パズル×ローグライクの傑作『ミミックロジック』を君は知っているか
「あなたが一番面白いと思うゲームジャンルは?」
……と聞かれたら、皆さんはなんて答えるでしょうか。
小学生の頃のマリオ大好きな私だったら「アクションゲーム!」と答えていたでしょう。ですが今だったら「ローグライク!!」と答えると思います。
運と実力の絶妙なバランス、常に新鮮さを持ったゲーム体験など、良質なローグライクの魅力を挙げていくとキリがありません。
そんなローグライクのゲームにおいて、もっと知られてほしいと思っているゲームが、今回タイトルにもなっている『ミミックロジック』です。
元々はドワンゴが運営していたRPGアツマールというプラットフォームで配信されていたタイトルです。RPGアツマールは2023年に終了したため、一時は遊ぶ手段がなくなっていましたが、2024年に新要素を引っ提げてSteamでリリースされました。お値段たったの470円!
そんな今作、世間的な知名度はそれほど高くないものの、私は数あるローグライクゲームの中でも傑作の部類に入ると思っています。
なぜ、そう思うのか?
ここからは具体的な理由を語っていきます。
パズルとローグライクは「水と油」
まず、タイトルにもなっている「パズル×ローグライク」について話しましょう。この二つの要素がミックスされているのは、実はとてもすごいことなんです。
この凄さを理解してもらうためには、パズルとローグライク、それぞれのゲーム性を理解してもらう必要があります。
おそらく、このnoteを読んでいる方の中に「ローグライク? 何それおいしいの?」という方は少ないと思いますが、念のため説明しておきましょう。ローグライクの定義は非常に曖昧なことで知られていますが、主に以下の要素が含まれています。
ランダム性(プレイする度に変わる要素が多分に含まれる)
恒久的な結果(プレイ中の選択と結果を後から変えられない)
キャラクター中心(自由に操作できるのはプレイヤーキャラクター1人)
もっと細かな解釈もあるのですが、3つに絞るとこんな感じです。この3つだけなら、おそらくほとんどのローグライク(あるいはローグライト)が当てはまっていると思います。有名どころだと不思議のダンジョンやSplatoon3のサイド・オーダー、インディーならNoitaやSlay the Spireなど。大手・インディー問わず様々な作品が販売されています。
そして、ジャンルとしてのローグライクの魅力も、上記の3要素から見えてきます。
ランダムだからこそ、ゲームの開発者でさえ先を予測できない「自分だけの物語」が生まれる。
一度選択した結果は変えられないからこそ、シンプルかつ究極の意思決定を幾度となく迫られる。
まるで人生だね運が絡む以上、理不尽な目にもあってしまうが、培った知識と経験がプレイヤーに蓄積し、先を切り開く力になる。
これ以上深く語ると大変なので、もっと深く知りたい方はJiniさんのnoteがおすすめです。一部有料ですが一読の価値あり。
で! ここまで読んでピンときた方もいると思うのですが、ローグライクの魅力はパズルゲームと非常に噛み合わせが悪いのです。
※なお、ここで言う「パズルゲーム」とは、ぷよぷよやテトリスのような落ち物パズルではなく、倉庫番や詰将棋のように「問題作成者が用意した一つの解答を導き出すもの」です。あらかじめご了承ください。
まずランダム性について。
たった一つの解答を求めるパズルにおいて、ランダム性は御法度です。壁・荷物・格納場所を完全にランダムにした倉庫番を想像してみてください。どう考えてもまともに遊べないですよね。もし、ちゃんとしたパズルゲームを作ろうと思ったら、人間がしっかりレベルデザインしないと破綻してしまいます。
パズルは問題作成者が作ったものを自らの思考で解き明かすことに意味があり、その過程の中に「自分だけの物語」はもとから必要とされていないのです。
また、ほとんどのローグライクゲームには「パーマデス」と呼ばれる要素があります。これは「死ぬと獲得した持ち物や能力を全て失う」ことを意味し、死のリスクが高いからこそ選択に重みが生まれる相乗効果をもたらしています。
これもパズルゲームでは再現しにくい要素です。一度でも解答が不正解になると、二度と同じ問題で遊べなくなるパズルゲーム……みたいに、無理やり実装できなくはないかもしれません。しかし、パズルゲームは正解にたどり着くために試行錯誤してなんぼのゲーム性です。ローグライクのパーマデス要素を無理やり取り入れようものなら、ゲームデザインは空中分解を起こしてしまうでしょう。
ここまで説明してきたように、ローグライクとパズルが持つ性質は、いわば水と油。簡単にはまぜこぜできない存在です。
だからこそ、この二つのジャンルを両立させたミミックロジックは、とても偉大な作品だと言えるのです。
では、ミミックロジックはこの二つのゲーム性をどのようにしてミックスしたのか?
答えは至極単純。今作は「パズルを解くことを一番の目的にしていない」のです。
「不完全」を許す
ここで、『ミミックロジック』がどのようなゲームなのかを説明しましょう。
ミミックロジックでは、ダンジョンの最深部に待ち受けるボスを倒すことが目的です。道中には敵の出現するフロアもありますが、ほとんどは宝箱が並んだエリアとなっています。
この宝箱には武器や防具など、ダンジョン攻略を有利に進められるアイテムが入っています。ところが、宝箱の中にはミミックが交ざっており、それを開けてしまうと即ゲームオーバーとなってしまいます。まさに先程話したパーマデス要素で、宝箱を開けるのは非常に大きなリスクを伴います。
では、どうやって宝箱とミミックを見分けるのか?
