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#16. 「ふつう」ではないことも刺激していきたい_眞山和姫

名前 
 眞山和姫
職種 
 高校・情報科教員 
備考 
 情報学部を卒業し、高校の情報科教員をしている眞山先生。「普通科」と共に授業をしている中で感じた、専門科としての「普通」をお伺いしました。

1. 高校教員の1日

──今日はよろしくお願いします! まずは1日の流れを教えてください。

 5:30に起きて、早い時には7:00に職場にいます。実は皆さん知らなかったことかもしれませんが、担任を持っている先生は朝に掃除をしている人も多いです。私は教科の準備に追われています。午前中は4時間ほど授業があり、そのうち2・3時間受け持っています。授業がない時は、次の授業の準備をしていますね。 
 ちなみに、お昼ご飯もお昼に食べてるわけじゃないです。生徒を昼休みの時間を使って呼び出すこともあるからです。それも含めて流動的で、時間割に合わせて動いているという感じですね。放課後は、コンピューター同好会と卓球部の顧問をしています。

──ちなみに家帰ってからは何をされているんですか?

 最近は英語にはまってしまって、勉強してます。もうなんか日本人、誰しも「急に外国人話しかけられて英語ペラペラだといいな」という妄想あるじゃないですか。あれになりたいと思って、ハマっています。あまり仕事のことは考えてないですね。23時ごろには寝ます。

2. 普通科と情報科の授業内容は

授業の様子(普段はマスクを着用されています)

──情報の授業はどのようなものなのでしょうか? 普通科と専門で違いますか?

 普通科だと、プログラミングやデザインもやらなきゃいけなくて。私はデザインはセンスだと思っているので、プログラミング中心に2進数などを教えています。 
 情報科では、デザインが専門なので、情報デザインやコンテンツ・映像製作を教えています。ものづくりが好きで、変なものいっぱい作ってます。あと、フォントが好きなんですよ。(手元の企画書を指差して)これ、Mplusですよね?

──その通りです!すごい……!

 ファミレスのメニューとか見た時に、メニューの内容じゃなくて、先にフォントの言葉がわかる特技があって。生徒に「ノラ文字(※)を探せ」みたいな課題を出すこともあります。例えば、居酒屋とかにあるメニューの文字とか、ノラ文字っていっぱいあるんですね。(ローソンの)「お母さん食堂」の「あ」とかを想像させてIllustratorで作ってもらうことをしてます。 
 あとはデザインって、自己表現とか問題解決ですよね。だから今やらせてるのは、テーブルクロスの作成です。私立だと、学校説明会で旗を出したり椅子カバーがあったりするじゃないですか。そちらを作ります。予算がとれたので、校長先生や歴が長い先生にアポ取って、取材しながら制作をしてます。
(※ノラ文字:街なかにひっそりとある看板文字のこと。)

──面白そう! まさに空間デザインですね。

 いわゆる個展みたいなものも開きたいです。私の授業のベースは、やはり上平先生(※)の授業なのかなと。このほかにも、3年生のプロジェクト(※)みたいなものもやっています。あるグループは、昼寝ガジェットをラズパイで作ったり、目の見えない人が使う白杖を、行きのルートをGPSでたどらせ、帰りは杖が案内してくれるように考えているグループもありますね。
(※上平先生:専修大学ネットワーク情報学部教授。デザイン学を専門にされている先生です。眞山先生は、ネットワーク情報学部の卒業生です。
※プロジェクト:ネットワーク情報学部3年生必修の科目。この活動もプロジェクトの授業の一環として行っています。)

──大学生顔負けのテーマですね!

 研究なので、作って終わりじゃなく、いろんな人に試してもらって、2枚程度の論文書いて…という感じです。専門学科だとどこも似たような感じじゃないかな。

3. 高校教育に必要なことは

──最近は情報の科目も色々と変わってきていると思いますが、現場の教員の方の目線から見ていかがですか?

