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油を売るという話。

あるところに二人の男がいた。

1人の男は始めた会社が最近軌道に乗って身なりも立派な青年。

もう1人の男は、中年の冴えない男だった。

中年の男は毎日同じ時間、同じ場所にいる。

何をするわけでもなく、ボーッとしている中年を不憫に思い青年は声をかけた。

青「おじさん、いつもここにいるよね?何してるの?」

中「油を売ってんだよ。」

青「おじさん、結構いい歳でしょ?毎日油売ってて家族は何を言わないの?」

中「何も言われねぇよ?それなりに稼いでるからな。」

青「嘘だ、毎日毎日こんな所で油売ってるようなおじさんがどうやって稼ぐのさ?」

中「油を売ってるのさ。」

青「油を売ってるのは分かったけど、そんなの一銭にもならないじゃない。」

自分の話をのらりくらりと躱そうとするおじさんに青年はある提案をした。

青「あ、もし良かったらうちの会社で働かない?今そこそこ勢いのある会社だし、おじさん1人雇うぐらい訳ないからさ。」

中「いいよ、俺はこう見えて忙しいしさ。」

青「頑なだなぁ、ここで油売ってたって人生変わんないよ。」

中年のおじさんはやれやれといった感じでこう言った。

中「兄ちゃん、勘違いしてるようだけどさ、俺が売ってる油ってのは石油だよ。」

青「え?石油!?」

中「初めから言ってるじゃねぇか、油を売ってるんだってよ。」

これは本当のような嘘の話。


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