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「ときめきビザ」毎週ショートショートnote

「『ときめきビザ』なんて、
旅行会社のCMだろう。」
大学生の陽介は、友人の美咲の話に眉をひそめた。
「でも、このビザ。毎日がキラキラと輝き出すんだって。」
美咲は陽介にSNSの投稿を見せる。
「食パンは、いつもよりふっくらだし、街並みはどこかロマンチックなんだって。」
「そんなことあるわけないじゃん。」
陽介は苦笑するが、どこか心が揺れていた。
「恋愛だって。まるで、ラブストーリーのヒロインなんだって。」
美咲の言葉に、陽介は微笑んだ。
「おもしろそうじゃん。」
勢いで、一緒にビザの申請をした。

数日後、自宅に届いたビザを財布に入れた。
しかし、何日経っても、特に変わったことは起こらない。

相変わらずの日常だった。

ある朝、陽介はふと空を見上げた。すると、そこには今まで見たことのない入道雲が広がっていた。
「もしかして、これか。」
美咲にLINEでおくってみた。
「私もそう思う。」
スタンプが愛らしい。

陽介は、再び空を見上げる。
「時は満ちた、告白してみよう。」


たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。
お題は『ときめきビザ』でした。


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黒夢(クロム)@俳号
It's a very stimulating night, but I can't enjoy it! Cette nuit est si stimulante, mais je ne trouve aucun plaisir. こんな素敵な場所なのに、もう一杯を頼めない。