  普通科に関しては、つまんなくなったなと思います。「テストに出るからやる」になっちゃっているかな。好きだからやるとか、プログラミング書くのが好きな先生が、そこを多く教えるとかじゃなくて、知識を入れましょうみたいな。もちろんそれも正しいことではあるんですけどね。読解力を問われる問題も多くなってきましたね。 
 専門の方も、変わっていってはいますね。10年前はアプリ作っただけで「すごい!」となってたと思いますが…今はアプリの中で機械学習とかさせないと、すごい!とはならないんですよね。技術の進化と彼らのできることが、離れていっているんです。学生が「会話を認識して分類し、似たような人とマッチングする何かを作りたいです」みたいな相談をしてくるんですけど、どれだけ難しいかわかってるか?みたいな笑 ハードルが上がってくるので、さらにこちらもハードルを上げなきゃいけないと思ってます。 
 だからこそ1年生には、何かしらの問題解決をさせたいですね。そんな課題を出させると、最初に出てくるのが「授業中眠い」なんですよ。自分のことしか考えていないことが多い。1年生のうちはそれでいいのですが、2年生からは親・兄弟や友達など少し範囲が広がって、3年生になったら、社会の課題を解決できるようになったらいいよね。そうやって視野をどんどん広げて、解決できる人を増やすとか、どんどん視点を伸ばす人が育てられればいいなと思います。

問いかけながら生徒と関わっていく

──なるほど。生徒さんと関わるにあたって意識していることはなんですか?

 こっちから「なんで?」とか「こういうのはどう?」みたいな問いかけをしています。それはAIがどうこうしてくれる問題じゃないと思っています。今の子たちは、好奇心旺盛だと思っていて。それで、ちょっと考えを深めたりとかができればいいけど…なかなか難しい。
 あとはやっぱりみんな同年代とか、日本に住んでるとか、耳が聞こえて目が見えてとか…こういうことって基本は当たり前ですけど、そうじゃないところに違う世界とか問題がある訳で。ここにもふっと向かせてあげないと、やっぱりエンジニアとかデザイナーとかになるって難しいと思っています。

4. デジタルはTPOに合わせて選択していく

──今日のテストプレイ(私たちのプロダクトを試していただきました)はカード型でしたが、こういったものを授業で触る機会はありますか?

  こういうアナログなものを触ることはないかもしれないです。今って、みんなスマホ触るんですよ。メモ取るのもスマホだし。この間、発表者の中でスマホを触っている人がいて、他の先生にも注意されてました。多分生徒からすると「古いなーこの先生アナログだなー」と思っていたかもしれませんね。でも発表者の中でそう言う子がいると話している人じゃなくて、みんなそっち向いてしまってノイズになる。そんなTPOを考えるみたいな視点は、なるほどなと思いました。あと連絡は(Microsoft)Teams、アンケートは(Google)Formsを使っていますが、回収率がすごく悪くて笑。生徒は紙とかOCRとか古いって言いますけど、いやいやみんなが出さないからだよって….笑

──使う人に合わせてツールを選択しなきゃいけないという難しい問題ですね…..。

 デジタルは素晴らしいというのはあるけど、紙とのトレードオフを考えてほしいなと思うことはあります。 
 似た話だと、コロナ禍で全校集会を放送に切り替えていて、また元に戻した時に、放送じゃダメなの?っていってくる人もいます。みんなで集まる意義みたいなのを教員も説明できなきゃいけないし、それができないものなら放送でいいと思います。全部デジタル、またはアナログじゃダメなの?みたいな、世代間でTPOが全く違うと思いますね。

5. 先生としての「ふつう」とは

──今後の展望などはありますか?

 まず、情報教員で女の人は少ないと思います。大多数で言うところの少数なので……。変なこと言う人はだんだん除外されていっていたり。先生たちもLGBTについて学ぶ機会もあるし、子供達もバイアスがとれていっているので、それに乗っかっていきたい笑。でも、THEは大切にする。統計的なものとか、事実としてあるものを事実として話していけばいいのだと思います。 
 あと、情報理数科の生徒たちにも入学式で言うんですよ。「君たちはふつうじゃない。普通科じゃない倍率をくぐり抜けてきて、どう見ても普通じゃないんだから、いいところを伸ばしてください。最低限のところは補って、ふつうに卒業しないでください。」と言ってます。だから、私もドローンで遊んでみたりとか、3Dプリンタ使ってみたりとか…そういう普通じゃないことも企みながら、子供たちの好奇心を刺激して、いい学びになったらいいなと思います。

──ご協力いただきありがとうございました。

生徒と一緒に楽しんでいく眞山先生

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