2022年1月・消費者物価は上昇していない。
2022年1月の消費者物価指数が発表され、NHKでも報道されている。
NHKの記事によれば、
上昇は5か月連続
去年の同じ月と比べてガソリンが22%、灯油は33.4%、それぞれ上昇
41年ぶりの記録的な上昇
「ぶり」が28.5%、「いちご」が24%、それぞれ上昇
と、上昇、上昇のオンパレードである。
しかし、ちょっと待って欲しい。
総合での上昇幅は、わずか0.5%である。生鮮食品を除くと0.2%、エネルギーも除くと逆に1.1%ものマイナスなのである。
エネルギー価格を含めれば、数字上は上昇していることは間違いない。しかし、日銀は2%の物価上昇を目指しているのではなかったのか。つい先日も、欧米に釣られて金利が上昇しないよう(つまり、物価が上がりやすくなるよう)指値オペをしたばかりではなかったのか。
2%の物価上昇という目標からすれば、1%に満たない数値など、目標の半分にも達していない。記事のタイトルにするならば「5か月連続の横ばい」が正しいはずである。
年末ごろからエネルギーや食品などの物価上昇に関するニュースが多い。米国や欧州でのインフレ率が派手に伝えられる。そして今回の「5か月連続上昇」である。
こうした報道で「物価が上がって生活が苦しい」というフィクションが生まれる。全く持って害しかない。マスコミの人間は、いまだに「物価上昇=悪」という単純式しか知らないのか。この30年、物価が上がらずに苦しんだ歴史を知らないのか。
物価が上がっているのが問題なのではなく、物価が上がり切らないことが問題なのだ。現状としては「物価下落=悪」「2%程度の物価上昇は善」「2%に満たない物価上昇は不足」である。早急に認識を改めてもらいたい。
それに考えてみれば、エネルギーがこれだけ上がってなお物価が上昇しないのは、他の何かが下落しているはずである。エネルギーに匹敵するような幅広い価格下落であれば、考えられるのは土地と人件費である。
人件費が下落しているなら大変なことで、その意味では松野官房長官の「賃上げも重要」という発言は正しい(どうせ何もしやしないから期待はしていないが)。また土地であっても担保価値の下落は企業の設備投資を冷やす原因になる。対応が必要だ。
いずれにしても「物価が上がって大変」という記事だけ見せられては問題の本質は分からない。一番肝心なことが分からなくなるのだから、困った報道である。
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