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◎完結【週末ストーリィランド】

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2024年6月の記事一覧

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第8話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第8話

 説明会場には、学生食堂の一角が選ばれた。

「『ためい気』とは、ため息の中でも、後悔・心残りなどが色濃く反映されているものを指します」
 有夢は、淡々と口を動かした。

「通常のため息とは違い、回数を重ねると本人の精神を蝕んでいく危険があります」
 そして、自分を指差して言った。
「『ためいき泥棒』は、ためい気から発するエネルギーを収集する者のことです」

 そこまで話した彼女は、少し後ろめたい

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第7話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第7話

 ひとすじの風は、教室の入り口まで達したような気がした。

 そこに佇んでいる少女の足元で、それはくるくると回りだす。

 彼女がパチンと指を鳴らした瞬間、風は周囲に離散した。

「……あなた」
 ようやく彼女の存在に気が付いたアオイは、面を上げて睨み付けた。
「今度から、見学料取るって言わなかったっけ?」
 精一杯の脅しにも、有夢は動じる様子はなかった。
 代わりに淡々と言葉を述べる。

「溜め

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第6話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第6話

 二月十四日、木曜日。
 今日は朝から雪が降っていた。
 校庭にも雪が積もっている。
 二年生は学力テスト。
 窓から眺めていると、一年生が体育で雪合戦をしていた。
 うらやましい。
 今日はバレンタインデーだ。
 数学の山田先生が余計な妄想を膨らませて、計算式を3つもミスっていた。
 きっと、色々な想いが交錯しているんだろう。
 みんな、今日の日をお幸せに♪

 それは、衝撃だった。

 体中を

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第5話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第5話

 放課後、
 アオイはひとり、教室の中でクラス日誌を付けていた。

 昔から、何かを書き留める事は嫌いじゃなかった。

 それは、記憶を助けてくれる。
 たとえ、大切な事を忘れていても、文字が思い出させてくれる。

 そして、
 思い出したくない事は、代わりに覚えていてくれる……。

 本日分の出来事を書き終わった彼女は、教壇の引き出しにノートを差し込んだ。
 閉めようとしたが、奥のほうに何かが引

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第4話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第4話

「……好きな人、か」
 その言葉を最近ようやく平気で言えるようになったアオイは、自虐的な表情を浮かべた。
「皮肉なものね」

 本人はあまり自覚していないのだが、友人に言わせると、アオイは「大和撫子を地で行っている美人」らしい。
 男子からもよく声を掛けられるが、その気が全くない為、全てノーと答えている。
 相手を傷つけないよう、断り方も堂に入ったものだ。

『好きな人がいる、いい友達でいましょう

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第3話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第3話

 次の授業の準備を始めようとしている級友の間を抜け、アオイは有夢の元へと向かう。
 しかし、彼女の姿は消えていた。

「あれ?どこいったんだろう」
「……生稲」
 首をかしげる私に、声が掛けられた。
「あ、大友」
 振り返ると、同じクラス委員の大友(おおとも)カズヤが立っていた。
「あのさ、話があるんだけど、放課後いいかな?」
「あ、うん」

 放課後、校舎の屋上。
 校庭から聞こえてくる運動部員

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第2話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第2話

 教壇の上では、中年の女性教師が英文のリーダーを説明している。

(相変わらず、LとRの発音が微妙にズレているなぁ……)

 英語は得意なはずだったが、内容が全く頭に入ってこない。

 普段の自分ならすぐ分かるはずなのに。

 やはり、ここ何ヶ月か「普段」というものをやっていないからだろうか。

 3か月前、高校一年生の終わりに経験した出来事。
 それが、生稲アオイを変えてしまった。

 思い出す

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第1話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第1話

 ため息をつくと、
 幸せが一つ逃げて行くって言うけれど、
 逃げた幸せは、一体どこに行ってしまうんだろうね……

(そんなに寒いのかな?)

 生稲(いくいな)アオイが、クラスメイトである海野有夢(うみのゆめ)に抱いた最初の印象はこうだった。

 高2の女子として平均的な身長のアオイより、彼女は頭一つ分背が低い。

 ミディアムボブの黒髪に、くりっとした大きな瞳。そして、首に巻き付けられた『大き

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【週末ストーリィランド】「風のように、また。」最終話

【週末ストーリィランド】「風のように、また。」最終話

「インタビューしても、いいですか?」
 大量の花束と格闘していた悠生に、ある女性記者が近付いて来た。

「ええ」
 係の人に花束を預け、ようやく落ち着いた彼は、襟元を正して向き直る。

「この度は、大賞受賞おめでとうございます」
「有り難うございます」
「『風の色』素敵なシーンですね。光の粉が舞い降りてくる感じが」
「ええ、苦労しましたよ」
 当時のことを思い出した悠生は、軽く微笑んだ。

「それ

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【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第13話

【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第13話

 レンズの中に居る、浅緒久深。

 彼女の白いワンピース、ミューズ、麦わら帽子……

 その全てに光が、光が満ち溢れていた。

「風色の粉が、弾け飛んでいる」
 波風によってすくわれた水しぶきに、太陽の光が反射して出来た光の衣。

 彼女の姿は、まるで風の衣を纏った天女が、地上に降り立って来た様であった。

「そうかっ!」
 悠生は、思わず叫んでいた。

(分かりましたよ、お兄さん)

『風の色は

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