今作では宝箱に話しかけることができ、それぞれ「◯◯はミミックだ」とか「◯◯はミミックじゃない」などと話します。本物の宝箱は必ず正しいことを言う一方、ミミックは必ずウソをつくという特徴があります。プレイヤーは彼らの発言をもとに、宝箱とミミックの配置を割り出すことで、安全に宝箱を開けられるようになるのです。これが今作のパズル要素ですね。
今作は問題が自動生成されるため、ダンジョンに入る度に宝箱の話す内容が変化します。それはつまり、常に新しい問題がプレイヤーに出題されることを意味しています。これこそが、先に話したローグライク要素の一つというわけです。
しかし、話す内容がランダムに決まるため、中にはどうがんばっても解けない問題が出てきます。以下の例をご覧ください。
これはゲーム中に私が遭遇したパズルの一つです。
画面左上に書かれている通り、以下の画像にはミミックが3匹紛れており、既に2匹はバツ印で特定済みです。そして数字の「1」と「2」が割り振られていると思いますが、これは「1がミミックで2が宝箱のパターン」と「1が宝箱で2がミミックのパターン」の2つがあります。つまり、どちらの宝箱もミミックの可能性があるわけです。
「せっかく解いたのに運ゲーを迫られるとかクソゲーじゃねーか!」とお思いの皆さん。ご安心ください。このパズル、これ以上解かなくても大丈夫です。
実は今作、宝箱が置かれたエリアは自由にスキップすることができます。なので解けるだけ解いて「これ以上は無理だな」と思ったら、次のエリアに進んでしまって良いのですね。
ゲームシステムによって、不完全なパズルを許容してしまう。これはとても大胆なゲームデザインだと思いました。
「じゃあ宝箱を全スルーできちゃうじゃん」と思うかもしれませんが、そうもいきません。今作のダンジョンでは、一定階層ごとにモンスターとの強制戦闘が発生し、最深部ではボスとも戦います。その際、何も準備していなければ、あっという間に倒されてしまうことでしょう。敵を倒すためには、強い武器や防具を装備したり、アイテムを活用したりする必要があります。そして、それらのアイテムはどこにあるのか? もちろん宝箱の中です。
つまり今作は、宝箱を開ける行為には「ミミックを引くリスクと良いアイテムを得るリターン」があり、宝箱を無視する行為には「ミミックを引かないリターンと後の戦闘が苦しくなるリスク」があるんですね。この絶妙なリスクとリターンの配分が本当に良くできているのです。
もちろん、宝箱から出てくるアイテムもランダムなので、「せっかく宝箱を開けまくったのに、回復アイテムが出てこなくてやられちゃったんですけど!」なんてパターンもありえます。そういった理不尽さや運の要素はありつつ、それでも「もう一回!」と思わずやり直したくなってしまう。ローグライクが持つ抜群の中毒性を、今作は見事に再現しています。
他にもいろいろ、かけひき要素
上記で紹介した要素以外にも、今作には様々なかけひきの要素が含まれています。
武器・防具の耐久値
今作はすべての装備品に耐久値が設定されており、耐久値が0になると壊れてしまいます。そのため、特に武器を使う際は「節約」が必要になります。
例えば、体力10の敵がいたとしましょう。攻撃力20の最強武器で攻撃すると、オーバーキルになってしまいますよね。強い武器は、先々に戦う強い敵のためにとっておきたい。そんな時は、プレイヤーの攻撃力が10になるように武器を装備し、強い武器は温存しておく……なんてプレイも可能です。
耐久値は「強い武器と防具が揃ったので宝箱を全部無視する」といったプレイングを阻止すると同時に、「強い武器が出た途端、それより弱い武器はすべて不要になる」といった状況になりづらくする役割を持っています。
空腹度
今作には「空腹度」と呼ばれるパラメーターが存在します。ダンジョン内にいると少しずつ減っていき、0になると問答無用でゲームオーバーになります。一つの問題に悩みすぎると空腹度がどんどん下がっていくので、時にはパズルの損切りも求められます。
空腹度の減少スピードは遅めなので、あくまでも緩い縛り要素ではありますが、これも今作のかけひき要素を強めている一因です。
任意戦闘エリア
先ほど、一定階層ごとにモンスターとの強制戦闘エリアがあると話しました。実は、それとは別に任意戦闘エリアも存在します。任意戦闘エリアはスキップすることも可能ですが、全ての敵を倒すと「ちからアメ」が入った宝箱が出現します。
ちからアメは主人公の攻撃力を上げるアイテムで、今作をプレイする上でもっとも重要なアイテムの一つです。アイテムに余裕がある時はモンスターを倒し、余裕がない時はスキップを迫られる――これもかけひき要素の一つですね。
まとめ
というわけで、『ミミックロジック』の良さを伝えようとがんばって書いてみましたが、ちゃんと伝わったでしょうか。まとめると、今作は「パズルとローグライク、それぞれが持つ魅力を損なわせずにミックスさせ、なおかつ様々なかけひき要素を盛り込んだゲーム」となります。
まあ要するに、私が言いたいのは「こんな神ゲーがワンコインで遊べるなら買わない理由がない!!」ってことなんですよね。
ローグライクはインディーだと人気のジャンルですから、各作品のクオリティーは玉石混交な一面もあります。私もそれなりにプレイしてきましたが、今作の独創性とクオリティーの高さには目を見張るものがあると思っています。なのに知名度が低い、とにかく低い! まあそもそもRPGアツマールの知名度がほとんどなかったからね。
もっと今作の完成度の高さに注目が集まったらいいなと思い、このnoteを書いてみました。安価で良質なインディーゲームを探している人、ローグライクが好きな人、パズルが好きな人、このnoteを読んで少しでも興味を持った人はぜひ遊んでみてください!
最後に、なぜか異常に詳しく書かれているニコニコ大百科のページも置いておきます。攻略で詰まったら役立ててくださいね。
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