【プロ解説】遺産相続の全手続き|死亡届~相続税還付まで徹底解説
皆さんは遺産をどのように相続するか、詳しい内容をご存知でしょうか。
自分はいつか遺産を相続することになるのかなど、疑問を抱いている方は
多いと思います。
この記事では相続するにあたって、複雑な手続きや相続が発生してから
実際に相続するまでの流れ、注意点などについて詳しく解説していきます。
1 遺産相続の大まかな流れ
遺産相続とは、人が所有している財産を子どもなどに継承させることを
指しますが、そのためにはいくつかのフローを踏まなければいけません。
①まずは遺言書があるかを確認
遺産相続を始める前に遺言書があるかどうかを確認しましょう。
記載された内容によって、遺産相続の割合が変わる可能性があるためです。
遺言書は決められた方式にのっとって作成されていなければ
法的効力を持たないため、注意が必要です。
②誰が遺産を相続するか確定させる「相続人調査」
相続人調査とは、遺産を相続する上で必要な名義変更などの手続きで、
実際に相続をする人物は誰になるのかを確定させる調査のことです。
「戸籍謄本」などから被相続人(遺産を残して亡くなった人物)と
相続人全員分を調べ、被相続人の出生から死亡までの
全ての戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人を調査します。
③相続する財産の価値を確定する「相続財産調査」
相続財産調査とは、相続する財産にはどのようなものがあるのか、
それはどのくらい価値があるものなのかを調査することです。
調査を行う理由は3つ。
1つ目は、財産を相続するか放棄するか決めなければいけないため。
借金を相続してしまい代わりに返済しなければいけない場合もあります。
2つ目は、相続税の申告の有無を判断するため。
相続税がかかるのは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した
金額を超えた場合のみで、必ずしも相続税がかかるとは限りません。
3つ目は、遺産分割協議を行う際に必要なため。
相続人が一人ではなく複数人いる場合は、どの遺産をどのように分割して
相続するか決めるため、財産には何があるのかを洗い出す必要があります。
調査を行う際の注意点は2つ。
預貯金の有無はキャッシュカードや通帳から調べますが、
インターネットバンクを使用している場合は、通帳などが存在しないため、
メールなども細かくチェックする必要があります。
一般的に、相続遺産の評価は、不動産は固定資産税評価額を、
土地は公示価格を参考に評価を下しますが、相続遺産の評価は
手続きなどが複雑なため、司法書士や税理士に依頼する方が良いでしょう。
④3種類のうちから1つを選ぶ「相続方法の決定」
相続方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。
「単純承認」とは、被相続人が残した遺産を全て相続する方法です。
この場合、負債の方が多ければ相続人が返済しなければいけません。
「限定承認」とは、プラスになる財産とマイナスになる財産を合わせて
プラスになる場合、相続するという方法です。
「相続放棄」とは、全ての相続を放棄する方法で、プラス財産と
マイナス財産を合わせてマイナスになる場合に選択されることが多いです。
⑤遺言書があるかどうかで展開が変わる「遺産分割」
遺産分割とは、相続人が二人以上の場合に
誰がどのくらい遺産を相続するのかを決めることです。
遺言書であらかじめ分割内容が決められている場合もありますが、
遺言書がない場合に話し合いがもつれると、
①相続人全員で遺産の分割方法について話し合う「遺産分割協議」
②家裁で調停委員の立会いの元、分割方法を決める「遺産分割調停」
③裁判官によって遺産の分割方法を指定する「遺産分割審判」
と三段階に分けて遺産分割が行われることもあります。
⑥財産の名義変更
相続を行う財産の名義変更は、遺産分割の話し合いが完了した時点で
可能となります。名義変更を行う財産で多いのは、不動産や預貯金です。
2 遺産相続の手続き(時系列)
遺産相続の手続きには、「被相続人が死亡してから●日までに
行わなければいけない」ものが多数あります。この期限を過ぎてしまうと、
相続人や遺族が損をしてしまうような手続きが多いため注意が必要です。
①死亡から7日以内
人が亡くなってから7日以内に行わなければいけない手続きは「死亡診断書の取得」「死亡届の提出」「死体火葬許可申請書の提出」の3種類です。
死亡診断書がないと火葬や埋葬などができなくなります。
