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『ダンガンロンパ』の“ケレン味”とは、結局なんなのか?

 「この作品のシナリオ、ケレン味がいいね!」と言われたら、一瞬意味が分からなくて「え?」と思いそうです。何その知らない味覚。サラダ記念日ならぬケレン記念日?

 というわけでこんにちは。
 つい先日、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』をクリアしました。噂通り面白かったですね。

 で、この作品の魅力は? と聞かれたら、おそらく大体の人が次の三項目を挙げると思います。

  • ぶっとんだ世界観

  • 予測不可能なシナリオ

  • 超個性的なキャラクターたち

 そして、この3つの要素を一言で表せる魔法の言葉があります。それが「ケレン味」です。
 ケレン味はダンガンロンパシリーズの企画・シナリオを手掛けた小高和剛さんの作風としても知られています。

 ちなみに、ケレン味とは次のような意味を持ちます。

「ケレン味」とは、ハッタリやごまかしを効かせた演出のことを指します。漢字で書くと「外連」。本来は「正当ではない、邪道である」といった意味合いの強い言葉でした。これが、演劇用語として広まるにつれて、「芸の本道から外れた、見た目本位の奇抜さをねらった演出」という意味合いへと転じていったのです。

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 ……つまりどういうことだい?
 奇妙奇天烈摩訶不思議ならケレン味があると言えるのでしょうか。それはそれで一つの解だと思いますが。
 私は、ケレン味を「どんでん返し」の言い換えだと解釈しています。
 でも、どんでん返しがある作品はたくさんありますよね。だからわざわざケレン味と言うのには、それなりの個性があるはずです。
 それは一体なんなのか?

 ここではどんでん返しを「Aと見せかけてBだった」と定義します。そして、ケレン味はこのAとBの乖離が凄まじい作品に対して言われるのではないか、と思うのです。

 ここからは先に挙げた3つの要素と「どんでん返し」について、第一章を例に解説してみたいと思います。当然ながらネタバレを含んでいるため、まだ遊んでいない方は今すぐ購入して遊んでからこの記事を読んでください。スマホでもSwitchでも遊べますので。

 まずは「ぶっとんだ世界観」。
 これはとても分かりやすいですね。希望ある未来のため、超高校級の逸材を育成する希望ヶ峰学園。そんな希望の学園が絶望に染まってしまう。まさに希望と絶望が対比になっています。
 そして、本来であれば生徒たちが仲良く学園生活を送るはずの場所で、あろうことかコロシアイをさせられてしまうわけです。学園生活と見せかけてコロシアイだった、これら二つも当然ながら大きくかけ離れています。
 そうそう、言い忘れていましたが、世界観やキャラクターに対するどんでん返しは「ギャップ」と言い換えることができます。どんでん返しとギャップ、この二つが大きいものをケレン味と言うのでしょうね。

 次に「予測不可能なシナリオ」と「超個性的なキャラクターたち」。この二つはまとめて解説しちゃいます。
 第一章のシナリオはまだおとなしい部類ですが、それでもかなり展開が二転三転します。特に、ヒロインとも言うべき舞園さやかちゃんが最初の犠牲者になってしまうのは、衝撃の展開ですよね。だってヒロインですよ。主人公の次に最後まで生存しそうなキャラクターじゃないですか。「一番死なないように見えたキャラが死ぬ」も一つのどんでん返しなのです。
 そして、学級裁判によって明かされる真実にも、二つのどんでん返しが含まれています。それは「舞園さやかは一見すると被害者だが、実は加害者でもあった」こと、そして「主人公の一番の味方に見えた彼女は、実は主人公に罪を着せようとしていた」ことです。
 被害者のように見えて加害者。主人公の味方に見えて敵。二つのどんでん返しが事件の全貌に含まれていることで、驚きに満ちたシナリオが展開されるのです。

 このように、ダンガンロンパは「世界観」「キャラクター」「シナリオ」の全てにどんでん返し、またはギャップが仕込まれており、プレイヤーをとにかく驚かせてきます。これがケレン味と呼ばれる所以だと思うのですね。

 しかも、ただどんでん返しをしまくっているわけじゃないのです。
 この作品の場合、「Aと見せかけてB、かと思えばCだった」なんてこともあります。言わばどんでん返しの二乗。もちろん驚きも二乗です。
 なるべくネタバレしないように例を言うと、第二章の犯人が分かる流れなんかはまさにそれです。「Aと見せかけてBなんじゃないか?」とプレイヤーにあえて予想させておき、その上で「実はCでした!」という事実を叩きつけてきます。
 実際に遊んでいて、一番衝撃的だったのは第二章かもしれません。我々プレイヤーの思考すらもシナリオライターの手のひらの上なんじゃないか……と末恐ろしさすら感じました。

 さらにさらに、この「Aと見せかけてB」と「かと思えばCだった」の間には、時間を挟んでいることもあります。第一章の「Aと見せかけてB」に対して、最終章で「かと思えばCだった」を提示する、なんてこともあるのです。並外れた記憶力を持っていない限り、そこまで時間差があると忘れてしまいます。だからこそ不意打ちを食らったような衝撃を受けるのです。

 まとめると、『ダンガンロンパ』の“ケレン味”は、以下のようにして生まれていると考えています。

  • 「世界観」「キャラクター」「シナリオ」の全てにどんでん返し(ギャップ)を徹底的に仕込む。

    • どんでん返しの主軸となる二つの要素は、なるべく乖離を大きくする。

  • 一つの事象に対し、二つのどんでん返しを仕込む。

    • それらが明らかになるタイミングに、時間差を設けている。

 というわけで、以上しがないゲームシナリオ好きの考察でした。
 まあ何が言いたいかというと、ダンガンロンパのパロなんて書くもんじゃないってことです。

以下、参考書籍


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