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#コミティア128
合同誌「少女文学」栗原ちひろサンプル
2019/5/12コミティア発行予定の企画合同誌「少女文学 第一号」に寄稿した栗原ちひろ作品のサンプルです。合同誌についてはこちら↓
黄金と骨の王国 ~半竜人と死せる第一王女の章~
穴には死が詰まっていた。
闘士の死。もしくは、獣の死。穴から這い上がるにはどちらかが必要だった。
闘技場とはそういうものだ。天上の王都でもそうだし、《海鼠色の蛇に似た竜》の名を冠した四十七番目の塔に近い貧民の
5/12コミティア個人誌サンプル【7】
2019/5/12コミティア発行予定の個人誌サンプルその7です。6はこちら↓
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6・一番暗い海の底で君と出会った
「夜の海は好かねえなあ。いまひとつ、よくねえよ。そう思わねえか、エリオ」
「今更帰れないのに、何言ってんだ。もうだいぶ沖に来てるし、ルカ兄貴の着てるそのスーツ、くっそ高えしさ」
振り返りもせずにエリオが言うと、漁船の甲板にしゃがみこんだルカが嘆きのうなりをあげた。彼はい
5/12コミティア個人誌サンプル【6】
2019/5/12コミティア発行予定の個人誌サンプルその6です。5はこちら↓
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5・人形操者のナイトクルージング
腹の底から揺さぶられるようなエンジン音と、有機的な揺れ。潮の香りに入り交じるオイルの臭い。削った黒大理石みたいにつやめく、夜の波。
自分たちを包むすべてを楽しみながら、ジルドはうっとりと言った。
「これが夜釣りだったら、もっと楽しいんだけどね。よく冷えたスプマンテと、
5/12コミティア個人誌サンプル【4】
2019/5/12コミティア発行予定の個人誌サンプルその4です。3はこちら↓
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3・宝探しはなんのため?
エリオははっとしてドアを見る。客は三人。
手前の二人はごく普通のちんぴらに見えたが、一歩後ろに控えた奴はいささか面倒くさそうだ。何せ、ド派手な花柄シャツに真っ白なスーツをまとい、どこで売っているのか見当もつかないヒョウ柄のボルサリーノをかぶった、三十代後半くらいの脂ぎった男だ。