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電子書籍派の微妙な居心地の悪さ、あるいは四次元ポケットの感覚について

noteや新聞記事を読んでいると、「今は電子書籍もあるけど、私は紙派!」みたいな内容の文章を見かけます。
……というか、冗談抜きで週に一度は読んでいる気がする。

最近、電子書籍もすっかり浸透したが、私はアナログ派だ。幼い頃と変わらず、紙の手触り、インクの香りにワクワクしている。

日本経済新聞「読書とアナログ 丸紅会長・國分文也」

なぜ人は「紙の本」を欲しくなるのか?

「手元に置いて、いつでも読みたいから」だと僕は思っていたが、じつは比べてみると全然ちがった。すぐ近くに愛着ある大好きな本が「ある」こと、そのこと自体がとても大切だったのだ。

コムギさんのnote「なぜ人は「紙の本」を欲しくなるのか?」

紙の本を買いなよ、電子書籍は味気ない。

アニメ『PSYCHO-PASS』1期15話より

軽く思い出しただけでもこんなに!
まあ、基本的には私も同意です。なんたって紙の手触りはいい。インクの匂いは落ち着く。

その一方で、こういう文章の裏側に、「本が好きなら紙で読むよね?」というじんわりした圧力を感じてしまうのは自分だけでしょうか。

頭では分かっていますよ。
この手の文を書いている人たちにそんなつもりはないと。本気で紙がいいと思っているから、そう書いているにすぎないと。

ただ、私が電子書籍に手をつけるまでやたら時間がかかったのは、「本が好きなら紙で読むべし」という固定観念が、いつの間にか頭に染み付いていたからでもあるんですよね。

そんなことを思い出しつつ、自分がなぜ紙から電子書籍に移っていったかを振り返ってみる。

買いたくても限度はある

実のところ、電子書籍がメインの今でも、紙の本は時々買っています。

その一例が大型本でして。
アートブック集めが好きで、普段「モノを減らすと快適だぜ〜」とか言ってるくせに、気づけばどんどん買い集めています(笑)

分かる人には分かるでしょうが、大きな本を目の前に広げ、紙でめくっていくあの充実した時間は、何物にも変えがたい一人の時間なんです。本と相対すると同時に、それを読む自分とも向き合っている。
心を解きほぐし、丁寧に洗っている感覚とでも言えばいいのでしょうか。

そんな時間は大切にしたいと思う一方で、「これってすごく贅沢なことだよなあ」と感じることもある。

紙の本はとかくスペースをとりますよね。一冊だけならまだしも、読書好きは何冊も買いますから、気づけば大量の本に埋もれていく……

今住んでいる自分の部屋は、大きめの本棚を一つ置くのが限界です。そこに収まる分しか買えない。つまり、最初から上限が見えている。

そう思うと、やっぱり気軽には買えないんですよね、紙の本は。
もちろん、電子で売っていない書籍であれば迷わず買いますけど。

習慣化という壁

そして、私が電子書籍に傾いたもう一つの大きな要因が、「紙だと習慣化できなかった」これに尽きます。

通勤用のリュックに入れて、電車の中で読むとします。すると当然ながらかさばる。単行本はデカいのです。
文庫本ならまだいいけど、リュックの中に放り込むと、本やしおりが折れ曲がるリスクもある。そもそもしおりをあまり持っていないし、持っていてもよくなくすんです。しおりってすぐ行方不明になるよね。

加えて地味にデカいのが、一度リュックなどに入れてしまうと、それを取り出すのに結構心理的なハードルがある。周りの視線が気になるんです。座っている時ならまだしも、立っているとなおさら厳しい。

その点、スマホはポケットにつっこんでいるし、ぱっと見で何をしているか分からないので、心理的ハードルが雲泥の差なんですよね。

電車に乗っていると、片手に文庫本を持って、立ちながら読んでいる人っているじゃないですか。
あれは本当にすごい。尊敬します。私にはあれができなかった。だから電子書籍派になったとも言える。

四次元ポケット

余談ですが、私は『本好きの下剋上』というシリーズが大好きです。
このシリーズは本編だけで30冊以上あり、ファンブックや漫画版も買うともんのすごい量になります。当然、紙で買おうものなら大量のスペースが埋まってしまう。

実際には全て電子書籍で買っています。
すると、手の中に収まる薄い端末一台の中に収まってしまう。

なんていうか、この感覚がいまだに摩訶不思議。
まるで、子どもの頃から欲しかった『ドラえもん』の四次元ポケットが目の前にあるようです。

手のひらの中に、自分が電子で買った500冊の書籍が詰まっている。そして、それをどこにでも持ち運べる。
子どもの頃、ドラえもんを見て抱いた夢を、テクノロジーが叶えてくれたように思います。

スマホを起動するたび、技術の進歩によって当たり前になった四次元ポケットに、私はいつも驚きと幸せを感じているよ、という所感で締めようと思います。

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