武士道精神ここにあり『ひらり 桜侍』
「ストイックなゲーム」と聞くと、何を思い浮かべますか?
大体の人は『ダークソウル』や『SEKIRO』のように、一瞬の判断の遅れがミスにつながる死にゲー・高難易度ゲーを挙げるのではないでしょうか。
今回紹介する『ひらり 桜侍』は、2011年発売、しかも任天堂のゲームでありながら、上記の作品に通底するストイックなエッセンスを感じるのです。
今作はグランディングと任天堂が開発し、任天堂から発売された3DS専用ダウンロードソフト。
プレイヤーは主人公の桜丸を操作し、悪しき者に連れ去られたコノハナサクヤヒメを救うべく冒険の旅に出ます。
主人公の武器となるのが刀。敵の攻撃を回避し、すかさず攻撃するのが基本的な立ち回りとなります。敵の攻撃を上手く回避すると「見切り」となり、二回分攻撃できるメリットがあります。見切りを連続で成功させるとカウントされていき、その数が大きいほど道具屋で高く売れる、なんてメリットもあったりします。
戦闘時は敵との間合いが特に重要。回避の方法は「横に避ける」か「後ろに避ける」の2種類のみ。敵の攻撃はすべてこのどちらかで回避することができます。
カメラは自動的に切り替わるため、プレイヤーはとにかく回避!回避!そして攻撃!……にひたすら専念するゲームとなっています。
3DS初期のタイトル、かつ任天堂が関わっているのもあり、立体視にもしっかり対応しています。たまに3Dにすると、思ったより刀が飛び出てくるので結構面白いです(まあ目が疲れるからすぐ戻すのですが)。
このゲーム、本当に最初から最後まで回避と攻撃に専念するゲームなんですよ。新しい武器を入手して、戦い方が変わるなんてことは一切ない。ただただ己の刀を握り、敵の攻撃を見切って反撃する。その繰り返しなんですよね。
もちろん、先に進むと敵の攻撃も激しくなり、予備動作が短くなったり、二回攻撃を仕掛けたりしてくるのですが、それでも基本的にやることは変わりません。そこがこのゲームを「ストイック」たらしめる要因なのかなと思います。
じゃあ退屈なのかというとそういうわけではなく、遊んでいると武士の桜丸の気持ちに近づいていく感覚が味わえるんですよね。武士道精神とでもいいますか、刀一本で敵を倒していく主人公と、ストイックなゲームデザインが絶妙にリンクしている。
難関ステージを達成した時も、「よっしゃー!」って感じではなく、「ふう……」とじんわり満たされるような充実感を覚えます。これが意図的なのだとしたら、とてもよくできている作品だと思います。
クリアした後は高難易度モードが解禁されますが、なんとそちらは体力の上限が初期値から増えない、回復アイテムを購入できないという超鬼畜仕様。ほぼほぼオワタ式です。このモードをクリアしている頃には、もはや武士を超えて修行僧の境地に達しているのではないかと思ってしまいます。また、ゲーム進行に合わせて「50人斬りモード」や「100人斬りモード」などのタイムアタックも解禁されるのですが、限られた体力の中、死なずに100人斬るのがそもそも大変。やはりどこまでもストイックなゲームです。
さて、ストイックさが売りのゲームですが、10年以上前のゲームということもあり、それなりにテンポの悪い部分も目立ちます。例えば、ステージ選択のシーン。ステージを選ぶと、桜丸がそこまで移動する演出が挟まれるのですが、遠い場所に向かう時ですら毎回挟まれるので、テンポを阻害している感は否めません(一応、遠い場所に向かう時は駆け足になります)。また、ボスステージはボスに向かうまでの道のりも含めてかなり長いのですが、倒されると一番最初からやり直し。ボスは初見で勝てるような難易度ではなく、何度も戦い、動きを先読みできるようにならなければ勝てません。昨今の高難易度ゲームはすぐにやり直せることが多いので、この仕様は正直キツかった!
プレイしていると、ゲームで遊んでいるというより、滝に打たれて修行している感覚になる。そんな一風変わったゲームでした。
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