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ヨブ記注解 あとがき

目下、『ヨブ記注解』という本を取り扱い中です。

今回は、その「あとがき」から引用して読み進めたいと思っています。

読書には、いろんなスタイルがあると思いますが、私個人の場合は、まずは本を手に取り、その感触(重さ、大きさ、手触りなど)を確かめながら、一番最初に「目次」に目を落します。
 次に「まえがき」や「序文」といった巻頭にある文章、続いて「あとがき」「解説」「参考文献リスト」など巻末にある文章に目を移して、本のディテール(細部)に入る前に、事前情報として、何の本なのか、どんな本なのか、何が書かれている可能性があるのか…等々を予見しながら、いよいよ本文に入るのですが、それも自分に必要な情報は「目次」から察するに、この部分だけである…とか、すべてを精読しないと意味を為さない、など、さまざまな本と自分との「接点」がありますので、そこで、その本との「付き合い方」を決めます。
 部分だけ抜き取って読むのか?
 全体を「斜め読み」するような速読でよいのか?
 一節、一語ごとに文意に留意する「精読」が望ましいのか?
 今回、この『ヨブ記注解』は、一番最後の部類、つまりは「精読」を手法をして選んで読む予定でおります。なので「note」にて読書記録が成り立つ訳です。
 前回は「まえがき」を読みました。
 今回は「あとがき」を読みます。
 では、実際の引用に入りたいと思います。

 この経緯があったので、ヨブ記注解に関する土肥さんからの申し出をわたしはありがたく受け止めた。ところが私にはすでに引き受けていた諸種の依頼と新たな割り込みの依頼が続き、その対応に時間が取られて、ヨブ記の仕事に入ることができたのは、ようやく2018年の秋に入ってからであった。執筆の最中にも幾つかの依頼に応じたので、私が最初の原稿提出までに専念できた時間は実質1年3ヶ月ほどであった。まず、「まえがき」と著してヨブ記注解に差し向かう姿勢を決め、次いで「序論」とテクスト訳出の「覚書」に取り組んでから注釈の執筆に入った。これらの予備作業にかなりの時間を費やしたので、注解に注ぐ時間は予定したほどのゆとりがなくなったが、注釈は手抜きができない。ヨブ記は手強い書物であり、細部の注釈が絡むと、全体の注釈に影響が出る。注釈作業を一応終われば、各部分の調整が必要になる。「まえがき」や「序論」も含めて、あちこちを書き換える。また後から解釈の変更を思いつく、という具合で。行きつ戻りつの修正を繰り返し、2020年1月末にようやく原稿の提出に辿り着いた。しかしまだ納得がいかず、2月末に原稿を再提出した。編集者が最初に希望した提出期限をすでに3年も超過していた。それでも叙述が不十分であって、昨年の5月下旬に土肥さんから受け取った校正紙を遠慮なく赤くした。差し替える箇所もかなり発生した。それから半年ほどの間が空き、再校の仕事は本年2月中旬以降に行ったが、その後の校正も手直しが必要であった。これまでの努力が意味をもっていることを筆者はねがっている。

『ヨブ記注解』あとがき より引用

この「あとがき」を読んで、わたしは決して「書物」というものを世には出すまい…と心の底から思いました。「校正」に、また「校正」が重なり…わたしだったら投げ捨てている部類の仕事だと実感しました。学者先生の胆力には、ただただ脱帽しかありません。
引き続き、引用を先へ進めます。

 ヨブ記は不思議な書物である。ヨブと友人たちとの討論で使われている語やフレーズの意味を熱心に詮索し、詳しい研究書に当たっても、対論者の発言の意図を適切に汲み出せるわけではない。神とヨブとの討論については、書かれていない何かを読み取ることが解釈の鍵となる。また、ヨブの文章は多くの箇所で曖昧である。そこで注釈を推量で満たしたいと思うが、それを実行するのは責任逃れであるし、そんな注釈に魅力はない。それを考えて筆者は間違いの可能性を覚悟しつつ、自己の責任で一定の解釈を行い、なるべく言い切る文体で解釈をしるしたが、「なるべく」そうしたに過ぎない。
 本書は「まえがき」に記したようにヨブ記の読解を助けることを目的としているので、自己の思想的な立場を読み込む叙述を抑制する「注解」(Commentary)であろうと努めた。「注釈」とは、原典を読んで該当テキストの真正性などを吟味し、「語釈」を行い、文脈の中での意味を推察した上で、テクスト解釈を施す作業であり、それ以上の信仰的もしくは思想的な意味付けは読者に委ねる。もちろん、注釈といえども主観性とは縁を切れない。客観的な書き方を貫徹できるわけではない。「神の弁論」と「ヨブの応答」については、筆者の「読み取り」を記して、意味づけの領域に足を踏み入れている。筆者によるその作業が「注釈」の拡張であって、注釈からの大きな逸脱ではないことを願っている。

『ヨブ記注解』あとがき より引用

あと、本書には「参考文献」のリストがあるが、これを引用欄を設けて筆写していたのでは日が暮れてしまうので、プリンタにて必要箇所をスキャンしたので、PDFファイルにて、各人に、ご確認を委ねたい。以下、ダウンロードできるようにしておきます。

以上、今回の、ご案内を終わります。

それでは、ごきげんよう、お元気で。

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くり坊
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