面」が存在する。そのため、2つの要素から音楽ゲームが成り立つのであれば、話題にあがるのは当然である。
この記事ではその2つの要素について、改めて考思した内容をまとめたものである。
文字読むの面倒な人用の3行まとめ
・リスクとリターンに当てはめると、上達しようとする動機は自然
・下記の図を見て、4つのカテゴリーに楽曲を当てはめてみると理解できる
・譜面はプレイしたときに得られる練習効果量とする
「好み」×「上達」
この世の全ての音楽ゲームの譜面が全く同じであれば、上達する必要はない。音楽を楽しむことを目的にしているのであれば、譜面がバラバラな理由がない。では何故、楽曲によって譜面が異なるのか。ゲーム性に関しては、下記の動画をご参考いただきたい。
一般的な音楽ゲームは【譜面の複雑性というリスク】を抑えて【よい判定によって得られるリターン】を楽しむことができるゲームである。この仮定が正であれば、楽曲によって譜面が異なり、また同じ楽曲に対していくつかの譜面が存在するのも納得する。難易度の山があることで、プレイしていると「上達したい」と思う気持ちは自然にわき上がるものである。
逆にこの世の音楽ゲームの楽曲が全て同じであればどうだろうか。この議論に関しては言うまでもない。飽きるからである。音楽に対して、人それぞれの興味関心度が異なるのであれば、様々な楽曲を収録しなければユーザーはゲームを継続しない。
この「楽曲の好み」と「上達のための譜面」はバランスよく存在し、音楽ゲームを成立させている要因であるだろう。
さて、そんな「好み」と「譜面」の関係について考えてみよう。
1996年に誕生した『パラッパラッパー』が日本の音楽ゲームの元祖であれば、そこから27年。ユーザーの求める「楽曲」と「譜面」は複雑性を増している。KONAMIの『beatmaniaIIDX』は去年30作品目を迎えた。現在の総楽曲数は1500曲を超える。1曲にあたり平均3譜面作成されているため、4500譜面以上収録されている。4500譜面という膨大な数が収録されながらも、その中にも選ばれやすい楽曲は必ずある。
選曲の動機に関して、上記に述べた「好み」と「譜面」であると仮定した場合、どのような関係値となるか。下記の図にまとめた。
図の定義
・トマトとキュウリ
野菜の栄養価を練習効果として例えたもの。決してトマト至高主義、キュウリ批判ではない。
・練習効果の高低(※1)
人それぞれ何をもって練習効果と呼べるか非常に曖昧であるが、ここでは汎用性のある譜面やボス曲の譜面にあたるものとする。これは譜面属性の得意不得意とは異なるため注意。
・好きな楽曲、苦手な楽曲
文字の通り、個人の好みによって異なる。
4つのカテゴリーを1つずつ見ていこう
①練習効果が高く、好きな楽曲
最高――。全てがこのカテゴリーであれば、自分の好きな楽曲で上達のために何度もプレイすることができる。モチベーションを上げようとする必要はないため、毎日の音ゲーライフが楽しくなるだろう。また、ボス曲がこのカテゴリーに含まれることが往々にしてある。ボス曲はそのフェーズにおいて、制作サイドがユーザーに対して渾身の楽曲を提供する。そのため、クオリティは比較的ユーザー満足度の高いものとなる。またボス曲は、音楽ゲームのインフレーションによって過去のものとなる。すなわち、ボス曲ができるようになることは、未来への投資にもなる。
②練習効果が高く、苦手な楽曲
辛い。特に上達しなければならない動機があればあるほど辛い。例えば、BEMANI PRO LEAGUEのプロ選手。彼らはプロ選手として所属チームを優勝に導く責務がある。よく勘違いされるが、選手は音楽ゲーム界を盛り上げるために存在するわけではない。それはプロモーターの仕事である。その他、近年の段位認定システムやスキル・ランクシステムも該当する。公式が選定した楽曲に対して、一定以上の達成率を求められるモードだ。その選定された楽曲が個人的に好まない場合、避けれられない状況に陥るため、繰り返しやることが苦痛。モチベーションを外部から取り入れる必要がある。
③練習効果が薄く、好きな楽曲
難しい。上記の通り、音楽ゲームのリスクとリターンを度外視した場合、音楽を楽しむことに注視される。とはいえ、このカテゴリーによって得られる効果もある。それは、継続して音楽ゲームを続けられることであり、モチベーション維持効果も得られる。音楽ゲームは100%個人のスキルを求められるゲームであるため、触れる回数が減れば減るほど、その実力をキープすることは難しい。筋トレは3日~1週間に一度続けた方がいいように、ある程度継続してプレイしなければならない。そのような時は何もしないよりは、練習効果が薄くても何かした方がよい。モチベーションもまた然り。気分転換に、上達を考えることを忘れるのもまた必要であろう。
また、この話題は定期的に音楽ゲーム界において荒れる原因でもある。
④練習効果が薄く、苦手な楽曲
未知。このカテゴリーに属するものは「とりあえずやってみるか」というマークが付いて以来、プレイすることがないであろう。大方、知識として知っておく程度に留めることになる。対戦形式の場においては、足元をすくうような奇襲ができるかもしれない。場合によっては、公式によって譜面追加次第でカテゴリーが変わってくることも。
まとめ
この記事は特別なことを表現しているわけではない。マトリックス図は「それっぽく」見えてしまうため注意していただきたい。この図には何ら信ぴょう性も妥当性も存在しない。しかしながら、この「好み」と「上達」の関係性に対して悩んでしまう人も少なくないと感じる。特に②と③は主観と客観が入り混じるカテゴリーにあたる。その方々に対して、少しでも柔和な考え方の参考として、自分なりの落としどころを見つけていただきたい。
補足
※練習効果の高低
例えば、BPM変化が極端に多い楽曲は練習効果が高いのか?
この問いに関しては、何を報酬にするのかによる。報酬といっても他の譜面に対しての汎用性だけではない。対戦形式において選曲されがち、スキル数が最も伸びるなどの動機があれば、練習効果量は高い。敢えて数値化するならば【その曲にかけた時間や金額×その曲によって得られる報酬】が練習効果量となる。
引用
YouTube 桜井政博のゲーム作るには 様
https://www.youtube.com/@sora_sakurai_jp
いらすとや様
https://www.irasutoya.com/