②死亡から10日以内
人が亡くなってから10日以内に行わなければいけない手続きは、
「年金受給停止の手続き」および「年金受給権者死亡届の提出」です。
年金受給者死亡届は、年金を受け取る権利を放棄するための届け出ですが、
提出時には「未支給年金の請求」も行うと良いでしょう。未支給年金とは、
年金を受け取っていた方が亡くなった際に、まだ受け取ることができた
年金のことで、配偶者や子供、孫などの遺族が受け取ることができます。
③死亡から14日以内
人が亡くなってから14日以内に行わなければいけない手続きは
「国民健康保険証の返却」「介護保険の資格喪失届」
「住民票の抹消、除票」「世帯主の変更届」の4つです。
④死亡から3ヶ月以内
人が亡くなってから3ヶ月以内に行わなければいけない手続きは、
相続を放棄するのか承認するかの取り決めです。正しくは被相続人が
亡くなった日からではなく、相続人が「自分が相続をすることになったと
把握した日」から3ヶ月以内となるので注意してください。
この3ヶ月を過ぎると、遺産を単純承認として相続することになり、
相続放棄したい場合、3ヶ月以内に家裁に書類を提出する必要があります。
⑤死亡から4ヶ月以内
被相続人が確定申告を行わなければいけなかった場合、相続人が相続の事実を把握してから4ヶ月以内に「準確定申告」を行わなければいけません。
準確定申告とは、被相続人の1月1日から死亡した日までの期間分の
確定申告のことで、行う必要がある人と行わなくてもいい人がいます。
「給与収入が2,000万円以上の場合」「不動産を売却した場合」
「二カ所以上から給与を受け取っている」などいくつか条件があります。
⑥死亡から10ヶ月以内
人が亡くなってから10ヶ月以内に行わなければいけない手続きは
「相続税の申告」です。相続税は、相続の金額が
「基礎控除額」(「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を
超える場合に課されます。もし申告が10ヶ月を超えてしまった場合には、
追徴課税を課されることがあるため注意しましょう。
⑦死亡から1年以内
人が亡くなってから1年以内に行わなければいけない手続きは、
「遺留分減殺請求」です。
「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人が最低限もらえる財産のことです。
遺留分減殺請求は、被相続人が遺言書などで、相続人を指定していたり、
遺産を全て処分したいという旨を記載していた場合などに行われます。
⑧死亡から2年以内
人が亡くなってから2年以内に行わなければいけない手続きは
「葬祭費、埋葬費の請求」「高額療養費の請求」の2つです。
葬祭費、埋葬費とは、保険に加入していた人が亡くなった場合に
受け取れる給付金で、国民健康保険の場合は5〜7万円です。
葬儀形式が火葬だけの場合に受け取れないケースがあります。
埋葬費は亡くなった人が社会保険に加入していた場合に
受け取れる給付金で、金額は5万円です。
高額療養費の請求は、一月の間に支払った医療費が一定の基準額を超えた
場合に払い戻される制度ですが、申請を行えるのは世帯主のみです。
⑨死亡から3年以内
人が亡くなってから3年以内に行わなければいけない手続きは
「死亡保険金の請求」です。多くの生命保険は死亡日から3年、
かんぽ生命は5年以内ですが、商法で定められる支払い期限は
死亡日から二年以内となので注意が必要です。
また、死亡保険金を受け取る場合、相続税や所得税などがかかります。
⑩死亡から3年10ヶ月以内
人が亡くなってから3年10ヶ月以内に行わなければいけない手続きは
「取得費加算の特例」の申請です。取得費加算とは、遺産相続などで
手に入れた不動産を相続後一定期間内に売却した際、
相続税額の一定金額を譲渡資産の取得に加算できるというものです。
⑪死亡から5年10ヶ月以内
人が亡くなってから5年10ヶ月以内に行わなければいけない手続きは
「相続税の還付請求」です。相続税の計算を間違えて多く納めていた場合、
相続税の申告をやり直して還付請求を行うことができます。
3 最後に
遺産相続には様々な注意点や法律で定められたものがあるため、
基本的には専門家に依頼することが多いです。もし遺産相続をする
場合には、司法書士や弁護士などに相談してみることをおすすめします。
さらに詳しく知りたい方は、以下のコラムにまとめておりますので
よろしかったらご覧ください。
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