ER緊急救命室が好きすぎる その2 / ドクター・ベントン
「ER 緊急救命室」は、古いアメリカの医療ドラマです。
その1で始まったこの勝手な投稿シリーズ、「ER緊急救命室が好きすぎる」のドクター編の始まりです。
ここからは、毎回 個人的に好きなドクターにfeatureしていきます。
ピーター・ベントン/ Dr. Peter Benton
記念すべき1人目は、初期キャストのドクター ピーター・ベントン。
ベントン先生を勝手に語れる日が来るなんて、嬉しい!
私はこの先生が大好きなのだ。
相当優秀なドクターで、孤独な外科レジデントとして第1回目から登場。
カーター先生との関係は、シリーズが進んでくると漫才みたいに楽しくなるものの、最初のころは、とにかく鬼!!
こんな先生の下で研修医なんて絶対カーター君ってMだよね、と思っていました。
無愛想だし、冷酷だし。人との会話もなければ、超マイペース。
いや〜、この人ってコミュニケーション力、全く無しです。
本当に社会で生きていけるんだろうか?と相当心配しながら話は進んでいきました。
しかし、黒人に生まれ、いろんな差別や冷遇を受けてきたであろうと想像できますから、上へ上へとスーパー外科医を目指すのは、きっとそういう背景があるからなんだろうなあ、と思っていました。
ドクター・ベントンの印象的なシーン
シリーズ3で、インターンのガントがベントンの手厳しい指導により心を病み、ちょうど失恋も重なり電車に飛び込み自殺をしてしまう。
この時にカーターと一緒に必死でガントを救おうとします。
①この顔が判別つかないほど潰れてしまった患者の処置のために、ガントをポケベルで呼び出しますが、なんとこの患者の持っていたベルから呼び出し音が鳴る。
=それでこの患者こそガントか!?とわかる瞬間。
②一瞬間を置いて、ベントンと懸命に処置を始めるカーター君。
この2点がとても印象に残ってる理由です。
①はシーンの残酷さに。
②はカーター君の成長に。
ベントンは本当は心優しいのだけど、どうしても素直に表現ができない人。
自分の手技に何より興味があるのは事実だけど、命を救う事やカーターへの指導の理由や、そういう事がシーズン8までに少しずつ見えてきます。
このシーンはそんな事の兆しが一瞬見えて、ある意味ショックなのです。
私だったらもう医者を目指すなんて辞めたくなるくらい、ガントに厳しく教えていたベントンが、「死ぬな!」と叫びながら処置していたのは
外科医という性質によるものなのか、本当は一人前の医者になってほしいからガントに愛情を持って鬼指導をしていたのか、どっちかな?!と考えた一瞬でもありました。
そしてこの時ほどドクター・カーターの成長を感じた瞬間はありませんでした。やっぱりカーター君はベントンの秘蔵っ子でもありましたし、ガントと大きく違ったのは、カーター君のメンタルの強さ(いや、呑気さ)の賜物でした。
誰よりも愛情が必要だったベントン
途中、コーデイ先生やジェニー、幾人かの女性達と心の隙間を埋めるように情事を重ねる事で、ベントンも人間なんだな、というような弱さもなんとなく見えてきつつシリーズは進みました。
外科医という神経をすり減らすような現場、ましてはドクター・ロマノの嫌がらせのような仕打ちにも耐えながらの日々。
そんな中で一時の安らぎを求めて優しい女性等と恋に落ちます。
しかし、最後に結ばれる女医のクレオに「貴方が恋しているのは自分だけだわ」と言われたくらい、表向きは女性に恋しているようでも、実はそれまで愛していたのは、自分自身でした。
それでも最終的にはリースという子供ができた事で彼の人生は大きく変わった訳です。
ベントンにとっての子供 / リース君
完璧主義のベントンにとって、カーラにうっかり妊娠させてしまった事。
そして生まれてきた子供・リースが難聴という障害を持っている事。
リースが難聴だった事は、ベントンに初めての「恐怖」というものを与えたのかもしれません。
彼のような完璧主義の人は総じて不安を抱えている人です。
自分の作った計画や想定が壊れる事が「嫌」というより「怖い」のだと思います。恐怖を抱えた人は自分のエゴと闘う人。
リース君のおかげで初めてこの感情に向き合えた事は、ベントンにとっては一流の外科医になるよりも、最高に幸せな事だと思っています。
余談ですが、エゴと恐怖については素晴らしい本があります。
興味のある方、是非こちらを読んでみてください。
ベントンがERから去る日
初回からメインキャストであったベントン先生は、とうとうシリーズ8でERを去ります。
結局 自分に何が必要なのかをクレオやリース君を通して彼は気づきました。最後の超難しい手術を終えて病院を去ろうとする時、ベントンを見送る宿敵ドクター・ロマノの表情。いつものように平然とした顔でしたが、その奥底には名残惜しむ顔が見えていました。
そして最後にランニング中の公園で待ち伏せていた、カーター君とのやりとりは、ベントンからの愛情がたっぷり見えたシーンでもありました。
カーター君を育て・救い・導いてきたのは、彼を応援していたベントンでしたから。
カーター君が「先生のおかげでいい医者になれましたよ」と言うと
「まだまだ。もっと勉強しないと」と、これがERでのベントンの最後のセリフでした。
人はぼんやりと存在し続けていく
ベントンが一流のドクターにのしあがる事をやめ、クレオとリースとの家庭をとった話を最初に見た時、私はまだ若者だったので、その当時は、なぜなんだ?とベントンの決断は理解できず、なんて勿体無い・・・と思っていました。
あれから何回も何回もERを見返してきて、私もERの歴史も歳を重ね、今ならベントンがなぜその決断をしたのか、がよくわかります。
人が人として在り生きるには、やはり人が必要なんですね。
ありきたりな言い方ですが、それしかないのだな、、と。
神が人間という創造物を存在させた時に、それは前提だったのでしょう。
単に子孫繁栄という意味ではなく、もっと非生物学的であり非科学的である、ぼんやりとしたもの、です。
ぼんやりしているものはそのままでいいのかな、と思います。
ぼんやりしたまま生きていく事で、ぼんやりしたものに引っ張られて道は開けていくのでしょう。
そしてそのぼんやりしたものが愛なのだろうなあ、と感じます。